モール型ECでの出店 モール型ECでショップを開店するには

ECストアを開設するための基本知識や事前に必要な準備が整ったら、実際の開店手続きを始めましょう。ここでは国内の主要なモール型ECである「楽天市場」の例を参考に、その流れを見ていくことにします。

 

ここではモール型ECの特徴と出店にかかる費用やプロセスについて紹介します。国内の主要なモール型ECである「Amazon.co.jp」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」は、いずれも年商が数千億円から数兆円に達する超巨大なマーケットです。モール内への出店数も、楽天市場では2020年8月時点で5万店を突破したと発表しています。また、Amazon.co.jpは「出店」というよりは商品単位の「出品」にあたるため、店舗数だけ見ればさらに多いことが推定されます。

いずれにせよ、集客力については申し分ないほど巨大なため、問題は多くの競合ショップとの間で適正な利益を上げて運営を継続できるかという点にかかっています。出店自体の難易度はAmazon.co.jpは比較的低いですが、ショップ自体のブランディングには適さない面もあります。そこで、店舗のブランド化のための仕組みが整備されている「楽天市場」を例に開店までの流れや費用を見ていきます。なお、Yahoo!ショッピングについては、Amazon.co.jpと楽天市場の中間的な性質があります。

いわゆる「3大ECモール」の大まかな傾向を整理しました。集客力も重要ですが、初めての出店に際してはサポート体制や運用費用などを総合的に比較して考えることをおすすめします

 

楽天市場の出店コストを見ていきましょう。3つのプランが用意されていて、初期費用は共通で税込66,000円となります。運営費用は「スタンダードプラン」で月額55,000円となり、最初の半年分をまとめて払うため396,000円が実質的な初期費用となります。さらに、売上高に応じたシステム利用料や決済・楽天ポイント利用料なども発生するため、仮に目標月商が100万円、予想客単価3,000円とした場合、売上の10%強を月額利用料とは別に支払うイメージとなります。

そのため、楽天市場側ではスタンダードプランを選択する目安としておおよそ平均月商140万円を想定しています。この目安よりも小規模の場合は「がんばれ!プラン」を選ぶ方法もありますが、機能面で制約があり月額費用を1年分一括で支払うため、初期費用もスタンダードプランと大きく変わりません。また、システム利用料なども割高になる計算となります。楽天市場を選ぶ明確な理由がないのであれば、他のECモールを検討するか小規模の販売に役立つ独自EC系サービスを検討してみるとよいでしょう。

充実したEC機能を持つ楽天市場ですが、その分運用コストは高めな傾向があります。十分な売上が予想できるのであれば問題ありませんが、事前にコストシミュレーションすることをおすすめします https://www.rakuten.co.jp/ec/plan/cost_simulation/

 

コスト面での問題がないのであれば、出店に向けた手続きをWebの出店申し込みフォームから必要事項を入力して申請しましょう。法人以外に個人事業主でも申請可能ですが、売上の実績がない場合は審査を通過するのは難しい傾向があります。この段階では出店の契約は完了していないため、手続き完了の連絡を待ちます。通常は2週間から1カ月程度で楽天市場の店舗運営システムである「RMS(Rakuten Merchant Server)」アカウントが利用可能になります。その期間を利用して、出店審査に必要な資料などを準備しておきます。審査書類のほかに業種や商材によっては営業許可や免許証の提示が必要です。また、商材の写真や法人は履歴事項全部証明書などを準備します。取扱可能な商材は楽天市場独自の基準もあるため、事前に確認しておきましょう。

RMSアカウント取得後は、管理画面にログインして楽天市場内に出店するショップの情報を設定していきます。ここでは決済や配送の設定に加え、商品情報の登録やカテゴリ作成などの作業が必要です。また、ショップのトップページのバナー画像作成も必要です。ほかにも楽天市場からの振込口座や自動振替の登録などの手続きもあります。さらに、楽天市場側が実施する店舗ルール検定試験に合格することを条件に開店前の「オープン審査」を受けることができます。この期間も2週間から1カ月程度が目安で、事前準備次第で短縮できますが現実的には申し込みから数カ月程度の期間を見越してスケジュールを立てることをおすすめします。手続きに関しては楽天側のコンサルタントやアドバイザーの助言を無料で受けられます、出店審査は厳格なため万全の準備をして審査に臨みましょう。

申し込みから出店審査を経て開店するまでの流れはWebでの作業が基本となります。しかし、その準備やオープン審査の通過にはかなりの時間と手間を要します

 

