CMSに悩むWeb担当者必見。導入後に後悔しないための賢い判断基準とは?
現在のCMSには、オープンソース、SaaS型、クラウド、ヘッドレスなど、さまざまな選択肢があります。それぞれに長所と短所があり、「どれを選んでも決め手に欠ける」と感じている方も少なくないでしょう。
では、こうした状況でCMSを選定する際、どのような観点を持つべきなのでしょうか。ひとつの判断軸として挙げられるのが、「現在の要件」だけでなく「将来の運用環境の変化」にも柔軟に対応できるかどうかという視点です。
ここでは、CMSの導入や運用に悩む方々に向けて、今どきの判断基準について解説します。
CMSに満足できない“Web担当者のリアル”
企業サイトやブランドサイトを立ち上げる際、CMSの導入はもはや当たり前の選択肢です。しかし、事前に機能を比較検討して選んだはずのCMSでも、いざ運用を始めてみると「思っていたのと違う」と感じるケースは少なくありません。
そこでまずは、CMS導入後によく聞かれる悩みをいくつかご紹介します。
パターン1:オープンソースCMSのセキュリティが不安
運用コストを抑えられることから、オープンソースCMSを選ぶ企業は少なくありません。しかし、運用が進むにつれてセキュリティ面への不安が顕在化するケースも多いのが実情です。
たとえば、プラグインの更新漏れが原因でサイトが改ざんされたり、テーマの互換性問題によってレイアウトが崩れたり、簡易なメールフォームプラグインの利用でスパムメールが大量に届いたりといったトラブルが起こりがちです。
特に、社内に専門知識を持つ担当者がいない場合や、制作会社との連携がうまく取れていない場合は、こうしたセキュリティリスクが放置されやすく、深刻な被害につながる恐れがあります。
パターン2:Jamstackを試したけど、運用の壁が高かった
近年、Jamstack(静的サイト+API+JavaScript)やヘッドレスCMSの導入を試みる企業も増えています。
しかし、Web制作会社の協力を得て、高速でセキュアなサイトを構築できたものの、いざ運用フェーズに入ると「チーム内にエンジニアがいなくて更新が難しい」という課題に直面するケースが少なくありません。
WYSIWYG(見たまま)編集ができなかったり、画像の扱いに独特のルールがあったりして、思いどおりに記事を更新できずストレスを感じることもあるでしょう。特に、複数の部署で情報更新を行う体制では、一定のITスキルを求められるCMSが大きな障壁となることもありえます。
パターン3:ワンソース・マルチユースへの期待と挫折
Web、アプリ、メール、SNSなど、複数チャネルでコンテンツを展開したいというニーズに応える形で、ヘッドレスCMSを採用する企業が増えています。ところが、実際に運用を始めてみると「期待どおりに使いこなせない」という声も少なくありません。
CMSは運用の過程で、「表示するフィールドを追加したい」「チャネルごとに表示内容を調整したい」といった新たな要望が次々と生まれるものです。
しかし、ヘッドレスCMSの場合、こうした変更には大規模な改修が必要になることが多く、コストや工期の問題から断念せざるを得ないケースもあります。その結果、改善のサイクルが滞り、運用が思うように進まなくなることが珍しくありません。

パターン4:手軽に導入できるSaaS型CMSを選んだけど……
導入のしやすさや直感的な操作性から、SaaS型CMSは高い人気を誇ります。クラウド上で提供されているため、システム要件の検討に時間をかけず、すぐに運用を始められる点も大きな魅力です。
しかし、使い続けるうちに「独自デザインやレイアウトへの柔軟な対応が難しい」「外部サービスとの連携に制約がある」といった不満が出てくることもあります。手軽さと自由度はトレードオフの関係にあり、当初は便利に感じていたものが、次第に物足りなさにつながるケースも少なくありません。
CMS選びには「目的意識」が大切。でも、それだけで十分?
ここまで見てきたように、CMS選定に「これさえ選べばすべて解決!」という万能の答えは存在しません。とはいえ、実際の現場では、何かしらを選ばなければWebサイトもコンテンツ運用も前に進みません。そのときに欠かせないのが、「自分たちはCMSを使って何を達成したいのか」という明確な目的意識です。
目的が定まれば、CMSに求める条件や優先順位も自然と整理され、選択の軸が見えてきます。ただし、ここで忘れてはならない視点がもう一つあります。それは、「今」だけでなく「将来」も見据えて選ぶことです。
CMSは導入後、数年にわたって使い続けるケースがほとんどです。その間に組織体制が変わったり、担当者が入れ替わったりと、運用環境が大きく変化することも珍しくありません。たとえば、当初は開発リソースを活用してカスタマイズ重視だったCMSが、数年後にはマーケティング部門主体での更新を求められるようになり、複雑な管理画面を前に運用が滞る–––––そんな事態も現実に起こり得ます。
こうした変化は予測しにくいからこそ、CMSには「今の自社に合うこと」に加えて「これからの変化にも柔軟に対応できること」が求められるのです。機能性や使いやすさと同じくらい、将来の変化を見越して選べるかどうかが、CMS選定における重要な問いになってきます。
“思想の一貫性”に支えられた選択肢
ここ数年で、CMSの形態は大きく多様化しました。SaaS型、オープンソース、Jamstack、ヘッドレスなど、選択肢は実にさまざまです。しかし、それぞれが前提としている思想や設計は大きく異なります。そのため、一つのCMSから別のCMSへ乗り換える際は、まるで別の世界に移るような感覚に陥ることも少なくありません。構造もUIも、更新の考え方すら一から学び直す必要があるからです。
一方で、設計思想やUIに一貫性を持たせながら、複数のタイプを展開しているCMSであれば、異なる形態への移行も驚くほどスムーズになります。まさにその柔軟な選択肢を提供しているのが、シックス・アパートが展開する「Movable Type」シリーズです。

