
CMSが多すぎて選べない! 有名・無料・高機能なら安心?【新人Web担奮闘記】

これは、とある飲料会社に勤める社員の成長物語です。Web制作知識ゼロの「小竹さん」が、ある日突然ブランドサイトの担当者に就任。周りの先輩や制作会社の人に話を聞きながら、Web制作やCMSに対する理解を深めていきます。
前回は、生成AIで「エム・ティー」のブランドサイトを自作しようとした小竹が、制作会社の鈴本から、企業サイトとして安心して運用するために考えるべきことや、制作会社に相談する意味を教わりました。Webサイトの目的から整理し直すことにした小竹。今回は、自社に合うCMS選びに挑みます。
この連載記事の構成・取材を担当するWeb Designing編集部の新人編集者「大竹」もまた、Web制作を学び始めたばかり。小竹と同じ目線で、みなさんと一緒にWeb制作の知識を深めていきます。
登場人物

小竹
株式会社ダブデイ・ベバレッジの広報部所属。入社2年目。新製品ペットボトル紅茶「エム・ティー」のブランドサイトの立ち上げ担当に抜擢され、Webの知識の少なさに四苦八苦しながらも奮闘中。行動力はあるが、少し天然なところも。

部長
株式会社ダブデイ・ベバレッジの広報部長。長年企業のマーケティング・ブランディングに携わるベテランで、Web制作の現場にも詳しい。いつもにこやかだが、たまに意味不明なジョークを言い放つ。

