CMSを引き継ぎ、コンテンツ資産を活かすWebサイトリニューアル。Movable Typeの事例に学ぶ「将来」を見据えた設計

Webサイトのリニューアルを機に、CMSの見直しを検討する企業は多いでしょう。しかし、必ずしもリプレイスが正解とは限りません。蓄積したコンテンツを活かすために、あえて同じCMSを使い続ける選択肢もあります。Movable Typeを継続した企業の事例から、その判断と設計の工夫をバーンワークス株式会社 代表取締役の加藤善規さんに聞きました。

目次

コンテンツ資産を活かすために、CMSの継続を提案

──まず、バーンワークスの得意とする領域を教えてください。

加藤善規(以下、加藤) 企業のコーポレートサイトやIRサイト、採用サイト、公的サイトの構築を得意としています。情報設計やUI設計、フロントエンド実装が主な専門分野で、特にウェブアクセシビリティには力を入れています。

もともと私は、Web標準に沿ってHTMLを正しく書こうというところからWeb制作に入ったんです。誰でも、どんなデバイスでも使えるWebサイトをどうつくるか。そこを突き詰めていくと、自然にアクセシビリティの話に行き着くんですよね。CMSについても、機能だけでなく、お客様が更新しやすいか、将来のリニューアルでもデータを活かせるかを考えて設計しています。

バーンワークス株式会社 代表取締役の加藤善規さん

──今回は、蓄積したコンテンツを活かすリニューアルについてうかがいたいと思います。御社でMovable Typeを継続利用した事例があるとのことですが、どのようなWebサイトで、何が課題になっていたのでしょうか。

加藤 具体的な企業名は出せませんが、主にBtoBで事業を展開している企業のコーポレートサイトです。プレスリリースやIR情報を長年発信していて、CMSで管理するコンテンツは1,000ページを超えていました。さらにそれとは別に、会社情報や事業案内といった主要ページが100ページ程度あります。

弊社は、その企業の以前の大規模リニューアルから関わっており、その時点でMovable Typeを導入しました。そのWebサイトは弊社で保守・メンテナンスをしながら約6年運用していましたが、やがてモバイルでの見やすさや操作性、表示速度を改善したいという課題が出てきました。さらにサーバ環境やセキュリティを見直す必要性も出てきたんです。

──CMSを継続するかどうかは、どのように検討されたのでしょうか。

加藤 お客様が複数の制作会社からコーポレートサイトの新たなリニューアル提案を募るなか、弊社にも「参加しますか」とお声がけいただきました。そこで、うちはMovable Typeを継続してやりましょう、と提案しました。

他社の提案を直接見たわけではありませんが、お客様からうかがった範囲では、別のCMSへの移行を前提にした案もあったそうです。ただ、お客様としては当初からCMSに関する明確な要件があったわけではなく、CMSを変更することも、Movable Typeを継続利用することも、特に指定されていませんでした。

弊社は、今回の課題では、それまで蓄積したデータを活かしながら改善できると考えました。移行にかかる費用やリスク、更新担当者の仕事がどう変わるかも含めて検討いただき、結果的に弊社の提案を選んでいただいたという経緯です。

──現場の更新担当者は、CMSの変更をどう捉えていたのでしょうか。

加藤 リニューアル前のコーポレートサイトを運用していたときに、「CMS上でこれができなくて困る」というご要望は、更新担当者の方からは特になかったんです。カスタムフィールドを使って更新しやすくつくっていたこともあって、今の方法で十分楽だし、いいと感じてくださっていたそうです。

むしろ、「CMSをリプレイスしたら、また一から更新方法を覚えなきゃいけないのか」という点が気になっていたようです。

「Movable Type」サイトのトップページ画像

コンテンツと見た目を分けて、次の変更に備える

──既存のデータを活かすために、どのような設計をしていたのでしょうか。

加藤 どのCMSを使う場合でも、データの再利用性は非常に重要だと思っています。これは今回のお客様だからというより、もともと弊社の考え方ですね。

記事本文にHTMLをゴリゴリ書いてしまうと、後で再利用しようとしたときに困るんです。下手をすると、全部HTMLを書き直すことになる。それを避けるのが、CMSを設計するときの前提です。

今回も、記事の中にデザイン固有のHTMLをなるべく持たせず、カスタムフィールドで情報を分けて管理していました。項目ごとに入力欄を用意できる機能です。

──入力された情報は、どのようにページになるのですか。

加藤 たとえば、決まった形の表を掲載するとします。それを担当者が毎回HTMLで書いていたら大変ですし、ミスも起こりがちですよね。そこで、各項目の内容を入れるだけで、指定の表ができる入力欄をつくるんです。見せ方は、Movable Typeのテンプレート側で決めておきます。

そうすれば、デザインを変えても入力済みの情報はそのまま活かせます。今回もテンプレートをつくり直し、蓄積した記事を新しいデザインに当てはめました。記事ごとにHTMLを書き直す必要があったら、かなりの費用がかかったと思います。

