
何も決まっていない状態からの船出。ミニシアター「シネマリス」のサイトを支えた「Orizm」の柔軟性とちょっと株式会社の伴走力
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2025年、東京・神保町に小さな映画館「シネマリス」が誕生しました。異業種から転身した支配人が、手探りで立ち上げたミニシアターです。空間の仕様も開業日も二転三転する状況のなか、Webサイトはどのように形になっていったのでしょうか。
本記事では、シネマリスの稲田さんと、制作を担当したちょっと株式会社の高山さん・後藤さんにWebサイト構築プラットフォーム「Orizm」が果たした役割をお聞きしました。

目次
地下の映画館「シネマリス」と、ちょっと株式会社との出会い
–––はじめに、シネマリスを立ち上げた経緯を教えてください。
稲田良子(以下、稲田) これまでのキャリアがひと段落して、「何か新しいことに挑戦したい」と思っていたタイミングで、世の中がコロナ禍に入りました。先の見通しが立ちにくい日々のなかでも、「やりたいことをやらないまま終わるのは嫌だな」という気持ちが芽生えたんです。ちょうどその頃、老舗の映画館が相次いで閉館する一方で、個人が立ち上げる映画館もあることを知りました。「個人でもできるんだ」と思い、少しずつ調べ始めました。
といっても、最初から映画館をやると決めていたわけではありません。いろいろな方に話を聞くうちに、少しずつ方向性や気持ちが固まっていきました。物件も「いいご縁があれば」という気持ちで探していたところ、この場所に巡り合いました。地下へ降りる階段を進むと映画館にたどり着く構造が、日常から非日常へ切り替わる装置のように感じられて。秘密基地のような魅力がある空間だと思ったんです。

–––Webサイトの制作を、ちょっと株式会社に依頼した経緯を教えてください。
稲田 映画館を立ち上げると決めてから、Xで「ミニシアターをつくる」という発信を続けていました。物件を探しに行ったことや、ほかの映画館を見学したことなどを投稿しているうちにフォロワーが増えていって。その過程で「お手伝いしたい」と連絡をくださる若い方々が現れました。まだ費用をお支払いできる状況ではなかったのですが、「ボランティアで参加したい」と、おっしゃってくださったんです。
そのなかのお一人が、お仕事を通じてちょっと株式会社をご存じで、「紹介しますよ」と声をかけてくださいました。それがきっかけでした。
–––他社とも比較検討されたとうかがいました。決め手は何だったのでしょうか?
稲田 はい、何社か比較しました。最終的にちょっと株式会社に決めたのは、ご紹介だったことに加え、代表の小島芳樹さんがカルチャー分野の取り組みに関心を持ってくださり、「応援したい」と言ってくださったことが大きかったですね。お話を進めながら、「この方たちなら安心してお願いできる」と感じました。制作実績や社内の雰囲気も拝見して、信頼できる会社だと思いました。
高山恵美(以下、高山) まずは社長の小島から「映画館のWebサイトのディレクションとデザインを担当してみないか」と声をかけてもらいました。面白そうだと思って、すぐに「やります!」と返事をしました。

「何も決まっていない」状態からのスタート
–––最初のヒアリングの段階では、どこまで決まっていたのでしょうか。
稲田 いろいろな映画館のホームページの良いとこ取りをして「自分は絶対に使いやすく見やすいホームページを作る」という気持ちはありました。一方で、どのような仕様が使いやすいのかは自分の中では明確だったものの、デザインに何が必要で何をお渡しすれば良いのか、どうお伝えすれば良いのかは具体的にわからず、なかなか決まらないことも多かったです。ちょっとさんには辛抱強く聞き出していただいたと思っています。
高山 まだ映画館が完成していなかったので、建物の雰囲気をつかみにくく、それをどうデザインへ落とし込むかは悩みました。私自身がチケット予約のようなシステムを扱うのが初めてだったので、自分自身が映画館の予約でよく「少し使いづらいな」と感じていた経験から、できるだけ使いやすいものにしたいと考えながら制作を進めました。
–––要件が固まらないなかで、サイトをどのように立ち上げていったのでしょうか。
後藤滉希(以下、後藤) 私がコーディングで参加したのは、ティザーサイトが公開された2024年末ごろ、いよいよ本格的に動き始めるというタイミングでした。最初はティザーサイトとして公開し、その後「お知らせ」機能を追加して、さらに現在のサイトへと発展させていきました。要件が固まりきっていない状況でも、段階的にWebサイトを育てていく形で進めました。

–––このサイトはOrizmで構築されているそうですが、上映カレンダーのような機能も標準で用意されているのでしょうか。
高山 上映カレンダーは、シネマリスさんのご要望に合わせて一から実装したものです。
後藤 Orizmは一般的なCMSパッケージではなく、「Webサイト構築プラットフォーム」と位置づけています。決まった型がなく、お客様に合わせて自由に作り込めるのが特徴です。一方で、多くのWebサイトで必要になる機能はあらかじめ備えているので、共通部分はそれを活用しながら、シネマリスさんならではの機能は個別に実装していきました。
作品情報もOrizm独自のデータベースで管理しているので、必要に応じて項目を自由に追加できます。運用しながら仕様が変わるようなプロジェクトにも柔軟に対応できます。
–––フェーズによって要件が変わるプロジェクトとは、相性がよさそうですね。
後藤 そうですね。ティザーサイトからお知らせ機能、そして現在のサイトへと段階的に発展していくなかで、柔軟に対応できたのは、Orizmの強みが活きた部分だったと思います。

