成功事例の探し方とその活用方法●特集「コンテンツマーケティング」

オウンドメディアのあるべき姿

コンテンツマーケティングやオウンドメディアに関するセミナーに登壇させていただくと、他社の成功事例を知りたいというWeb担当者が非常に多い。他社の成功事例を知っておくことは無駄にはならないし、オウンドメディアを運営する際に成功事例を参考にすれば、会社(上司)への説得材料として一番手っ取り早いのも事実だ。ただ、自社が本当にオンリーワンの存在を目指し、競合他社との差別化を図りたいのであれば、他社の動向を窺うことより、自社の足元をしっかり見つめ直すことを優先すべきだろう。自社の意図と目的が曖昧なままでは、いくら他社の成功事例をマネしたところで、うまく進められるはずがない。

また、オウンドメディアの運営において「成功」「失敗」の定義は、その企業がオウンドメディアを運営するにあたって、何をKGIとするかによって変わってくるので、一概にこれが「成功事例」と定義することも難しい。肝心なのは、その企業のオウンドメディアが成功しているかを知ることではなく、成功するために適切な施策を打っているかどうかである。それはどれくらいのコストをかけたのかとか、どんなコンテンツを作成しているのかということではない。「オウンドメディアの成功例」とは、すなわち「オウンドメディアのあるべき姿」であり、それは「ユーザーの立場で考えられているか」に尽きる。

 

オウンドメディアは4タイプ自社に一番向いている成功事例の型を参考にする

 

上位表示の理由を考える

成功事例の指標で一番わかりやすいのは、検索で上位表示されているかどうかである。そのため、一番シンプルな探し方は検索上位にあるものをチェックしていけばいい。成功事例だけでなく、競合他社を調べたいときは「SimilarWeb」「MORE SITE LIKE」などの競合分析ツールや、Googleキーワードプランナーを使って調べることもあるだろう。どちらにしても大事なのは数字や検索順位だけを追うのではなく、そのオウンドメディアがなぜ上位表示されているのか、その理由を見つけることだ。

 

SimilarWeb

他社のWebサイトの訪問数や滞在時間、検索キーワードなどのアクセス情報が推測できるツール。データは推測のため誤差があるが、競合・類似サイトを探すのにも役立つ

 

たとえばの成功事例でも取り上げている三和メッキ工業は、他社と比べて明らかに違う点が一つある。他社のコンテンツのほとんどは「メッキ加工の工程」「メッキの種類」といった、メッキ自体の解説や自社サービスの説明を中心にコンテンツが構成されているが、三和メッキ工業は「どうやって錆を消すか」「どういうメッキをするのが適切か」といったユーザー視点に立った切り口になっている。

オウンドメディアの成功事例を探す際には、それが「課題解決型」「ブランド訴求型」「バイラル喚起型」「情報検索型」の四つの、どの型のコンテンツを軸にしているかを念頭において探すことをオススメしたい。自社ではどの型が最も適切なのかを考えながら参考にすると、コンテンツ制作においても方向性を明確にできる。たとえばオウンドメディアの成功事例としてよく取り上げられる「弁護士ドットコム」は、「課題解決型」「情報検索型」を軸にしつつ、一方で「バイラル喚起型」「ブランド訴求型」の「弁護士ドットコムニュース」というオウンドメディアも運営している。

 

弁護士ドットコム

法律相談ポータルサイト。公開型Q&Aや弁護士検索などのコンテンツを提供。旬のニュースを法律の観点からも解説

 

また、数多くの「バイラル喚起型」コンテンツで一躍有名になったWeb制作会社のLIGは、実はそのコンテンツのほとんどが「課題解決型」である。

 

LIG INC.

東京都台東区にある制作会社LIGのWebサイト。オウンドメディア化されており、バイラル性の高い記事が日々、発信されている

 

あるいは「会議室ドットコム」や不動産情報サイト「SUUMO」は典型的な「情報検索型」メディアと言えるだろう。

 

会議室ドットコム

全国の貸し会議室やイベント会場などの情報を掲載。施設の予約・空室確認もできる

 

このように検索で上位を確保するオウンドメディアは、この四つの型を的確に棲み分け、それぞれのメディアに適切な役割を担わせている。

オウンドメディアの成功事例を参考にするとき、その施策や結果ばかりをマネしても、けっしていい結果は出ない。重要なのは、自社がユーザーとどのようにしてコミュニケーションを図りたいのか、そのためにどんな型のコンテンツを作成していくべきかを意識しておくことである。

 

成功事例を役立てるための3つのポイント

1. 4つのタイプから、自社に向いている事例を探す

2. 上位表示されている理由を考える

3. 自社に合うコミュニケーション方法を考える

 

Text:成田幸久 ナイル(株)(旧:ヴォラーレ(株))
コンテンツディレクター/メディアプロデューサー。企業PR誌の編集、ブランド企業のオウンドメディアを中心に数多くのWebメディアの企画・制作・運用を手がける。2015年よりナイル(株)でコンテンツマーケティング支援やセミナー講師として活動中。 http://nyle.co.jp/
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