革新を起こすスタートアップが生まれる土壌とは?

日本ではリリースされていなかったり、まだあまり知られていないものの、かなりイケてるスタートアップの魅力を紹介する本コラム。第1回目となる今回は具体的な例を紹介する前に、まずスタートアップについて、そしてサンフランシスコおよびシリコンバレー地域についてまとめてみたいと思います。

スタートアップの目的とは、“新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジット(投資資金回収)を狙うこと”です。また、起業の理由として最も多いのが、“今までにないイノベーションを通じ、人々の生活と世の中を変えること”。既存の商品やサービスと同様のビジネス展開を目指すだけのスタートアップはほぼ存在しません。つまり、イノベーションと社会貢献を存在意義としていない企業は、日々の安定した収益と長期成長を目指す中小企業に近いでしょう。

そして、最重要ポイントが“成長スピード”です。スタートアップは、エクジットプランを含め短期間での急激な成長が求められます。チームはアンバランスな組織形態のままで、会社の成長だけを目指し、我を忘れて突っ走るのです。

そんなスタートアップたちが続々と生まれるサンフランシスコとシリコンバレー地域は、総称して「SFベイエリア」と呼ばれます。最近話題になるアメリカのスタートアップの多くが、実はシリコンバレーではなく、サンフランシスコに本拠地を置いています。代表的な企業としては、Twitter、Uber、Airbnb、Pinterest、DropBox、GitHubなどが挙げられます。

地理的に見てみても、サンフランシスコ市の面積は山手線の内側ほど、人口も80万人弱と少ないなかで、毎晩スタートアップ関連のさまざまなイベントが開催されています。このような環境で、人材の流動、情報交換が頻繁で、新しい企業や文化、イノベーションが次々と生まれる原動力となっています。

そんなサンフランシスコのスタートアップを表す上で、非常に重要なキーワードが「デザイン」です。若者が多く、デザイン関連の学校も多いサンフランシスコに住んでいる多くの人達が、総じて高いデザイン感覚を持っていると感じます。そして数々のテクノロジーのコモディティ化が進む中で、テクノロジーの先進性よりも「最終的にユーザーがどう感じるか」という、デザイン性やユーザーエクスペリエンスがより重要視されるようになってきています。ユーザーに愛されるプロダクトには、デザイン性の高さが重要になっているのです。

次回からは、このベイエリアを背景に話題になっているスタートアップを紹介し、日本ではまだ見ぬビジネスの可能性を追っていきましょう。

サンフランシスコとシリコンバレーは地理的にも文化的にも大きく異なっています。サンフランシスコが市の名前であるのに対し、シリコンバレーは複数の都市が集まった地域の総称です

 

Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。サンフランシスコ、シリコンバレーを中心に、スタートアップの魅力をデザイン、ビジネス、テクノロジー面から解説します。 http://btrax.com/jp/
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