楽天市場でのショップ運営は「RMS」によって一元管理できます。主な機能としては、店舗ページの制作や商品の登録、注文一覧の確認から商品発送までの処理を管理する機能、発送案内メールや複数注文に対するメール一括送信機能、請求書や物流・決済サービスとの連携などバックオフィス業務、メールマガジンの配信、そして店舗の売上や顧客の行動をダッシュボード画面で確認できる「店舗カルテ」などが標準で備わっています。特に秀逸なのが店舗カルテで、アクセス人数を購入者数で割った「転換率」や客単価などECマーケティングに欠かせないコンバージョン率などの数値が、特別なアクセス解析機能を設定しなくても把握できるようになっています。さらに、新規顧客とリピート顧客の割合や流入経路、アクセスするデバイスがPCかスマートフォンかといった店舗の改善に欠かせないデータも手軽に把握できます。これらの解析結果から購入までの経路のどこで離脱するのか、カートに入れても購入に至らない「カゴ落ち」の理由が何かといった問題点を発見する手がかりを見つけることもできるでしょう。A/Bテストなど改善のための施策を検証するツールにも対応しています。

RMSの操作は開店準備の段階で慣れておく必要があります。まずはその基本機能の概要を理解しておきましょう

POINT
ECショップの開店は
ゴールではなくスタート地点

 

RMSの基本機能のうち、店舗ページの構築機能についてもう少し詳しく見ていきましょう。1つは商品の登録で、もう1つが店舗のページデザインです。この2つは密接に関連していて、お店の入り口や看板にあたる「トップページ」の下には商品を分類するための「カテゴリページ」があり、カテゴリのさらに下の階層には個別の商品を登録するための「商品ページ」が配置されます。店舗ページはこの3層構造が基本となっていて、商品構成によっては最大5層まで増やすことができます。また、商品ページとは別に会社概要や決済や配送のルール、伝言板など基本情報のページもつくれます。

Webページのデザインやバナー制作のノウハウがなくても、基本的なレイアウトであれば初心者でも構築は可能で、「RMSサービススクエア」内からは「compass」「Biiino(ビーノ)」「EasyPage」といった有償の制作支援ツールを用いて楽天市場のショップに最適化されたデザインのつくり込みも可能です。さらにRMSを用いて登録した商品ページは自動的にスマートフォン表示にも対応するので、基本的には最小限の手間で店舗ページを構築できます。もちろん、より洗練されたデザインや、楽天市場でのマーケティングに特化したノウハウを盛り込みたい場合にはECの経験が豊富なWeb制作会社に依頼するのもひとつの選択肢です。ただし、必要な情報を事前に整理し販売に関するルールを決めておくことは、ECモールでも独自ECサイトであっても必要です。さらに、個別の商品のイメージ写真や説明の文章、サイズの採寸などのいわゆる「ささげ」業務もショップ運営には欠かせない作業です。こちらもどの形態のECサイトでも必要となります。

店舗のサイトマップは基本的に3層構造となっています(最大5層まで)。運営会社や特商法の情報を表示するページなども作成可能です

 

RMSへの商品登録作業もシミュレータで試せるので、開店前に運用のワークフローを演習できます。カテゴリページの設定から下位カテゴリを作成し、商品情報を登録していきます。シミュレータではデモ画面のため商品の個別登録しか試せませんが、実際の運用ではCSVファイルのテンプレートを利用して商品情報のリストから一括登録や更新するのが基本となります。そして個別の商品の商品名や価格、管理番号や税金や送料の設定、販売期間や注文受付数、在庫表示などを設定します。登録が完了すると商品ページがプレビューできます。

ここまで述べてきたように、商品を販売する際にはさまざまなルールを事前に決めておかないと運営自体が難しいことが理解できるかと思います。楽天市場の出店申込自体は簡単ですが、RMSでの店舗構築機能を操作できるようにならないとオープン審査の通過は困難です。審査に落ちるとRMSに登録した作業が無駄になってしまうだけでなく、最悪の場合はRMSアカウント自体が利用できなくなることもあります。質の高いショップを目指すためにも、事前に綿密なシミュレーションを繰り返してトレーニングをしておきましょう。

RMSの商品登録の作業はシミュレータがありますので、申し込みまでに操作性を試すこともできますhttps://www.rakuten.co.jp/ec/environment/service/experience/

POINT
運営システムの操作をマスターすることが
ショップ開設の最低条件。

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