
UIデザイナーが“3D広告”を作る時代? LINEヤフーのFigma Makeプロジェクト

昨今、デザインの現場で活用が広がっているコラボレーションデザインプラットフォーム「Figma」。本コーナーでは、Figmaを導入している企業や組織に、導入前に抱えていた課題や活用の実態、そして導入後にもたらされた変化など、「Figma活用のリアル」をお届けします。
前編では、500名以上のデザイナーが在籍するLINEヤフー株式会社におけるFigma導入の経緯と、組織文化の変化について伺いました。後編となる今回は、Figma Makeを活用した渋谷スクランブル交差点の大型ビジョン広告プロジェクトをはじめ、AI時代におけるデザイナーの役割や、今後のFigmaとAIに対する期待について話を聞きます。
目次
Figma Makeで挑んだ、渋谷スクランブル交差点プロジェクト
──最近では、Figma Makeのグローバルプロモーションの一環として、「Yahoo!知恵袋」「Yahoo! JAPANトップページ」「Yahoo!ニュース」の3チームが共創し、渋谷スクランブル交差点の大型ビジョンで放映される映像広告を制作されたそうですね。
杉山雄太(以下、杉山) はい。渋谷のあの巨大なビジョンで、ダイナミックでインパクトのある表現をしつつ、LINEヤフーのサービスだと認知してもらう。しかもそれを、導入されたばかりのFigma Makeを使って作るという大きなチャレンジでした。

──実際にFigma Makeを使ってみて、どのような体験でしたか?
杉山 単純に「ものづくりってこんなに楽しかったんだ!」とワクワクする体験の連続でした。私たちが担当した知恵袋チームでは、Figma Makeのプロンプトを活用して、3D空間に問いと答えが浮かぶ「知恵袋 3Dスタジオ」や、大量の文字が組み合わさる「ASCIIモニュメント」など、実験的なアプローチを次々と試しました。


これまでなら、3Dモデリングを用いたダイナミックな表現はCG専門の外部パートナーなどにお願いしなければならず、ハードルが高かったんです。ところがFigma Makeを使えば、抽象的なテキストプロンプトを打ち込むだけでAIが形にしてくれます。私たちWebやアプリのUIデザイナーが、枠組みを超えて新しい表現を探求し、誰かに届けるという純粋な「つくる楽しさ」を取り戻せたプロジェクトでした。

小林謙太郎(以下、小林) 私の立場から補足すると、現場ではFigma Makeに限らず、複数のAIを組み合わせて活用する動きが活発になっています。
例えば、デザインレビュー専用のGPTを作成して自分が作ったものを投げ、アイデアや改善点をもらったり、行き詰まった時の壁打ち相手としてチャットAIと対話したりと、用途に合わせてさまざまなツールを併用している状態です。
今回の渋谷プロジェクトのように、職種や領域を超えてみんなが同じキャンバスに集まり、AIも交えながら滑らかにコラボレーションして形にしていく。そうした新しいものづくりのプロセスが社内でどんどん広がっているのを感じます。
AI時代、デザイナーの価値はどこにあるのか
──AIがプロンプトからデザインを生成できる時代において、デザイナーの役割はどう変わっていくとお考えですか?
杉山 今、まさに現場のデザイナーたちが直面し、みんなで議論しているテーマです。実際、デザイン職が積極的にFigmaを利活用してプロセスをオープンにしてきた影響もあってか、最近では非デザイナー職(PMや企画職など)がFigmaのアカウントを持ち、自分でプロトタイプを作るケースも増えています。そうなったとき、デザイナーの価値はどこにあるのか。
ひとつは、アイデアの量と質を圧倒的に高めることです。ゼロイチのフェーズにおいて、これまではひとつかふたつの案を作るのが精一杯だった時間で、Figma Makeを使えば10個、20個のプロトタイプをつくり、意思決定の場に持っていくことができます。
また、AIの進化によって「外部から何かを仕入れてくる」のではなく、インハウスで完結できる幅が広がったことも大きいです。例えば、私が実験的に作ってみた占いのコンテンツでも、これまではコアとなるシステムは外部のプロバイダーから購入してくるのが一般的でしたが、AIとFigma Makeを活用することで、1600通りもの占いを自社チームだけで、わずか1日でプロトタイプとして作り上げることができました。
OEM的に外から持ってくるのではなく手元で完結できるからこそ、「自分たちはユーザーに何を提供したいのか」という本質的な問いにより深く目を向けられるようになると感じています。
小林 同感です。いろいろな職種の人が上流工程からFigmaに入ってきて、それぞれの専門的な観点(ビジネス、エンジニアリングなど)からディスカッションしながら進められるのは素晴らしいことです。その中でデザイナーは、ユーザー視点を代弁し、UXを最大化するアンカーとしての役割が引き続き求められます。
ツールが進化し他職種との協働が加速するからこそ、クリエイティブと事業戦略を結びつけるような、より本質的な議論をリードしていく力が重要になりますね。