–––サイトのビジュアルは、どのように方向性を固めていったのでしょう。
高山 ロゴやテーマカラーである淡いミントグリーンはすでに決まっていたので、それらが持つ世界観を起点に、サイト全体のデザインを組み立てました。サブカラーにはブラウンを組み合わせ、全体が心地よく調和するよう意識しています。かわいらしさを残しつつ、シンプルですっきりしたデザインに仕上げられたと思います。
稲田 デザインについては、こちらの要望を丁寧に汲み取ってくださいました。すっきりとしていて、とても満足しています。

使う人に寄り添うOrizmの管理画面
–––シネマリスはサブスクリプション型の会員制度が特徴です。チケット予約はどのように実現したのでしょうか。
稲田 サブスク制の採用は最初から考えていました。以前、別の映画館で導入されていた年間パスポートの仕組みを参考にしていて、それに対応できる予約システムを自分たちでかなり調べて、サブスクに対応したシステムを選びました。
重視したのは、会員なら0円で予約できることと、申し込みまで完結できること。そして特に実現したかったのが、座席表のマークを、シネマリスの名前にちなんだ「リス」の形にカスタマイズできることでした。それに対応できると言ってくださったのが、採用した予約システムだったんです。
–––予約システムはOrizmの機能ではなく、外部サービスと連携しているのですね。
後藤 はい。予約や決済は、外部の予約システムを利用しています。私たちは作品情報を見せながら、「この作品を予約する」という導線を設計し、予約システムへスムーズにつなぐ部分を担当しました。
–––外部システムとの連携で苦労した点はありましたか。
後藤 APIを使ったデータ連携では、苦労した部分もありました。ただ、システム会社に仕様変更をお願いするのではなく、こちら側で吸収できるよう実装しています。既存の仕様を前提に、どう組み合わせれば実現できるかを考えながら対応しました。

–––管理画面の使い勝手はいかがですか。稲田さんはCMSを使うのが初めてだったそうですね。
稲田 はい。最初は不安もありましたが、今ではだいぶ慣れました。アクセスページや料金ページなど、自分たちで更新できるようにしていただいたので、必要に応じて修正しています。駐車場の有無についてのお問い合わせがあれば、「駐車場はありません」と追記したり、利用規約も適宜更新したりしています。
後藤 管理画面は、更新のしやすさを重視して設計しています。シンプルでわかりやすいユーザーインターフェイスを目指し、初めて使う方でも迷いにくい構成を意識しました。
–––制作中のコミュニケーションはどのように進めていたのでしょうか。
高山 Figmaでデザインを作成し、PDFを書き出して関係者に共有していました。修正のやり取りはSlack、打ち合わせはGoogle Meetです。ちょっと株式会社ではリモートワークが基本なので、社内の連携も含めて特に不便さは感じませんでした。
稲田 Slackは本当に返信が早かったですね。やり取りがテキストで残るので、「あのときどうだったかな」と後から確認しやすかったのも助かりました。
開業直前の混乱を支えた伴走力
–––開業日がなかなか決まらなかったそうですね。スケジュール管理は難しかったのではないですか。
高山 そうですね、その調整には苦労しました。最初に立てたスケジュールが何度も後ろへずれていってしまって。ただ、後藤さんが先行して進められる部分は進めてくれていたので、日程が決まってから一気に対応する形で乗り切りました。
稲田 私たちの都合で何度もスケジュールを引き直していただき、本当に申し訳なかったです。建物の工事の関係で二度手間になることも多く、開業直前まで慌ただしい状況が続いていました。

–––印象に残っているエピソードはありますか。
稲田 開業直前、作品を登録して公開しなければならないのに操作がわからなくなってしまい、泣きそうになりながらSlackで連絡したことがありました。するとすぐに電話をくださって、一つひとつ丁寧に教えていただいたんです。あのときは本当に助かりました。優しく寄り添っていただいて、精神的にも大きな支えになりました。
ちょっと株式会社にお願いして一番良かったのは、サイトやCMSの機能面だけではありません。困ったときに一緒に考え、最後まで伴走してくださるみなさんの存在だったと思っています。
高山 そうおっしゃっていただけるのは、本当にうれしいです。
–––今後は、Webサイトをどのように育てていきたいですか。
稲田 まずは、もっと見やすいサイトにしていきたいですね。更新や情報発信も、こちらでしっかり続けられる体制を整えていきたいと思っています。
過去の上映作品のアーカイブも、自分たちで対応すると言いながら、まだ手を付けられていなくて……。作品数も増えてきたので、検索や絞り込みができるようになるとうれしいですね。
高山 作品数が増えてきたので、検索機能があるとさらに使いやすくなると思います。以前から稲田さんとお話ししている周辺の飲食店情報なども含めて、映画館を中心に地域の魅力を発信するサイトへと育てていけたら面白そうですね。
–––最後に、シネマリスのような立ち上げ期のプロジェクトに対して、Orizmやちょっと株式会社はどのような価値を提供できるのでしょうか。
後藤 Orizmは決まった型がないので、お客様に合わせて柔軟に形を変えられます。シネマリスさんのように、最初は何も決まっていない状態から少しずつ形をつくっていくプロジェクトには、その変化に合わせて対応できることが大きな強みです。
高山 要件が変わっても、必要な機能を追加しながら使いやすさを保てるのがOrizmです。そうした柔軟性があるからこそ、変化の多いプロジェクトでも最後までしっかりと伴走できるのだと思います。

取材・文:小平淳一、写真:黒田彰
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