
商機と成果を生み出す秘訣は徹底した顧客目線の商品設計にあり
顧客目線の価格帯に高品質を加えて勝負したい
「VITALISM」(バイタリズム)は、ヘアケア&スカルプケア製品(シャンプー、コンディショナー)として2014年から販売開始。先行販売中のディスカウント店「ドン・キホーテ」では、スカルプケア部門の売上で1位に、ヘアケア商品を解析/評価するサイト「シャンプー解析ドットコム」では5つ星という最高の評価も得ている。
ほかにもVITALISMの注目点は、販売元が開発パートナーに選んだのがWebプロダクションであることや、シャンプー類に珍しいマス広告に依存しない販売戦略にある。まずはVITALISMに商機を感じたという背景を押さえよう。
2013年以降、ヘアケア&スカルプケア市場に大ヒット商品が出現し、生活者の薄毛予防のニーズが顕在化した。一方で、主流は1本あたり4,000円程度の価格帯と「高額」の商品だった。販売元のヘアジニアス・ラボラトリーズ(以下HG)とベースメントファクトリープロダクション(以下ベースメント)は、ここに商機を見出した。
薄毛に悩む生活者のニーズと市場で展開中の商品群に、偏りや乖離がないか?という課題を模索し辿りついたのが、主流商品の半値の価格帯で一定の品質を確保した商品像だった。
ノンシリコン、石油系界面活性剤不使用、植物成分グルコシド系洗浄剤を使用した薄毛予防などヘアケアとスカルプケアを目的にした、シャンプー&コンディショナー
突き詰めた商品設計を支えるWeb制作で培ったユーザー視点
HGは、中身の開発に全力を注ぐ一方で、商品プロデュースのパートナーを探していた。というのも、商品開発をしたら必ず各店舗の店頭に置けるわけではなく、置くに足る商品だと店舗側に認識してもらう必要がある(販路開拓)からだ。そこで、HG・津田知明氏が白羽の矢を立てたのが、ベースメント。10年以上ナショナルクライアントのコーポレートサイトやブランドサイトの開発/制作を手がけるWeb業界を牽引するプロダクションだ。十分な実績を持つが、なぜWeb制作会社を選んだのか?
「国内の数多くの大手企業と仕事をしてきたベースメントなら、クライアントやお客さま目線の発想で商品コンセプトからご協力いただけると感じたからです。実際、ベースメントは商品を購入するお客さまの立場で考えるスタンスが徹底されていました。ゼロからの商品開発やブランド構築に欠かせないパートナーです」(津田氏)
「このプロジェクトは、もともと存在する企業/商品ブランドの(再)構築とはまったく異なり、ゼロから商品づくり、ブランドづくりに携わることを意味します。そこで、私たちが培った経験や知見、ユーザーへのおもてなしに対する姿勢を総動員しながら、市場ニーズにかなう商品開発に挑みました」(ベースメント・北村健氏)
ベースメントの覚悟は、収益面への参画にも現れる。いわゆるブランドへの企画協力とは一線を画し、商品の売れ行きにベースメントの責任が直接問われる形をとったからだ。この本気の姿勢も加わって、VITALISMの成功が引き寄せられる。


