
動画プラットフォームとしてのFacebookを理解する
Point 01 Facebook動画機能の基本
動画コンテンツの活用に力を入れているFacebookだが、SNSマーケティングの観点からはどのような点に注目しておくとよいのだろうか。
動画の投稿が表示されやすい
友人・知人たちとのリアルなネットワークをベースに広がりを見せるFacebook。友人やフォローした有名人の近況コメントや写真、気になったニュースのリンクなどがフィードに流れてくるが、これは時系列で新着順に表示されるわけではなく、その個人ごとに最適化された情報が上位に表示される仕様だ。
この表示順序を決定するアルゴリズムをFacebookでは「エッジランク」と呼んでいるが、従来の親密度などの重み付けに加え、コンテンツの種類によっても表示される順番が変わってくるようにアルゴリズムが変更された。
最近特にFacebookが力を入れているのが動画コンテンツで、動画投稿やライブ動画配信などが優先して表示されるようになっている。企業のSNS運用担当者は、この動きをきちんと押さえておく必要があるだろう。
また、通常の動画だけでなく、既存の写真をつなげて動画にする「スライドショー」や、あらかじめ用意されたテンプレートに素材を配置するだけでFacebookページ用にビジネス紹介動画が作成できる「ビジネスストーリーメイカー」など、動画制作に不慣れな場合でも簡単に投稿できる支援ツールなどが提供されていることは知っておきたい。
さらに動画の投稿や再生だけでなく、継続的な動画コンテンツの活用を促進する機能も備わっている。それが「注目の動画」と「プレイリスト」ページだ。前者はFacebookページに訪れたユーザーに対しておすすめの動画を1本紹介する機能で、後者は以前に投稿した動画をグループ分けして並び替えることで、過去の動画資産を有効に活用するもの。
例えば、製品紹介の動画やCMなどをテーマごとにまとめたプレイリストにしておけば、訪問者にとっては便利なコンテンツとして提供できるというわけだ。
セルフ型の動画広告は決して難しくない

動画広告はデスクトップのニュースフィードやウインドウ右側の広告枠など配信場所を選択できる。動画は無音で自動再生され、クリックすると音声が流れるほか、フルスクリーン再生も可能だ

スマートフォンのニュースフィードにも同様に配信できる。こちらも無音の自動再生で、タップするとフルスクリーン再生される
では、Facebookへの動画コンテンツ投稿を自社の課題に対してどのように役立てていくべきであろうか。もちろん、企業が抱える課題はさまざまだ。自社のFacebookページを作成したばかりでファンの獲得を目的にするのか、ブランド認知もしくは商品やサービスの販売拡大を目的にするのか、投稿を宣伝してニュースフィード内での話題を集めたいのか、それぞれの目的によって取るべきキャンペーンの施策は異なる。
だが、いずれの場合も「Facebook広告」によって多くのユーザーの目に留まるようになるので、通常の投稿だけよりも目的達成までの時間を大幅に短縮できる。
Facebook広告には動画広告のメニューが用意されており、「広告マネージャ」または「パワーエディタ」から新規の広告キャンペーンを作成したら「動画の再生数を増やす」「投稿を宣伝」「Facebookページを宣伝」「ウェブサイトへのアクセス/コンバージョンを増やす」「アプリのインストール数/エンゲージメントを増やす」などの目的から選択する。