──データの再利用性を重視するのは、なぜですか。

加藤 次のリニューアルで、CMSを入れ替えたいと言われる可能性もありますからね。

情報を整理して管理しておけば、別の場所にも移しやすい。今のデザインで表示できればいいのではなく、将来の使い方も考えておく必要があります。

カスタムフィールドを活用したリニューアルのイメージ

記事だけでなく、情報にたどり着く入口も守る

──今回のリニューアルでは、既存の記事をどこまで引き継いだのでしょうか。

加藤 従来のMovable Typeで管理していたコンテンツは、すべて引き継ぎました。過去のプレスリリースやIRのお知らせも、新しいデザインで表示できるようにしました。一方で、それ以前に手作業でつくられ、今の担当者も「何のためのページだろう」とわからなくなっているものは、さすがに整理しました。

──過去の記事を残すうえで、気をつけたことはありますか。

加藤 プレスリリースやお知らせは、古いものでも検索で見つけて来てくださる方がいるんですよね。せっかく来たのに「ページがありません」では、やっぱりよくない。なるべくURLも変えず、変える場合は新しいページへ転送するリダイレクトで対応するようにしました。

IR情報なら、投資家の方がブックマークしていることもあります。今まで見られた情報が見られなくなって、もう一度トップページから探さなければならないのは、利用者にとってやはり不便です。

──既存のコンテンツを引き継ぐ一方で、大きく変更したい部分もあったのではないでしょうか。

加藤 領域によって、要望は分かれましたね。事業案内はもっと拡充したいという要望があって、情報を増やすなら階層構造も変わりますし、大幅に手を入れる必要がありました。しかしIRの部分は、なるべく今までの構造を守ってほしいという要望があったんです。

拡充するところは思い切って変えるけれど、継続性が大事なところはなるべく維持する。その両立を考えて設計しました。

CMSを継続しながら、運用環境は見直す

──Movable Typeは、同じシステムをそのまま引き継いだのでしょうか。

加藤 サーバ環境を新しくし、Movable Typeのバージョンアップやテンプレートのつくり直しも行いました。製品は継続しますが、古い環境を何も変えずに残すわけではありません。

セキュリティ面では、公開するWebサイトとMovable Type本体を分離しました。Movable Typeは静的HTMLを生成できるので、公開側にはそのファイルを置き、CMS側は社内ネットワークおよび許可された環境からのみアクセスできるよう制限しています。登録されていたユーザーアカウントも一度見直して、どの部署の誰が使うのか、それぞれにどこまで操作を許可するのかを整理しました。

──制作会社側の保守や改修の方法にも、変更はありましたか。

加藤 テンプレートを含むWebサイトのファイルを、GitとGitHubで一元管理するようにしました。ファイルの変更履歴を残して、修正内容を確認しながら反映できる環境です。

Movable Typeの「ファイルへのリンク」という機能を使って、テンプレートもファイルとして管理しています。管理画面で直接編集するのではなく、ほかのファイルと同じ流れで扱えるようにしました。

お客様が普段行う更新作業は大きく変わっていませんが、こちら側では保守や開発を進めやすくなっています。

GitHubを使い、テンプレートなどを管理するイメージ

次のリニューアルでも、コンテンツを活かすために

──これからリニューアルを検討する企業は、CMSを選ぶ前に何を整理すべきでしょうか。

加藤 まず、抱えている課題が、本当にCMSそのものの問題なのかを見極める必要があります。データの設計やテンプレートのつくり方、社内の運用ルールに原因があることもありますから。今回も、モバイルでの見やすさやセキュリティは、CMSを変えずに改善できました。いずれにしても、新しいCMSを選ぶことを起点に考えないほうがいいと思います。

一方で、今使っているCMSで必要な機能を実現できないとか、CMSの開発が終了していて安全な運用が難しいのであれば、移行を考えるべきです。

──同じCMSを使い続ける場合に、注意すべき点はありますか。

加藤 不要なプラグインや、1人の担当者だけが知っているような仕組みを残さないことです。プラグインはCMSに機能を追加するものですが、開発が止まっていたり、何のために入っているのかわからなかったりすることがあります。

担当者がいなくなって、別の人が「これ、何のために入っているんですか」と聞いても、「あの人しか知りません」というのは、あるあるなんですよ。でも、制作会社としてはよくない状態です。

弊社では、そういう部分も確認する前提で見積もっています。本当に必要か、長く使ううえで問題ないか。整理できるときに整理しておくことは、結構重要だと思います。

──CMSのリプレイスや選定にあたって、制作会社はクライアントにどう関わるべきでしょうか。

加藤 お客様の要望をそのまま仕様にして、言われたとおりにつくることが、制作会社の役割ではないと思っています。まずは、その要望が出てきた背景や、最終的に実現したいこと、今困っていることを理解する必要があります。

CMSの選定も同じです。整理した要件をもとに、今のCMSを継続・更新するか、別のCMSへ移行するかを比較します。その際には、既存コンテンツの再利用性や移行リスク、費用、将来の拡張性まで含めて評価するべきでしょう。

その結果、お客様が最初に想定していた方法とは違う提案になることもあります。その場合は、なぜその方法が適しているのかを説明して、判断できるようにすることが大切です。単なる御用聞きではなく、お客様と一緒に課題を整理し、その解決につながるWebサイトをつくっていく。その結果、CMSを変えない選択が最適という場合もあると思います。

取材・文:小平淳一 写真:黒田彰 企画協力:シックス・アパート株式会社
※本記事はシックス・アパート株式会社とのタイアップ企画です。

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