ネック部分の有無や高さを変えながら、最適な形状について検証を繰り返したという。「中長期的な販売の継続を念頭に置きながら、商品棚にありつづけても飽きがこない形状を粘り強く模索しました」(ベースメント・吉本氏)「微細な違いをないがしろにしたくありません。形状やデザインへの粘りは、ユーザー目線を強く意識してきた私たちのこれまでの活動とも呼応しています」(ベースメント・北村氏)
マス広告に頼らない販売戦略 店頭とWebで購入導線を確保
VITALISMは、髪の専門家の協力に支えられている。東京・表参道スキンクリニックの松木貴裕院長と、同勤務医の友利新氏の協力(開発の監修とプロデュース)が品質向上と商品力の裏づけを担っている。
「表参道スキンクリニックでは、発毛治療に特化した処方プログラムを提供していることもあり、医師たちは患者から『いいシャンプーがないか』と聞かれることもあるそうです。友利先生は、つねづね“自分が勧めたくなるシャンプーがない”とおっしゃっていて、先生の立場から自信を持って“勧めたくなる商品”がまさにVITALISMとなったわけです」(津田氏)
また、英断の一つが販売戦略。いっさいマス広告に頼らず、店頭やWebでのプロモーションに特化した点である。大手ブランドメーカーなどの商材は、マス広告に出稿する分、価格にも転嫁し、高価格の要因にもなっている。
こうした取り組みが評価されて、全国に展開するドン・キホーテでの先行販売が確定。商品力の確かさと本体価格への還元(=お客さま思い)が販売店の心を動かしたのだ。
Web戦略もまた、徹底したお客さま目線。どのタイミングで人はシャンプーを買うのか? 問われるのは、身近な生活シーンへの想像とそれを踏まえた施策の実行と実践だ。
「すでに生活者に根づいた楽天市場やAmazonで難なく買える設計にしています。多くのみなさんは“あ、そろそろなくなりそう”、そこで初めて買うことが多いはずですう。ネットでわざわざ見慣れぬシャンプーサイトに行くでしょうか? いつものEC サイトなら、個人情報の入力も気にせず注文できます」(北村氏)

しっかりとした医師の協力あっての商品だとわかるレイアウトに。「販促什器やポスターなどの販促物には、必ずQRコードを入れました。モバイルファースト対策などもベースメントの参画が活かせれば幸いです」(ベースメント・石谷氏)

商品のイメージ写真。商品は男女兼用ではなく男性用と女性用それぞれで用意
「薄毛対策とわかるシャンプーを恋人に見られたらどうでしょうか? ちょっとした羞恥心を抱かせないように、いかにもスカルプシャンプーだと思われない商品デザインを目指しました」(北村氏)

VITALISMのサイト内でも、自前のカート機能は置かず、各種ECサイトに誘導している
顧客支持数の高さを示すドン・キホーテ部門別売上1位
メーカー希望小売価格が、350mlで1,980円(税抜)。2014年に販売開始して以来、全国約300店舗以上あるドン・キホーテの店頭売り上げで2014年度スカルプケアシャンプー総合部門で1位。2年間でボトルタイプが50万本、全タイプだと合計70万個という売り上げを記録した。徹底した商品力と、お客さまへの還元意識の賜物が確かな成果を生んだ。
「公式Facebookページは、VITALISMありきとせず、クリニックの医師たちが綴る『美容と健康にまつわるお話』をコンセプトに運営しています。投稿記事をオーディエンスのニーズとマッチさせながら、各記事の間にVITALISMのPRを挟むことで、PR効果や宣伝効果を得るのが狙いです」(ベースメント・石谷亮氏)
ベースメントにとっては、このプロジェクトの成果はWebプロダクションのあり方を根本的に問う機会にもなったという。
「クライアントは、ブランドの根本をつくる存在です。世の中に通用するブランドをゼロからつくったことのないWebプロダクションが、ブランドコンサルティングをしていいのか。長年抱えてきたジレンマは、VITALISMの商品開発やブランド構築に携わることで、日ごろからクライアントが取り組んでいる艱難辛苦を体感できる機会につながりました」(北村氏)
2015年からは、同ブランドの白髪染め商品「kulo」も開発。売上も順調に伸ばしている。
「品質、形状、デザイン、販売戦略といった全工程にはどれも理由があり、成果物へと至っています。説明できないことは一切していない。裏づけや根拠を踏まえた進行が次につながる成果を引き出せました」(北村氏)

医師が綴る美容や健康に関する情報を中心にエントリーが並ぶなかで、VITALISM情報も挿入。誰でも「いいね!」したくなる装いに。ファン数は2万4,000を超える

VITALISMブランドの第二弾となる白髪染め商品「kulo」も展開中。「4月下旬には、同じ体制で別ブランドの脱毛ワックスをリリース予定です。徹底して商品やお客様に誠実でありつづけることが、新たなビジネスチャンスにつながると実感しています」(HG・津田氏)

「お客さまとはどういう人か」を各状況で洗い出しながら、商品開発チーム内で徹底的に検証。特に着目した要素を実現し、製品化、販売へと至る