広告マネージャからキャンペーンの目的を設定し、広告セットでターゲットや予算、配置場所などを設定したら動画を広告として投稿できる。動画の字幕を付けることも可能だ
そして、ターゲット設定のきめ細やかさもFacebookならではの利点。地域や年齢・性別といった属性、興味関心やつながりといった項目を組み合わせることで、届けたい相手に配信できる。ただし、あまり細かく設定しすぎるとリーチの規模が少なくなり過ぎてしまったり、基本属性を登録していないユーザーを取りこぼしてしまったりするので、最初は年齢、性別程度にして徐々に最適化を図っていく必要がある。ただし、若年層のFacebook利用率は微減の傾向にあるので、商材によっては後述のLINE、Instagram、MixChannelといったほかのSNSも比較検討したい。
課金のスタイルもインプレッションに対する課金(CPM)や動画の視聴数に対する課金(CPV)から選べるが、セルフ運用型の広告では低予算から始められるので、浮いた分の費用を動画のクリエイティブ制作に振り分けられるメリットがあるのは見逃せない。
Point 02 動画仕様と新たな広告フォーマット
次に、実際に投稿できる動画の仕様についてチェックしていこう。また、通常の動画広告以外の新たなフォーマットについても理解を深めよう。
無音動画は字幕の追加で興味を持たれるように
実際に動画クリエイティブを投稿する際には、いくつか注意しなければならないポイントがある。まず、通常の投稿でも動画広告でもニュースフィード上では「無音・自動再生」されるという点だ。動画のサムネイルをクリックまたはタップすれば音声付きで再生されるものの、基本的には音声がなくても興味を持ってもらえる動画が望ましいのは言うまでもない。
音声の代わりに動画の内容自体にテキストを追加する方法もあるが、これはアイデア出しや制作の観点からするとハードルがやや高めと言える。そのため、比較的よく用いられるのが投稿の説明文で動画の内容をフォローしたり、動画の前面に「字幕」を追加するといった対策だ。
FacebookはSNSの中で唯一「字幕」を付けられるという特徴がある。SRT形式の字幕テキストファイルを投稿時にアップロードすれば、映像のタイミングにあわせて字幕が表示されるので試してもらいたい。
また、動画の縦横比率は16:9の横ワイドから9:16の縦型まで自由に選択可能で、正方形のスクエア動画も利用可能だ。動画の尺(再生時間)は通常の投稿でも動画広告でも最大120分という長さが大きな特徴で、さまざまなタイプの動画コンテンツを扱える。動画のサムネイル画像は自動で設定されるが、任意の画像を用意してアップロードすることもできる。
以前は静止画による広告と同様に、面積の20%以上をテキスト要素が占めると自動的に掲載を拒否するエラーが出たが、現在は投稿可能になった。ただし、アルゴリズム的にはテキストが少ない方が有利となっている。
動画の解析結果を施策の改善につなげる
投稿・配信された動画に対する視聴行動については、広告マネージャはもちろんFacebookページのインサイトなどからも詳細なデータを把握できる。ここで10秒以上の再生数や平均再生時間などさまざまな項目を細かくチェックすることで、投稿された動画への反応を確認できる。

さまざまなデータが取得できるのがFacebookの強み。動画の場合はオーガニックと広告において再生時間、ユニークビューワー、動画再生数、10秒以上の再生数、平均完了率などが確認できる

完了率の詳細項目を確認すると、動画の開始から何秒のあたりまで見られたかや、自動再生とクリックによる再生の比率なども確認でき、クリエイティブの改善にも役立てられる
そして、その結果からキャンペーン施策の最適化やクリエイティブの内容そのものの改善などにつなげやすい。また、ライブ配信動画なども、ユーザ属性に加えて動画のどのタイミングでリアクションやコメント、シェアといったエンゲージメントが発生したのかなどの計測ができる。
Facebookのアナリティクス機能の豊富さはSNS随一なので、マーケティング担当者はこれらの動画コンテンツの効果測定機能を最大限有効に活用していきたい。
難易度の高かった動画広告もより簡単に
さらに、通常の動画投稿や動画広告に慣れてきたら縦型動画や360度動画広告といったユニークな動画フォーマット、さらに厳密には動画ではないが、動きのあるフォーマットとして「スライドショー広告」や複数のコンテンツを横に並べる「カルーセル広告」、全画面表示できる「キャンバス広告」もあるので挑戦してみよう。
これらのフォーマットを動画広告で利用するには、これまで実際の仕上がりがイメージしにくい部分もあったが、2016年11月末より新たに各フォーマットのモックアップ(見本)を作成して、スマートフォンなど実際のデバイスに試験的に配信して確認できる「Creative Hub」の機能が利用可能となっている。
これらの動画管理機能を駆使することで、運用型のFacebook広告での動画活用がさらに快適になるはずだ。

広告のモックアップを作成してモバイルデバイスに送信し、実際と同じような表示を確認できるCreative Hubが2016年11月30日より公開された。動画の場合もさまざまなフォーマットでプレビューできる https://www.facebook.com/ads/creativehub/

従来の動画広告やスライドショー広告に加え、「360度動画広告」などFacebookでの動画活用はさらに進化している

- 教えてくれたのは… 瀧良太
- (株)LOCUS 代表取締役。社長業に加え、クライアントの動画マーケティング支援、「movieTIMES」編集長、セミナー講師など、新たな動画ビジネスの創造に最前線で携わっている。

- 教えてくれたのは… 宮下周子
- (株)LOCUS 経営企画室「movieTIMES」編集部。movieTIMESとしてマーケター視点に立った動画マーケティング情報の発信に取り組む。海外の動画マーケティング動向にも精通。