
町田美容院の知恵袋|激戦区の新規参入店がブレイク! 個人運営の美容院サイト
1年で累積240名の新規顧客開店3カ月で大反響を呼ぶ
「町田美容院の知恵袋」は、東京都町田市に構える美容院が運営するサイト。髪のお悩み相談に答える膨大な記事がフックとなって、美容院は大盛況。2015年7月の開店以来、月間PV10万、新規の来店顧客が月平均で30名で、累積では240名を超える(2016年8月現在)。店長の宇野和弘氏が1人で運営するため、新規対応のすべてに応えられず、泣く泣くお断りしたという数字は入らずで、だ。それほど、オウンドメディアを基点に大きな反響と直接的な効果を呼び込んだわけである。
宇野氏は、14年のスタイリスト歴を持ち、2015年に独立。母方に縁があり、祖母が住む町田市を新規開店の地に選んだ。東京・表参道や青山ほどではないにしても、町田市は都内でも激戦エリアの1つ。最寄りのJR/小田急町田駅から美容院「monohair 町田」までは徒歩7~10分。駅からの道中だけで約10店舗の美容院がひしめく。monohairは、駅からすぐという場所ではなく、しかも完全な新規参入店である。地元タウン誌や大手ポータルサイトへの出稿という王道の広告手法が確立している今日、なぜ自前のサイト運営で勝負を賭けたのか?

東京都町田市にある美容院「monohair」の店長、宇野和弘氏が運営するサイトで、2015年2月開設。髪やヘアケアに関するQ&Aコンテンツ700本以上の掲載が話題に。LINE@やFacebookページで24時間問い合わせにも対応

カテゴリー別に並ぶメニューリスト。総数700を超える圧巻のボリュームがサイトの目玉だ

monohairは、小田急町田駅から徒歩7分、JR町田駅から徒歩10分の場所に構える。カットが6,000円~(税抜)
主な流入経路は自然検索! それを支える総数700本の記事
サイトを訪れると、飛び込んでくるキャッチコピーが「表参道サロンのクオリティを町田でも」。運営コンセプトは、「お客様の髪に関するお悩みに24時間365日、何でも答えること※1」。実際、FacebookページやLINEを活用して、1日も休みなく問い合わせを受け付けている。特にコンテンツで目を引くのが、髪をテーマにした膨大なQ&Aコンテンツ。現在、その数は700以上だ。
開設当時から現状に至るまで、サイトへの流入の大きな要因は、自然検索。髪やヘアケアに関するキーワード経由で、該当する記事に流入し、現在は1日平均で3,500PVを記録する。
「表参道や渋谷などのサロンで14年、キャリアを培ってきました。髪にまつわる技術や知識への自負はありますが、“だから開業して大丈夫”という甘い世界ではありません。ましてや、サロンで働いてきた地域を離れての開店。完全な後発でも勝ち抜くために、開店前に1,000を目安にコンテンツを用意すれば、反響があると考えたわけです」(宇野和弘氏・以下同)
それでも、当初は大手ポータルサイトなどの広告出稿を検討したそうだが、上位表示を望むほど高額となり、予算があわなかったという。であれば、と開店前から自前でサイトを運営することに。あらかじめPVやUUを育てておけば、開店直後もお客様の来店が見込めると、集客目的で開店5カ月前からサイトを公開したそうだ。
「Webに詳しい知人に相談しながら運営し、記事は、質問に対してひたすら音声で録音し、外部ライターが書き起こす形で量産しました」
開設から3カ月で約500のQ&Aコンテンツを公開。ただし、この時点では1日平均100UU※2、200PVと、まだ夜明け前の状況だった。
※1 店名を出さず、お店のある地名を冠したサイト名にしたのも勝因の1つ。「店名が決まる前に公開したというのもありますが(笑)、開店する場所が伝わるWebサイトにしたかったです」(宇野氏)
※2 ユニークユーザー
無休で対応。LINE@を駆使した1対1のコミュニケーション
開店前に追い風が吹くきっかけは、宇野氏がLINE@サービスの導入に踏み切ったことだ。それは、サイト公開後の過程で“集客対策”という考えを改めることとも関連した決断だった。
「私自身、やみくもにPVやUUを求める立場でないことに気づきました。ユーザー1人ひとりと接して感じた手応えが大きかったからです。仮にサイトへの流入が大成功して、大勢のお客様が殺到しても、1人の店舗で対応できる人数は最大でも1日6~7名です。それよりも、率直に髪について関心を示すユーザーが、さらにサイトに興味を示してくれることに力をかけるべきではないか。そうしたユーザーとの関係性が深くなれば、将来的な予約にも結びつく方が出てくるでしょうし、お店への信頼をベースにした予約も増えてくると考えました」