鈴本
小規模からエンタープライズ案件まで手広く対応するWeb制作会社のディレクター。相手の行動力をまず認めてから穏やかに軌道修正する、肯定的なツッコミ役。
目次
CMSを調べたら、候補が増える一方です!
鈴本小竹さん、こんにちは。今日は別の部署との打ち合わせでうかがったので、少し寄ってみました。……ずいぶんお疲れのようですが、どうしました?
小竹あ、鈴本さん! いいところに……。「エム・ティー」のWebサイトに使うCMSを調べ始めたら、終わらなくなってしまって。ちょっとこれを見てください。
鈴本うわあ、すごい情報量ですね。これ、全部CMSの比較ですか?
小竹はい。調べれば調べるほど知らない名前が出てくるんです。CMSって、いったい何種類あるんですか?
鈴本どこまでをCMSに含めるかで数は変わりますが、Webサイトをつくるツールなども広く含めた調査では、1,000種類以上が対象になっています。
小竹1,000種類以上! 1日10種類調べても100日以上……。あああ、Webサイトをつくり始める前に、季節が変わってしまいます。
鈴本しかも、新しいものが登場したり、サービスが統合されたりすることもありますからね。
小竹調べ終わる頃には、比較表が古くなっているかもしれないんですか。もうだめです……。
鈴本落ち着いてください。全部を調べ尽くしてから選ぶ必要はありませんよ。まず、何を基準に候補を絞るかを考えましょう。
たくさんあるCMS、何が違うの?
小竹そもそも、どれも記事や画像を登録できるみたいですが、何が違うんですか?
鈴本コンテンツを登録して管理する、という基本的な役割は共通しています。ただ、細かな機能や設定できる範囲には違いがあります。同じCMSでも、契約するプランによって利用できる機能が違うこともあります。
小竹製品の名前を並べただけでは、比べきれないんですね。
鈴本はい。だから、機能を1つずつ調べる前に、自分たちに何が必要かを整理したいんです。「エム・ティー」のWebサイトでは、どんな情報を更新する予定でしょうか?
小竹キャンペーン情報や商品のニュースです。商品説明の文章や写真も、自分たちで差し替えられると便利そうです。
鈴本では、その情報をCMSで管理できるようにしたいですね。更新する部分に絞ってCMSを使い、大きなレイアウト変更などは制作会社に相談する、という分担も考えられます。
小竹とりあえず全部変更できるようにするのではなく、普段の仕事でどこを触るかを考えるんですね。
鈴本そうです。さらに企業サイトでは、セキュリティや、公開前の確認の仕組みも欠かせません。社内のセキュリティ基準に合うかは、システム担当者などにも確認しておく必要があります。
小竹記事は、私が書いて部長に確認してもらうと思います。「承認機能あり」と書いてあるCMSなら、大丈夫ですか?
鈴本そこも、中身まで確認しましょう。複数の確認者のうち誰か1人が承認すればよいのか、全員の承認が必要なのか。それだけでも、必要な仕組みは変わります。
小竹あっ。商品情報なら、商品に詳しい部署にも見てもらったほうがよさそうです。
鈴本誰が編集でき、誰が公開できるかという「権限」の設定も大切です。同じ「承認機能あり」でも、社内の仕事の流れに合うかは、細かく見ていく必要があります。
小竹比較表に丸がついていれば合格、と思っていました……。丸の中身まで見ないと。
鈴本そのとおりです。今すぐ全部のルールを決めなくても大丈夫ですが、更新する情報や関係する部署がわかると、必要な機能を整理しやすくなります。
CMSによって更新のしやすさは変わる?
小竹必要な機能は少し見えてきました。でも、そのCMSを私が使えるかどうかも心配です。使いやすさは、製品によってかなり違うんでしょうか?
鈴本記事を書いて投稿する、といった基本的な操作では、一般的なCMSの間で極端な差が出ることはあまりありません。ただ、専門知識が少ない人の更新を重視するCMSがあったり、エンジニアが効率よく柔軟に構築できることを重視したCMSがあったりと、製品によって特徴はあります。
小竹つくる人にとって使いやすいか、更新する人にとって使いやすいか、という視点もあるんですね。
鈴本はい。そして、更新のしやすさは製品選びだけで決まるものではありません。制作会社がどんな入力画面を設計するかに左右される部分も大きいんです。
小竹使いやすいCMSを買えば、自動的に私にぴったりの画面になる、というわけではないんですね。
鈴本そうです。たとえば、キャンペーン情報に何を入力する必要があるか、掲載順を変える作業があるか、といったことを踏まえて設計します。小竹さんがお休みのとき、ほかの方が更新するなら、その方にも無理なく使えることが大切です。
小竹先輩にもお願いすると思います。私だけでなく、先輩にも使い方を聞いておいたほうがよさそうです。入力する画面には、どんなものがあるんですか?
鈴本大きくは「フォーム入力型」と「見たまま編集型」があります。フォーム入力型は、決められた欄に文章や画像を入れていく方法です。たとえば「タイトル」「開催期間」「説明文」といった項目を用意するイメージですね。
小竹記入用紙の空欄を埋めていく感じでしょうか。それなら、私にもできそうです。
鈴本書式を揃えやすく、情報の管理や再利用がしやすいのが特徴です。一方、見たまま編集型は、実際のWebページに近いレイアウトで、完成イメージを確認しながら編集する方法です。
小竹写真と文章がどう並ぶかを見ながら作業できるんですね。そちらもわかりやすそうです。
鈴本どちらが合うかは、運用体制や更新する人のスキルによって変わります。実際の作業を想定しながら、編集の形式と入力画面を一緒に考えましょう。
ヘッドレスCMSって何?
CMSを調べていると、「ヘッドレスCMS」という言葉を見かけることがあります。これは、文章や画像などのコンテンツを管理する部分と、Webサイトとして表示する部分を分けた仕組みです。
表示する側は、APIというデータを受け渡すための仕組みを通じてCMSから情報を受け取り、ページを表示します。取材では、表示部分をつくる技術や設計の自由度が高まる点が挙げられました。一方で、CMSを導入するだけでWebサイトの見た目まで完成するわけではなく、表示部分を別途構築し、連携させる必要があります。
「ヘッドレスかどうか」はWebサイトの構成の話で、先ほどの「フォーム入力型か、見たまま編集型か」とは別の観点です。更新担当者にとって使いやすいかは、編集画面や運用方法も含めて確認しましょう。

