
[Webサービス:Amazon Dash Button]「家庭」を制するのは誰?
昨今、IoT(Internet of Things)というバズワードが広まっている。ウェアラブル機器から、最終的には脳までもインターネットにつながる日が近いと言われている中、次にオンライン化する巨大なプラットフォーム候補の一つは「家庭」だと思っている。現在のところ、具体的な提供便益が不明なまま、センサーをあちこちにとりつけたり、実際のUXをまったく考えずにプロジェクションマッピングされたテーブルなどをつくり付け、一所懸命に「スマートハウス」などのコンセプトモデルをつくっている住宅メーカーも見かける。けれど実際は、最後にすべてを制することになるモノの起点というのは、一見、取るに足らないようにも思える小さな小さな目の前の「不便解消」なのではないだろうか。
それを具現化したのが「Amazon Dash Button」だ。まだ日本では発売されていないが、アメリカのAmazon.comではオーダーを開始している。
かつて星新一の小説に、必要な日用品も食料も、すべてが個々の部屋につながれたパイプで送られてくるので、家の中にいながら何不自由なく暮らすことができるという未来都市に住む人々の生活が描かれていた。ECが一般に広がり、Web上で必要な買い物ができるようになった時、人々は未来が近づいたと驚いた。そして、モノとインターネットがモジュール化して、より安価に家の中に普及できるようになった今、まさに星新一の思い描いた世界がやって来ようとしている。
どんなサービスも、最初の一歩は小さなニッチから始まっている。さまざまな話題性のある商品が登場しているが、意外にも一番すんなりと家の中に入り込んで普及するのは、何の変哲もない地味な「ボタン」なんじゃないかと思う。IoTの中でも最初に家とネットをつなぐ接点を勝ち取るのは誰になるのだろうか、目が離せない。
【Web Service】Amazon Dash Button


- ナビゲーター:仲暁子
- Chief Executive Officer/Founder 1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、企業と個人をビジョンでマッチングするビジネスSNS「Wantedly」を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。https://www.wantedly.com/