髪に関する悩みなら、例えば「ちょっと髪にクセがあるので、セットがうまくできない。アドバイスしてほしい」など、お店に関係がない問い合わせにも答えるという体制だ

日々寄せられるLINE@経由の質問には、原則すべてに回答している。こうした真摯な対応が信頼となり、来店動機にもつながる
細かな個人情報を入力せず、簡単な登録作業で1対1のコミュニケーションが可能となるLINE@は、うってつけのサービスだったのだ。サイトコンテンツ用の質問を考えていくのも限界がある。LINE@を通じた問い合わせを開始すれば、そこで得た質問や悩みもQ&Aコンテンツづくりに応用できるという考えもあった。
「LINE@導入時点で、事前に500近いQ&Aコンテンツを公開していたのも活きました。通りすがりのユーザーが、何でも質問していい相手だと思いやすかったからです。そこにLINE@という、問い合わせのハードルが低いサービスが重なって、徐々に問い合わせが増えはじめました※3」
さらに、企画へのチャレンジが功を奏する。宇野氏がJリーグのサンフレッチェ広島ファンで、知り合いの読者モデルを起用してユニフォーム姿の写真をTwitterに投稿するという企画を実行。これもヒットして認知を押し上げ、開店後1カ月目で、PVが2,000を超えるほどに育っていく。
※3 LINE@経由で得られたQ&Aも補強し、その後200以上が追加され、現在の700を超えるコンテンツが生まれた
コンテンツづくりの秘訣は「やさしさ」
このサイトの存在を決定的なものにしたのが、開業3カ月の成果(月商100万円)についてまとめたブログエントリーだ。はてなブックマークは800、Facebookのいいね!は3,000を超える反響があり、Q&AやLINE@などでつくりあげてきたユーザーへの親身な対応は、常に新規予約が絶えない人気美容院へと押し上げた。

店長のJリーグ・サンフレッチェ広島好きから生まれた企画ページが注目を集め、1日200前後のPVが10倍増に http://kazuhirouno.jp/archives/1068

決定的だったのが、独立3カ月で月商100万円を達成できた過程をまとめたエントリー。この記事だけで9万超アクセスを記録 http://kazuhirouno.jp/archives/5385
個人運営の成功の裏には、開店前から開店後を見据えた準備と、膨大な数のコンテンツ制作、年中欠かさずLINE@をはじめとした各SNSの対応と実行があったわけである。では、読者は何をどう参考にしたらいいだろうか?
ビジネスを始めようと考えるみなさんは、おそらく何かしら培い、深く精通してきたことがあると思います。まずは無償で、体得してきた知恵や知識を公開することは一案になるでしょう。私の場合は、それが髪やヘアケアに関してのことでした。企画やLINE@にも支えられていますが、根っこはそこで、無償だから生まれた縁を大切にできればと考えています」
膨大なコンテンツを見ていくと、目につくのがお客様が映った写真の数々だ。例えば、施術前と後を比べる多数の写真。自分たちとは遠いモデルではなく、身近な存在である来店客の写真だからこそ、リアリティを持って参考にできる。
「おかげさまで、日々のサロンワーク、目の前のお客様に全力で立ち向かえることができています。正直、私も最初は格好よく見えるサイトをつくりたいと思っていました(笑)。でも、ユーザーが求めていることはそうではない。素朴な髪の悩みが解決できるほうが、よほど自分が必要とされるのではないか? 数々の自問自答を繰り返しながら、相手を思いやり、やさしさや気遣いが伝わるスタンスをサイトという形で発信できたことが、実を結んだのだと思います※4」
※4 「新規のお客様をお断りせざるをえないという状況を何とか改善したい。現在、スタッフを募集中で、さらに日々のサロンワークを充実させたいと考えています」(宇野氏)

「白髪染め」の問い合わせが多いことから、取り上げる質問の数を増やして対応(現在、86件を用意)。画面はその一例

「ブリーチ後の髪にパーマはNG」といった、美容師なら絶対にオススメしないがお客様からやってくる素朴な質問に回答 http://kazuhirouno.jp/archives/1921