有名なCMSなら安心? 「無料」の先も考えよう
小竹ところで、広く普及しているオープンソースのCMSなら、私も以前から知っているものがあります。知っている人が多いものなら、困ったときにも調べやすそうですよね。
鈴本情報が豊富で、制作する側が参考にできるものも多いのはメリットですね。ただ、知名度だけで選ぶと、運用に必要な作業を見落としてしまうかもしれません。
小竹記事を書いて更新するほかにも、作業があるんですか?
鈴本ここでいう運用には、CMSそのものを安全に使い続けるための保守も含まれます。オープンソースのCMSでは、プラグインという追加のプログラムを使って機能を増やすことがありますが、その場合は本体だけでなく、追加したプラグインの管理も必要です。
小竹機能を足したら、その分、面倒を見るものも増えるんですね。
鈴本はい。本体を更新したときに、使っているプラグインが対応しているか、Webサイトに不具合が出ないかを確認する必要があります。プラグインが使えなくなれば、別の方法を検討しなければならないこともあります。
小竹え? 不具合が出る可能性があるなら、本体を更新しない方がいいのでは?
鈴本セキュリティの問題を修正する更新もありますから、止めておけばよいとはいえません。誰が更新の必要性を確認し、動作を確かめ、問題があれば対応するのか。そこまで含めて考えたいんです。
小竹待ってくださいよ。安全なバージョンに保つのは、制作会社さんが面倒を見てくれるんですよね?
鈴本保守契約の内容によります。その後の更新や不具合対応まで、ずっと制作費に含まれるわけではありませんね。……ときどき、いらっしゃるんですよ。あとから追加のセキュリティ対策が必要になって、「無償でお願いできますか?」というお客様が(にっこり)。
小竹へええ、そうなんですね(もしかして釘を刺されてる?)。CMS自体が無料かどうかが気になっていましたが、使い続けるための予算も必要なんですね。
鈴本ええ。セキュリティへの対応やサポートが十分でないCMSを選んで、導入後に困るケースもあります。CMSの利用料だけでなく、誰が保守し、困ったときにはどこへ相談できるかまで含めて比較しましょう。
高機能なCMSを選べば、あとで困らない?
小竹ここまで聞くと、いっそ一番高機能なCMSにしておけば、あとで困らない気もしてきました。大は小を兼ねる、です!
鈴本将来を考えるのは大切ですが、機能が多ければ自社に合うとは限りませんよ。いろいろな要望に応えようと高機能なCMSを導入したのに、必要なことを整理してみたら、そこまでの機能は必要なかった、というケースもあります。
小竹うーーん、たくさん機能があればいいってわけではないのか……。ちなみに、高機能なものだと、どれくらいかかるんでしょう?
鈴本製品やプランによって幅がありますが、CMSサービスの利用料が月額数十万円になるものもあります。Webサイトの制作費とは別に、継続してかかる費用です。
小竹月額ですか! 仮に月20万円なら、1年で240万円……。部長に「念のため全部入りで」とは言えないですね。
鈴本その機能が事業に必要なら、見合う投資になる場合もあります。ただ、使わない機能に費用をかけるのはもったいないですね。月額だけでなく、何年使う予定かも考えて比較しましょう。
小竹導入するときに払えるかだけでなく、払い続ける意味があるか、ですね。
鈴本それに、機能の多さが運用する人の負担になることもあります。使いこなせずに一部の機能を使わなくなったり、担当者が独自に手順を省いたりして、会社として決めた管理ができなくなる場合もあるんです。
小竹便利にするために入れたのに、面倒になって自己流で済ませてしまう……。ちょっと想像できます。
鈴本必要な機能が揃っていることと、それを無理なく使い続けられることの両方が大切ですね。
小竹でも、あとから必要な機能が増えたら、どうすればいいんでしょう?
鈴本そこは「拡張性」も確認しましょう。導入後に別のサービスと連携したくなっても、CMSの仕様によって対応できないケースがあります。今後、更新する部署を増やす予定や、連携したいシステムがあれば、最初に伝えてください。
小竹なんとなく全部入りを選ぶより、「これをする予定があります」と伝えるほうがいいんですね。
鈴本そうです。今必要なことと、将来必要になりそうなことを分けて考えましょう。導入したCMSを後から入れ替えるのは、簡単ではない場合もありますから。
小竹鈴本さんたちは、そういう条件を聞いてCMSを選ぶんですか?
鈴本はい。会社ごとに仕事の進め方も、重視することも違いますから。それに、制作会社側にそのCMSを使った実績があるかも判断材料になります。構築や運用でどんな点に気をつけるべきか、経験を踏まえて提案できるからです。
小竹製品の機能だけでなく、それを扱う人の経験も大切なんですね。
鈴本ええ。提案されたときは「なぜ、うちのWebサイトにはこれが合うんですか?」と聞いてみてください。必要な機能、更新のしやすさ、保守の体制、費用。その理由がわかると、社内でも説明しやすくなると思います。