デザインと事業戦略をつなぐ、次世代インフラへ
──最後に、今後の組織的な展望や、FigmaやAIに対して期待することがあれば教えてください。
小林 全社のデザイン組織のマネジメント強化をしていく立場としては、現在非常に工数のかかっている「デザインの評価(スコアリング)」や「リサーチ」の機能がFigma上でさらに拡充・統合されていくことを期待しています。
今まさに全社プロダクトのデザイン競争力を評価する仕組みを構築していますが、例えばFigma上で作成したA案とB案に対して、AIが「どちらが事業KPIやUXの観点で優れているか」をシミュレーションしてくれたり、改善点を提案してくれたりするようになれば、リサーチの工数が大幅に削減でき、品質向上に直結すると思います。
杉山 現場としては、Figma Makeの登場によって「どうせまた数年後に別のツールに移行するんだろう」という不安が完全に払拭されました(笑)。他のAIツールに置いていかれるどころか、最先端の使いやすい機能を実装してくれたFigmaには本当に感謝しています。
また今後の機能への期待として、「なぜこのデザインになったのか」というコンテキスト(事業課題や意思決定の履歴)が、Figma上にしっかりと記録・可視化されるようになると嬉しいです。せっかく職種を超えて共創する勢いが生まれているので、事業戦略とデザインファイルがシームレスに直結する環境になれば、さらに強力なインフラになると思います。
今後もAIとの協働を通じて、無駄な作業を省きつつ、ユーザーに対して価値ある体験を届けるためのクリエイティブな時間を増やしていきたいです。今回の渋谷プロジェクトで得た「つくる楽しさ」を忘れず、LINEヤフーとして新しいデザイン表現をチーム一丸となって追求していきます。

プロフィール

小林 謙太郎
LINEヤフー株式会社 Design Executive Center CXCディビジョン
リード / エバンジェリスト
旧LINEでは初代クリエイティブエバンジェリストとして入社し、デザイン組織のカルチャーづくりや採用ブランディング、PRなどを担当。2023年のLINEとヤフーの合併後は、全社横断のセントラル組織でデザインプログラムマネージャーを務め、デザイン競争力の向上や生産性を高める仕組みづくり、UXリサーチやUXライティングなど専門領域のマネジメントを含む、デザイン組織全体の戦略設計に携わっている。

杉山 雄太
LINEヤフー株式会社 ローカル・UGC SBU
新UGCユニット サービス企画1ディビジョン
新卒で旧ヤフーに入社し、「Yahoo!検索」のUI/UXデザインを担当。その後、新規サービスの立ち上げなどを経て、現在は「Yahoo!知恵袋」をはじめとするUGC系サービスのプロダクトデザインに携わる。UXリサーチやマーケティング、体験設計など事業貢献を見据えたデザイン業務を担うほか、UX品質推進チームにも所属し、全社プロダクトの品質向上にも取り組んでいる。
取材・文/長谷川智祥、写真/山田秀隆
※記事内の組織名・所属・役職は、取材時点(2026年2月)の情報です。
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