
Instagramをビジネスに活用する(3/3)●インスタグラム広報が明かすInstagram広告の狙い
Instagramの3つのコアバリュー
──Instagramのビジネス利用について注目が集まっていますが、広告に関してはこれまで慎重な動きに見えます。理由は何でしょうか。
日高●Instagramが広告事業のテストを米国で開始したのが2013年9月、本格導入は2014年頭頃からです。確かにこの間のアプローチは控えめであったといえますが、これはInstagramがコミュニティを大事にするブランドなのと関係があります。もともとInstagramは創業時から3つのコアバリューを掲げていて、「クリエイティビティ」を促進するプラットフォームであること、「シンプリシティ」を徹底して誰でも使いやすいサービスやインターフェイスであること、そして「コミュニティ」とそこから生まれるインスピレーションです。そのため、広告の導入に際しても時間をかけて、ユーザーやお客様の反響やフィードバックを聞きながら慎重に進めてきました。日本で導入を開始したのは2015年の5月で、全世界で8カ国目となりますが、当初はすでにInstagramコミュニティの一員である数社のクライアント様と展開を始め、現在はクライアント数を増やしています。なので、皆さんのフィードが広告だらけといったことにはなっていないはずです。
──出稿の基準は? これから広告を出したいと考えている企業とはどのような話し合いが持たれるのですか。


日高●広告主の方には主に3つの目的に対して広告をご出稿いただけます。動画の再生、Webサイトのクリック、そしてモバイルアプリのインストールです。具体的な内容はお話できませんが、おかげさまでご相談の問い合わせも増えています。
──ビジュアルマーケティングならではの選定基準というものはあるのでしょうか。
日高●一般的に代理店経由でも直接のお取引でも、各プラットフォームに見合った最適なマーケティング手法とクリエイティブを模索するものだと思います。テレビはこう、雑誌はこう、たとえデジタルでもFacebookとInstagramではおのずと手法は異なってくるでしょうね。弊社では「クリエイティブショップ」というチームがありまして、FacebookやInstagramではどのようなクリエイティブが適しているかをクライアント担当の人間と一緒に考えて、提案しています。広告代理店のクリエイターチームがこちらのメディア内にいるのだと考えるとわかりやすいかもしれません。
広告主のニーズの多様化に応える
──Instagram広告や各種のランキングを調査すると、今のところファッション業界のブランドが多いような気がしますが、業態によって向き不向きはあるのでしょうか。
日高●広告を利用するかどうかは別として、Instagramの企業アカウントはものすごく多様化していて、とても面白い時期に来ています。ファッションブランドといってもオートクチュールもあれば、カジュアルなブランドもあって幅広く参加されています。トラベル業界とも親和性が高いとよく言われますが、私の知っているところではkmタクシー(@km_kankotaxi)さんのように、訪日観光客向けに東京の観光名所を英語の情報と一緒に発信されていたり、とてもクリエイティブなつくり方をされています。また、企業だけではなくて、サマーソニックやライジングサンロックフェスティバルのような音楽フェスでもInstagramを活用いただいています。サマーソニックの例では、公式サイトで写真APIを使い「#summersonic」 「#サマソニ 」というハッシュタグを使い、参加できない人でもフェスの臨場感を楽しめるように写真を集めて掲載されていました。

主に訪日観光客向けに、都心からすぐに観光タクシーを利用できる「Tokyo Drive」を展開するkmタクシー。東京を象徴する観光名所の写真を「#東京観光タクシー」「#tokyo」などのハッシュタグとともに英語で情報発信をしている

音楽フェスであるサマーソニックの公式アカウント。今年はスタッフしか入れない舞台裏の風景などを、建築やストリート写真投稿で人気のあるnaka_ideaさん(@naka_idea)とyukubo(@yukubo)さんが撮影するという企画を実施した
──現状ではブランディングや認知の向上というのがInstagramを利用する企業の目的なのでしょうか。また、広告を利用するメリット、効果測定についてはどうお考えでしょう。
日高●そうですね、ブランディングとは何かという定義から始まってしまうのですが、地道に質のよい写真を通してブランドストーリーを語りたいというところにとっては、広告を投下するかしないかに関係なくInstagramは適していると思います。広告のメリットですが、やはりリーチしたいターゲットに、届けたいコンテンツやメッセージを届けられることです。Facebookページのインサイトのような機能は、Instagramでは現状広告を出稿いただくアカウントのみ見ることができます。これはキャンペーンを実施したいという企業様には、きちんと測定できるKPIを示してビジネスのお役に立つプラットフォームにしていきたいという考えがあるからです。
──それが、アプリインストール広告などの新しい形式でしょうか。
日高●すでにアナウンスのとおり、ブランディングだけでなくダイレクトレスポンスを求める企業様などの多様なニーズに応えるため、アプリインストールを促す広告に加え3つのダイレクトレスポンス型の広告メニューを導入しました。また、海外の一部ではカルーセル広告という複数の画像と外部リンクが載せられる広告形式も一足早く展開していましたが、今後は国内でも提供していきます。
──最近スクエアフォーマットから縦長・横長の写真も投稿できるようになりましたね。
日高●主流がスクエアであるのは変わりませんが、これもコミュニティとの対話の中から生まれてきた新機能です。Instagramが多くの人たちのクリエイティビティを活かすプラットフォームであるという根幹の部分はこれからも変わりません。
