「認知的ウォークスルー」を使ってみる●特集「スマホ最適化」

スマホがどう使われているのか“正しく理解する”には

スマホサイトの役割を考える際に、まず大事なのはスマホが“どう使われているのか”を理解することです。「理解する」と言っても、実はこれ、なかなか難しいことです。

なぜ難しいのでしょう。その理由の1つは、前章でも触れたとおり、スマホというデバイスがテレビや新聞、雑誌、交通広告などと並行して「ながら見」「チラ見」をされることの多いデバイスだということにあります。しかし実はそれ以前に、もう1つの、より深い問題が存在しています。

それは、あなたが「提供する側(作り手側)」に立つ人である、ということです。提供者側のほとんどが、自分目線で都合のいいユーザー像を作りあげ、「スマホはこう使われるはずだ」と決めつけてサイトを見ています。これでは、正しい見方などできるはずもありません。

では、その偏った目線から踏み出して、ユーザー側の視点に立ち、スマホがどう使われているのかを正しく捉えるには、どうしたらいいのでしょう。それにはなんと言っても「ユーザーの行動を観察する」ことが必要となります。

たとえばマーケティング会社では、ユーザーと同じような立場の人たちに協力してもらい、その人が何を見て、どういった操作を行うのかを観察します。テレビを見ながら、あるいは友達と話しながらスマホを使う場合、どんなことが引き金になって、どんなページを見るのか(あるいは見ないのか)を、つぶさにチェックするのです。

その結果は、得てして厳しいものとなります。作り手が見てほしいと思って用意したコンテンツは、素通りされたり、過不足があるために不満を感じさせたりしてしまうことがほとんどなのです。しかしこの厳しい結果こそが、作り手が都合良く作りあげた「妄想」とは異なる、本当の「ユーザー目線」によってもたらされたものなのです。

こういったユーザー調査の大切さはおわかりいただけたのではないかと思いますが、予算の都合もあって、マーケティング会社に依頼することも、協力者を募ることもできない、という方もいらっしゃるでしょう。そこで、もう1つの方法を紹介します。こちらは無料で、いますぐにでも試すことのできる方法です。

 

SAMPLE ウェディング情報サイトで考える認知的ウォークスルー

 

ユーザーの状況設定は‥‥

・半年後に結婚を控えた女性で、式場が決まらずに焦っている

・パートナーがおっくうがって、積極的に協力してくれない

・次の土日には、無理矢理にでもパートナーを連れて式場見学に行きたい

2つのウェディング情報サイトがあるとします。それぞれ同じようなコンテンツ・機能を備えているのですが、フェア一覧の画面について考えてみましょう。

1つは「A:予約可能なフェアを写真つきで整然と並べた、見た目に力を入れたサイト」で、もう1つは「B:各フェアの写真・イメージではなく、フェア予約機能のカレンダーを全面に押し出したサイト」としてみます。

まずは、素の状態で評価してみます。すると多くの方が「A」の見た目の良いサイトを選びます。特に提供者側、作り手側の方にその傾向が顕著です。では、ここに右上のような状況設定を加えて、あらためてサイトの中身を評価してみましょう。ウェディング情報サイトを使うユーザーには、ありがちな状況です。

 

認知的ウォークスルーでユーザー目線でサイトを見る

お金をかけずに、自分一人でも、今からすぐに行える調査、それが「認知的ウォークスルー」と呼ばれる方法です。なんだか、難しそうな言い回しですが、要は「ある設定のユーザー」になりきって、スマホを使ってみようということです。たとえば、上で紹介しているようなウェディング情報サイトの比較事例では、「設定」のあるなしで、評価がガラリと変わります。

設定がない場合は、見た目の良いAを選ぶ人が圧倒的多数です。特に、サイト提供者に、その傾向は顕著だと言えるでしょう。しかし、上記の「設定」の女性になりきって、いえ、それこそ「憑依」させるくらいのつもりで2つのサイトを見てみると、見た目の悪さから「いまいちだな」と思っていた、Bの「フェアの予約機能カレンダーを全面に押し出す」という部分が俄然、光って見えくるのではないでしょうか。「面倒くさがるパートナーに、有無を言わさぬよう、短時間で予約までもっていく」には、式場見学予約機能がアドバンテージになるからです。このように状況設定によって、サイトの評価はガラリと変わるのです。

これをあなたのサイトにあてはめて試してみてください。「設定」を細かく考える必要があるので、少々大変かもしれませんが、普段から「○○なユーザーに見てもらいたい・利用してもらいたい」と考えているなら、10や20の設定は作れるでしょう。

そして認知的ウォークスルーをしてみてください。きっと、これまで気付かなかった問題点があちこちに見えてくるはずです。これこそが、ユーザーの視点に立ってサイトを見るということなのです。

 

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