カード決済をしない顧客に最適な支払い方法を提供する「導線」を●特集「ECサイト、次に打つべき6つの施策」

クレジットカードを持っていないユーザーに注目

たかが決済、されど決済。EC通販にとって、購買に結びつくプロセスとして決済はなくてはならないものだ。なぜなら、サイトを訪れたユーザーは、自身が望んだ決済サービスがなければ「3割が離脱してしまう」と言われているからだ。

ECサイトの多くは、ショッピングカートやプラットフォーマー経由で、連携する決済代行事業者と契約して、支払い手段を採用するケースが多いだろう。その際にECサイトが求める要素は何か? まず、手数料率は大切だ。ECサイトにとって、手数料が安ければ安いほど粗利が大きくなる。そして、もう1つは、自社の顧客層にあった決済サービスの導入が挙げられる。

インターネットにおける決済手段は、クレジットカード、ID決済、電子マネー、ネットワーク電子マネー、インターネットバンキング、Pay-easy(ペイジー)、代引き、コンビニ払い、キャリア決済など多岐にわたるが、日本のEC決済市場を見た時、クレジットカードの決済比率が圧倒的に高いと言われる。主要な決済代行事業者を見ても、9割以上がクレジットカード等、国際ブランド(Visa、MasterCard、JCB、American Express等)が搭載されたカードの取引となっている。

ただし、この数字には注意が必要だ。日本の民間消費支出全体に占めるクレジットカードのシェアはわずか15%ほどで、クレジットカードとデビットカードで5割を超える米国に遠く及ばない(01)。クレジットカードの市場は拡大しているが、それだけでは日本のコマースユーザーのシェアをくまなく獲得するのは難しいのだ。

EC決済市場他の国の実情と比較してみると、日本では例えばコンビニ支払いが他の国にはないほどにポテンシャルが高かったり、銀行振り込みや代引きといったニーズも根強く残っていることがわかる(01、02)。ECショップの決済方法には、こういったクレジットカードを使わない、「普段現金で支払いをしているユーザー」を的確に取り込むことが、売り上げ向上につながると考えられる。

01 日米の「支払い方法」の違い(クレディセゾンの資料より)

日本のEC決済市場に限って言うと、クレジットカードの決済比率が高いのだが、民間消費支出全体に占める割合は15%と、クレジットカードとデビットカードで5割を超える米国に遠く及ばない

02 国別決済事情(A~Dの4段階で評価)

各国の支払い方法のパフォーマンスを4段階で表した表。Aがもっとも高くDが低い。支払い方法に関しては、各国それぞれに事情が大きく異なることがわかるだろう

出典:“Global Payment Processing”Cyber Source、Bank of International Payments他

「普段は現金支払い」層に訴求する注目の支払い方法

では、彼らを取り込むにはどんな決済方法を採用すればいいのだろうか。有益な手段を絞りこむのは難しいが、ここでは現在注目の方法として「未回収リスク保証型の後払い」「ID決済」「キャリア決済」の3つを挙げておきたい。

まず「未回収リスク保証型の後払い」とは、後払いの一種で、支払い商品に同梱されて届く払込票を利用して、コンビニエンスストアや銀行、郵便局で代金を支払うタイプの決済方法だだ。事業者は手数料を払う代わりに、未払いとなった場合のリスクを保証してもらえる仕組みだ。クレジットカードが不要なため、若年層や主婦、さらには商品が届いてから支払いをしたいと考えるユーザーの要求(03)に応えるサービスとして、近年注目が高まっており、クロネコヤマトや佐川急便等の物流会社も提供を始めている。

03 「リスク保証型後払い」は誰のため?

「未回収リスク保証型後払い」の導入により、若年層や主婦をはじめ、クレジットカードでは取り込めていなかったユーザーを獲得し、30%の売上アップにつながったケースもあるという

2番目の「ID決済」は、アマゾンや楽天、Yahoo!、リクルート、LINEといった、大手モール・SNSのアカウントを利用した支払い方法のことで、各モール、SNSの大規模な会員を自社のサイトへ送客できる点がメリットとなる。例えばアマゾン(レポート)では、自社のサイトにユーザーの住所などの属性情報を引き継ぐことが可能な点などにもメリットがある。サービスによってはポイントが付与されることも魅力だろう。

最後に「キャリア決済」だが、若年層の多くが、スマートフォンで商品を購入する今、簡易な操作で商品を購入できるこの方法には、若い世代を取り込むポテンシャルがあると言えるだろう。

 

ECサイトでの決済手段の訴求に力を入れよ

まとめると、さまざまなタイプの決済方法が、並行して使われている中で、決済時のカゴ落ちを防ぎ、売り上げを高めるために検討すべきは「クレジットカード決済で訴求できない層をいかにカバーするのか」、そして、スマホからの利用者が増えることを前提に「ユーザーとの親和性の高い決済方法を見極める」といった点になる。

ターゲットとなるユーザー層と親和性の高い決済手段を導入後は、サイトの目につく場所で告知し、利用を促すことも効果があるだろう。まずは自社のサイトの決済方法が適切か見極めるところから始めてみてはいかがだろうか。

Text:池谷貴
2009年11月、ポータルサイト「payment navi」「PAYMENT WORLD 」、コンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営などのサービスを手掛ける「TIプランニング」を設立。外部での執筆や講演も幅広く行っている
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