CMS選びで、制作会社と確認したいこと
「自社でどう使うか」に加えて、次の点も確認しておきましょう。
- 自社のセキュリティ基準に対応できるか
- CMSや追加機能の更新・保守を誰が担当するか
- 困ったときにどこへ相談でき、どこまで対応してもらえるか
- 導入時だけでなく、利用料や保守など、継続して必要な費用はいくらか
- 独自の開発やカスタマイズが、将来の機能追加や保守の負担にならないか
- 将来予定している運用の変更や、ほかのシステムとの連携に対応できるか
- 制作会社にそのCMSの構築・運用実績があるか
サポートや保守の範囲は、製品やサービス、制作会社との契約によって異なります。「対応してもらえると思っていた」という行き違いを避けるため、担当範囲を具体的に確認することが大切です。
CMSを選ぶ前に、自分たちの使い方を整理しよう
小竹比較表、つくり直すことにします。最初に並べるのは、CMSの名前じゃなくて、「私たちがやりたいこと」ですね。
鈴本そうですね。まずは更新する情報と担当者、確認の流れ。そこに社内のセキュリティ基準や予算などを加えていくと、候補を絞りやすくなります。
小竹全部のCMSに詳しくならなきゃと思っていましたが、まず詳しくなるべきなのは、自分たちの仕事のほうでした。
鈴本技術的な比較は私たちもお手伝いします。社内で決まっていないことは、そのまま教えてください。一緒に整理していきましょう。
小竹ありがとうございます! ところで、比較表にもう1つ、わからない言葉が残っていて。「サーバ」って、うちの会社で用意するんですか?
鈴本そこは、選ぶサービスやWebサイトの構成によって変わりますね。次は、Webサイトをどこに置いて公開するのか、という話をしましょうか。
小竹Webサイトをどこに置く? なんかまたわからないことを言い出されちゃいました……。それよりも、もうお昼ですよ。一緒に近くの定食屋さんに行きませんか? 鯖の塩焼きがおいしいですよ。
鈴本鯖、サバ……。ベタすぎるオチ。しかし抜群の安心感、安定感です。
Web Designing編集部・大竹の取材メモ
Web Designing新人編集者の大竹です。今回も、博報堂アイ・スタジオのフロントエンドエンジニア/テクニカルディレクターである鈴木利弥さん、野本優和さんにお話をうかがいました。
今回、更新のしやすさはCMSそのものだけでなく、構築時の管理画面の設計に左右される部分が大きいと教えていただきました。また、選ぶときは、「誰がどこを更新するのか」「どのように確認して公開するのか」まで考えることが大切だとわかりました。使う人の視点と、制作・保守する人の視点を合わせて考えることが、CMSを選ぶ手がかりになりそうです。
今回わかったこと
- CMSは、知名度や機能の多さだけでなく、自社の使い方に合うかで選ぶ
- 更新のしやすさは、担当者や運用方法に合わせた管理画面の設計にも左右される
- フォーム入力型と見たまま編集型、それぞれの特徴を踏まえて編集方法を考える
- 承認や権限管理の機能は、社内の仕事の流れに合うかまで確認する
- 導入費用だけでなく、継続する利用料と、保守契約の範囲・費用も確認する
- 過剰な機能や独自仕様は、費用や運用・保守の負担につながることがある
- セキュリティ、サポート、将来の拡張性も踏まえ、制作会社と一緒に候補を絞る
次回はサーバやドメインの話。専門的な話を新人Web担当者にもわかりやすく解説します。どうぞご期待ください。
※上記の記事内に登場する企業・商品・人物・使用画像・ブランドサイトは架空の設定です。
教えてくれたのは…
記事内のキャラクター(鈴本ディレクター)は、鈴木さん・野本さんへの取材をもとに再構成したものです。

鈴木利弥さん
株式会社博報堂アイ・スタジオ
フロントエンドエンジニア/テクニカルディレクター
2015年に博報堂アイ・スタジオへ新卒で入社し、ブランド・コーポレートサイトなどの制作に幅広く従事。実務経験を強みに、戦略・企画立案からマーケティング実践まで一貫したテクニカルディレクションを担当。現在はこれまでの知見を活かし、新規事業開発を担当している。

野本優和さん
株式会社博報堂アイ・スタジオ
フロントエンドエンジニア/テクニカルディレクター
キャンペーンサイトから大規模コーポレートサイトまで幅広いプロジェクトに参画し、提案・テクニカルディレクション・要件定義・設計・実装を一貫して担当。多数のCMSの導入・構築・移行において、CMSアーキテクトおよびフロントエンド領域を担う。
取材・構成:Web Designing編集部 文:小平淳一
あわせて読みたい


まさか私がWeb担当者に! そもそもCMSって何?企業の発信はSNSだけじゃダメなの?【新人Web担奮闘記】
これは、とある飲料会社に勤める新人Web担当者の成長物語です。Web制作の知識ゼロだった「小竹さん」が、ある日突然ブランドサイトのWeb担当者に就任。周りの先輩や制作…
