稼働率の上昇プロセスを重視するスーパーホテルの徹底的“おもてなし”●特集「リピーター&ファンを生む新法則」

大阪に本社を置くスーパーホテル。低料金ながら十分なサービスを提供し、2015年度の日本経営品質賞の受賞や、J.D.Powerホテル宿泊客満足度調査1泊9000円未満部門で第一位を受賞している

 

客室稼働率より顧客満足度を重視

訪日観光客の増加による客室不足や価格高騰などで、最近話題に上ることの多い国内の宿泊施設。そんななか、国内112店舗、海外4店舗を展開する「スーパーホテル」は、枕を選べるサービスや天然温泉の導入、充実した朝食など、「泊まるだけ」のビジネスホテルチェーンの常識を覆すサービスを打ち出し、高い顧客満足度を得ている。

「Lohas」な宿泊体験をコンセプトに掲げるスーパーホテル。 快適な睡眠や食事など、力を入れるところとコスト削減を図るところを明確に分けている

 

近年、ホテル業界では客室稼働率が重視される傾向にあるが、同ホテルで最重視しているのは顧客満足度だという。経営品質部の星山英子氏は次のように説明する。

「もちろん稼働率も大事ですが、弊社では2000年頃より稼働率重視から稼働率が上昇するまでのプロセスを重視するようになり、お客様の満足度が上がれば、稼働も安定すると考えるようになりました」

枕を選べるサービスや朝食、天然温泉はユーザーからも好評。一方で、自動チェックインシステムを導入して効率化を図るなど、コスト削減にも熱心だ

 

前述した天然温泉や充実した朝食、睡眠に対するこだわりなど、ハード面のサービスは利用者の満足度を上げるための施策の柱の一つ。だが、ハード面での差別化は他のホテルもすぐに導入できるという理由から、それ以上に力を入れているのが接客サービスの向上とその満足度だ。

その指標として重視しているのが、客室に設置したアンケートハガキと、外部のホテル予約サイトに寄せられるレビュー。レビューサイトによって多少項目は異なるが、特に同社が注目しているのは、「接客サービス」「客室の清潔感」「お風呂」「朝食(食事)」の4項目。実際、「スーパーホテル」の店舗はホテル予約サイトでどれも高い点数を獲得しており、全国平均で客室稼働率は約90%、リピーター率も70%を超えている。

 

利用者のアンケートを一括管理して、感動を提供する仕組みに活かす

スーパーホテルの高い客室稼働率とリピート率を支えているのが、同社が「日常の感動」と呼ぶ、利用者の想像を超える満足を提供するための仕組み。同社では利用者から寄せられたアンケートを本社で一括管理し、ホテルスタッフがどのような行動をとったときに利用者が「日常の感動」を得られるかをデータベース化し、各ホテルの端末から見られるようにしている。

「お客様の満足度を高めるには、『ここまでしてくれるの!』という行動をとることが大事だと考えています。私たちがアプローチ分析と呼ぶこのデータベースは、評価が高い店舗のアプローチ方法を他店舗が参考にすることで、全体の接客の質を上げるための仕組みです」

また、同ホテルでは「日常の感動」を利用者に提供するために、アナログな手法も取り入れている。わかりやすい取り組みの一例がアンケートへの返信だ。ホテル予約サイトに寄せられた口コミのすべてにホテルのスタッフが返信するのはもちろんだが、アンケートハガキの記入者にはすべて直筆のお礼状を送付しているという。

アンケートハガキやホテル予約サイトへのレビューにはすべてスタッフが返信。とくに直筆のハガキは驚かれることが多いという

 

さらに同ホテルではそうした「日常の感動」を自発的に考えられるスタッフを育成する研修も実施している。研修では毎回、あるテーマを設けて、それに対してどのような行動をとれば「日常の感動」を与えられるかをディスカッションしているという。

一方で、デジタル施策では2014年1月から「ベストレート保証」を実施。これは公式サイトからの予約の場合、最低価格を保証するというものだ。しかし目立ったデジタル施策はこれくらいで、メルマガやSNSなどは行っていない。その理由を星山氏はこう説明する。

「来ていただいたお客様に満足いただくことで、ご紹介いただいたり、口コミをしてくださることが、結果的に一番、お客様のリピートにつながると感じているからです」

デジタル施策にばかり注目が集まる今だからこそ、目の前の利用者の満足度を上げる。スーパーホテルのこうした取り組みに、見習うべき点は多そうだ。

 

(株)スーパーホテル

経営品質部 星山英子氏

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