Movable Typeは、ソフトウェア版をはじめ、クラウド版、AWS対応版、ヘッドレス対応、SaaS型など、多様な形態で提供されています。これらはすべて、共通する思想、UI設計、操作感を備えており、異なる形式でも同じ運用感覚で扱えるのが特長です。
この一貫性は、将来サイトのリニューアルが必要になったとき、大きな強みとなります。たとえば、初期段階では運用負荷を抑えるためにSaaS型の「MovableType.net」を選び、数年後に要件に応じてソフトウェア版へ移行する、といった運用も現実的です。基本構造や操作性が共通しているため、学び直しの負担は最小限に抑えられます。
このように、Movable Typeが提供する「選べる」という価値は、単なるラインナップの多さにとどまりません。要件の違い、タイミングの違い、技術的背景の違いがあっても、同じCMSの延長線上で“最適解”を選び続けられる柔軟性こそが、今の時代に求められる大きな魅力です。
ヘッドレスCMS的にも使えるMovable Type
近年、Webサイトだけでなく、アプリやデジタルサイネージなど、複数のチャネルに同じコンテンツを展開したいというニーズが高まっています。こうした要件にフィットするのが、コンテンツと表示を分離したヘッドレスCMS的な運用です。

Movable Typeシリーズは、このスタイルにも柔軟に対応できます。たとえば、CMS内で管理している記事やデータをJSON形式で外部出力し、APIを通じてフロントエンドと連携すれば、ヘッドレスCMSのように活用可能です。実際に、Movable Typeのテンプレート機能とReactやVue.jsといったJavaScriptフレームワークを組み合わせて運用している事例もあります。
特徴的なのは、こうした構成を通常のMovable Type運用の延長線上で実現できる点です。CMS側の管理画面や更新フローを大きく変える必要はなく、コンテンツの編集作業はこれまで通り非エンジニアでも対応できます。
表示の自由度を確保しつつ、CMSは使い慣れたものを使いたい。あるいは、将来的にマルチチャネル展開を視野に入れたい。そんな企業にとって、Movable Typeの“ヘッドレス的活用”は、現実的かつ柔軟な選択肢といえるでしょう。
実際にどんなタイプがある? Movable Typeのラインアップをチェック
Movable Typeシリーズの大きな魅力は、共通の思想とUI設計を持ちながら、多様なタイプを展開している点にあります。これにより、用途や運用規模、将来の展開に応じて、同じCMSの延長線上で最適な選択が可能です。ここでは、代表的な5つの製品を用途別に紹介します。
MovableType.net:手軽に始めたい企業・チームへ

「MovableType.net」は、Movable TypeのエンジンをベースにしたSaaS型サービスです。クラウド上で提供されているため、サーバの準備やインストール作業は不要で、Webブラウザさえあればすぐに構築・運用を始められます。
シンプルで洗練されたテンプレートは、Web制作に不慣れな担当者でも扱いやすい設計です。さらに、フォーム機能やカスタムフィールドも標準搭載されており、小規模から中規模のサイト運用やランディングページ制作に最適です。
Movable Type ソフトウェア版:社内でしっかり管理・カスタマイズしたい企業へ

「Movable Type ソフトウェア版」は、自社のサーバやオンプレミス環境にインストールして使う従来型のCMSです。柔軟なカスタマイズや外部システムとの連携が可能で、セキュリティ要件が厳しい組織や、独自仕様に合わせたCMS構築を求める企業に適しています。
テンプレートや出力設定も細かく調整できるため、大規模なWebサイトや社内システムとの統合を視野に入れた運用にも対応できます。
Movable Type クラウド版:安定性と柔軟性のバランスを求める企業へ

「Movable Type クラウド版」は、CMSエンジンをクラウド環境で提供する法人向けサービスです。インフラはシックス・アパートが管理し、保守やアップデートも自動で対応。これにより、サーバ管理の負担を軽減しつつ、セキュアな運用を実現します。
オンプレミス版と同等の機能を備えており、テンプレートやプラグインのカスタマイズも柔軟。CMS運用に慣れていて、保守リスクを最小限に抑えたい企業に適しています。
Movable Type Premium:多拠点・多言語など高度な要件に対応したい企業へ

「Movable Type Premium」は、法人向けに提供される統合型のCMSパッケージです。複数サイトの一元管理、多言語対応、ワークフロー、承認機能などを標準搭載し、運用体制が複雑な大企業や公共団体の要件にも応えられます。
さらに、部署ごとの権限設定や社内公開ルールに沿った運用も可能です。CMSとしてだけでなく、社内情報を統合的に管理するプラットフォームとして活用されるケースも増えています。
Movable Type AMI版:AWS環境でセキュアかつスケーラブルに運用したい企業へ

「Movable Type AMI版」は、Amazon Web Services(AWS)上でMovable Typeをすぐに使えるよう構成されたパッケージです。サーバ機器の用意や初期設定が不要で、ボタン一つで稼働環境を構築できます。
さらに、サーバ構成やセキュリティ設定を自由に設計できるため、AWS環境に最適化したCMS運用を求める企業にとって有力な選択肢です。
まとめ
これらはそれぞれ異なる特徴を持つ製品ですが、管理画面の設計思想やテンプレート構造が共通している点は、Movable Typeファミリーならではの特長です。そのため、組織の変化や運用フェーズの移行に合わせて、別の形態への移行もスムーズに行えます。
同じCMSの延長線上で、今の状況に合った最適な形を選び、将来に向けて無理なくつながっていく安心感。それこそが、Movable Typeが「選べるCMS」と呼ばれる理由なのです。
文:小平淳一 写真提供:シックス・アパート株式会社
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