
《デザイン基礎講座》「UXデザイン」を学ぶメリットとは?
ユーザーが製品やサービスをどのように感じ、どう使用するかに焦点を当てながら、ユーザビリティやアクセシビリティ、感情的な満足度などさまざまな側面を考慮しながらプロダクトの開発を進めていく「UXデザイン」。ユーザーときちんと向き合うチームづくりに、欠かせない知識となるでしょう。
客観性を重視するUXデザイン
ユーザーが製品やサービスをどのように感じ、どう利用するのかに焦点を当てながら、ユーザビリティやアクセシビリティ、感情的な満足度など、さまざまな側面を考慮し、設計を進めていくUXデザイン。そのために、ユーザーが製品に「出会う前」から「忘れる」までを一気通貫で捉えて、そのプロセスをストーリーとして描きます。さらに「そのストーリーがきちんと成立しているのか」というところをしっかりと検証する点もまた、UXデザインの大事なポイントです。
その際に行われるのが「ユーザーインタビュー」であり、「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」の作成であり、「プロトタイプ」を使ったユーザーテストなどの手法です。なぜ、こうした手の込んだ工程が必要なのかというと、UXデザインが徹底して「客観的な視点」を重視するからです。
世の中には1人の天才の意見や信念をもとに商品やサービスを開発する企業もありますが、一般的には、自分たちの主観に左右されることなく、ユーザーのためにプロダクトをつくることが大事になります。だからこそ客観性が必要なのです。UXデザインは、客観的な意見を得るための手段と考えてもいいかと思います。
UXデザインが重要視されるようになった背景には、デジタルデバイスの出現と、テクノロジーの複雑化があります。特にスマホのような新しいデバイスには、ソフトウェアをどう設計するか、決まったルールがありませんでした。例えば、「どこの部屋にもあるドアノブ」は、それを見るだけで、引くのか押すのかわかりますが、特に画面の小さなスマホのようなモバイルデバイスのソフトウェアを利用する場合は、そうした共通の認識がありません。ユーザーに問いかけて、「これがボタンだとわかりますか」と、確認し続ける必要があります。その際に使われるのがUXデザインのさまざまな手法だというわけです。
また、設計から制作、リリース、修正というプロセスが一般的なソフトウェア製品にマッチした開発方法だったというのも、UXデザインが広く使われるようになった理由の一つに挙げられるでしょう。

いくつかの種類があるプロトタイプ。プロジェクトの目的や進捗に合わせて適切に選択する必要がありますが、皆さんはそれを理解していますか?
https://youtu.be/oph6jTBHGv4
思い込みを排除するためのスキル
現在は多くの領域で利用されるUXデザインですが、これを身につけることは、「思い込み」を排除し、仮説を検証しながら進むチームとしての考え方を身につけることでもあります。
多くのメンバーがUXデザインを身につけたならば、その企業は自然とユーザー中心のアプローチをとることになるでしょう。
教えてくれたのは…

広野 萌さん
株式会社フォルテ 代表取締役 一般社団法人デザインシップ代表理事 デジタル庁/ヤフー株式会社にデザイナーとして入社後、2015年株式会社FOLIO共同創業。2018年一般社団法人デザインシップ設立、2021年株式会社フォルテ設立、同年内閣官房IT総合戦略室を経てデジタル庁入庁。
Text:小泉森弥 Illustration:國廣 稔
※本記事は、「Web Designing 2024年2月号」の記事を一部抜粋・再編集して掲載しています。