本質的に物事を実現するテクニカルディレクター集団

Tex:鍛治屋敷 圭昭
広告代理店にてマーケティング職などを経たのち、2014年にプログラマーとしてAID-DCC Inc.に入社。2018年2月、テクニカルディレクター・コレクティブ「BASSDRUM」を設立。

 

世の中に溶けていくWebの技術

もはやどこまでを「Web業界」と呼ぶのかわからないほど、その業務はとても広範囲に渡っています。かつては情報を整理し、見やすくまとめたサイトをつくることが主要な業務でした。しかし今では、ビッグデータと機械学習が、あらゆるコンテンツをパーソナライズして自動生成するところまできています。また、その技術はブラウザ外へも広がり、Web制作会社が現実空間でのインタラクティブなシステムやテーマパークのアトラクションなどを制作することも珍しくなくなりました。

Web業界がいままで培ってきた技術は、こうして世の中のあらゆる場所に溶け込んでいます。ブラウザ内に留まらない、「汎用的な技術を武器とした業界」になっているのです。

テクニカルディレクターの真の役割

そのような状況の中、プロジェクトの課題は複雑化し、未知の領域にぶつかることが増えています。紙の上で考え、会議で議論を交わしているだけでは答えが出ない。本当に実現できるのか。果たしてそれは、どんな体験になるのか。そこで必要とされるのが、「テクニカルディレクター」という職能です。プロトタイプで体験の検証をし、技術力と幅広い知識をもとに実現方法を設計し、適切なチームを組む。ときには自らも手を動かし、プロジェクトを着地させます。

単純に技術レベルが高いエンジニアというだけでは務まりません。ビジネス要件や文脈を理解し、適切なコミュニケーションが図れることや、マネジメント能力も必要となってきます。しかしながら、このテクニカルディレクターという職能は、適切に認識されているとは言い難い状況です。制作リソースとして捉えられてしまったり、当のテクニカルディレクター自身が、プロジェクトのコアにまで入り込んでいく役割ではないと思い込んでいることもあります。技術が絡まない案件の方が少ない今、必要性はとても高いのに、そのことが認識されていないというのは、事業者、受注側、プロジェクトが出ていく世の中にとって不幸なことだと思うのです。

筆者が立ち上げから参画している「BASSDRUM」は、そんなテクニカルディレクターのみが所属し、その価値を世の中に浸透させていくことをミッションとしています。既存の納品ベースでの受注形態に加え、スタートアップへの労務・開発力投資や、新規事業に対するプロトタイピングコンサルタント、企業とのパートナーシップによるCTO(最高技術責任者)的役割の提供など、テクニカルディレクターが力を発揮するであろう形態を常に模索し、形にしています。

求められる“実現力”

世の中が成熟するにつれ、「仕組みを考える人」や「課題を設定する人」など、抽象的なレイヤーで世の中を捉える能力の需要が高まってきました。考え抜いたその先には、「本質的にものごとを実現する力」が、今後ますます必要となってくるはずです。それは、単なる下請けの作業者ではない。プロジェクトにコアメンバーとして参画し、クリエイティブやマーケティングのカウンターパートとして、技術的な視点から寄与し、実現力を提供する存在です。そんなテクニカルディレクターの実現力は、これからの時代に向けて、まだまだ価値を発揮していく余地が広がっていると我々は考えます。

WORKS1/Solarita

西洋占星術と東洋の占いを融合させた新しい占いサービス。開発投資案件として参加し、オリジナルのアルゴリズムに基づいたシステムのプロトタイピングから、ファーストローンチまでを担当しました。アイデアをすばやく形にすることで、事業機会を逃すことなくサービスを立ち上げることに寄与しています

WORKS2/Push Connection powered by キレイキレイ

ライオン「キレイキレイ」をIoTデバイス化するアタッチメントの開発。ハードウェアの設計・開発、連動するアプリの開発ディレクションを担当しました。ハードウェアからアプリまでを一貫して手がけることで、コンセプトモデルとしてタイトな条件をクリアしながら、スムーズな開発を実現しています

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