【越境EC成功事例】電子決済、すぐできますよ[SAMURAI STORE]

国内外を相手に甲冑の販売 リアル店舗16年、越境EC歴15年

SAMURAI STORE(以下SAMURAI)は甲冑をはじめ刀剣類(居合刀・装飾刀)を販売し続けて16年、2002年からは越境ECも始めて、世界中のコレクターの支持を集めてきた。ショッピングサイトを覗くと、「真田赤備 羅紗(らさ)陣羽織付」48万円など高額。30~300万円がSAMURAIで売れるボリュームゾーンだそうだ。

SAMURAIを立ち上げた桐田敏彦氏は、もともとeBayに入社したが、2001年にeBay Japanの撤退を機に独立。個人事業主として、日本の工芸品を自ら仕入れて販売したり、コレクターや骨董屋の依頼でeBayでの出品代行も行う中で、甲冑を専門的に扱うようになったそうだ。

「以前からeBayは、一ユーザーとして利用していました。インターネットオークションサイトにずっと興味があって、好きだったこともあり、結果的には黎明期から越境ECに携わるようになっていました」

70カ国以上の販売実績を持つまでに成長したSAMURAIは、2017年7月、ルイーズスクエアと事業合併。現在はサムライストア事業部として再スタートし、東京・北青山にあるAO Aoyamaに店舗も構えている※。取材当日、店舗にうかがうと、偶然東南アジア系の家族の一団が店舗にやってきて、商品を覗いていた。

※ 〒107-0061 東京都港区北青山3-11-7 AOビル 2F 03-6452-6311

 

電子決済サービス開設よりも重視すべき開設後の対応

2002年の越境EC開始以来、PayPalを導入しているという。SAMURAIのオンライン決済サービスはPayPalのみでの開設だが、電子決済サービスについて桐田氏に話を向けると、「開設準備に躊躇するのは、もったいない」と強調した。

「独立した当初は、eBayと独自サイトの両方を運用していました。eBayがPayPalを利用していますし、当時は黎明期で選択肢がなく選びましたが、PayPalは自分で開設しました。確かに英語のやりとりは発生しましたが、簡単なやりとりで済み、すぐ開設できた記憶しかありません。もし越境ECに興味があるなら、当時と今の状況は違いますが、PayPalの場合は割とあっさり開設できると思います」

開設に際して、決済サービス代行会社を通すべきか、通さずやるかは判断が分かれるところだ。もし、中国系のアリペイやWeChatPayのように中国語の問題、中国事情が二転三転するような状況があれば、初めての開設には決済サービス代行会社への相談が無難そうだ。

一方PayPalは、新規登録の案内が本サイトで開示されているが、本人(法人)だとわかる基本情報の入力などをWebで行えば、頭を悩ませるフローはない。試しに開設だけしてみて、次のステップに備えておく手はある。

「開設ではほとんど悩みません。その分を、開設後のマーケティングプランやECショップの具体的な施策を考える時間に費やしたほうがいい。開設しただけでは何も始まらないからです」

PayPalの決済手数料の料金体系

出典:https://www.paypal.com/jp/webapps/mpp/merchant/paypal-seller-fees

少額決済用のレートも用意

少額決済用も用意されているので、テストマーケティングがしやすい 出典:https://www.paypal.com/jp/webapps/mpp/merchant/paypal-seller-fees

越境EC歴15年を支えるショッピングサイト

http://samurai-store.jp/yoroi/

PayPalの新規登録

無料で新規登録ができる「スタートガイド」が用意されている https://www.paypal.com/jp/webapps/mpp/merchant/how-to-signup-business

 

開設はできていて当然。さらにおもてなしができるかどうか

SAMURAIの強みは品質。映画や博物館の甲冑を制作する鹿児島県の老舗甲冑工房と提携、さまざまなカスタムオーダーにも対応する。コレクターや骨董屋が信頼できる甲冑を扱うために、何度も鹿児島県の工房にお願いを続け関係性が確立。甲冑専門ECサイトの礎を築く。

もともと越境ECで始めたので、売り上げは海外が全体の約7割。英語版と日本語版のECショップサイトを用意しているが、当然海外と国内ユーザーでは嗜好に違いが出るので、売れ方も考慮しながら甲冑のラインアップも変えている。

国内には見本が確かめられる店舗はあるが、海外ユーザーが気軽に足を運ぶことはできない。接点はWebが基本。つまり、問い合わせ対応はSAMURAIの生命線だ。

「問い合わせでは3点、肝に銘じています。1点目は一つひとつの問い合わせにきちんと対応すること。2点目はeasy English(簡単な英語)を心がけること。ヨーロッパやロシア系のユーザーは英語を翻訳サイトで変換してやりとりする人がいて、簡単な英語ほどお客様も身構えません。3点目は情報開示。トップページや問い合わせフォームには店舗の住所や電話番号を必ず載せています。海外からよく電話はかかります。“つながる相手”という安心感を持ってほしいので」

運営を続けて実感することは、ユーザー一人ひとりへの地道なおもてなしの姿勢だという。

「“綺麗なサイトを作った”“素晴らしいシステムを導入した”ではユーザーは振り向きません。自前のサイトはHTMLの手打ち、WordPress導入など試してきましたが、簡単に実装可能なのもPayPalの魅力。仕組みづくりに時間をかけない分、ユーザーに神経を遣いたいと思っています」

 

Paypal以外は中華圏次第? 多通貨決済もできる利点

SAMURAIでは、決済方法のほとんどをPayPalが占めている。他の代行サービスについてはどう考えているのだろうか?

「今まで約70カ国の販売実績がありますが、PayPalをご案内して入金できないと言われたことは記憶の限りありません。当初はアメリカやヨーロッパの顧客が多く、最近だと東南アジア諸国のユーザーによる購入が増えていますが、PayPalでスムーズに入金されています」

越境ECといえば中国の存在感は大きいが、SAMURAIではあまり商品が動かないそうだ。

「日本の歴史を扱う商材になるので、中国や韓国ではあまり売れていません。とはいえ、富裕層のご購入はたまにありますし、その時はPayPalです。そうしたご購入をする方々だとPayPalは開設できているのだと思います。中華圏の売り上げが高くなれば検討する可能性はあります」

PayPalは、他の機能も充実している。請求書ツール「invoice」を使えば、メールでのオーダー見積もりとともにinvoiceを送ればいい。また、「多通貨決済」ができるのもアドバンテージ。買い手側の通貨で取引が可能なので、円ではピンときづらい海外ユーザーも安心しやすく、日本にいながら外貨で取引できる。両機能ともSAMURAIでは重宝しているという。

最後に、SAMURAIが描く今後の展望について聞いた。

「中小企業庁の導入支援補助金の対象になっているMagento(マジェント)というECプラットホームがあります。そこで越境ECサイトの新規立ち上げを予定しています。今後もPayPalとの連携を通じて、“目指せ、最強の越境EC”(笑)。今後も自信作の甲冑を世界に送り出したいです」

英語版と日本語版で商品の配置を変更

上は英語版、下は日本語版。商品ラインアップは必ず同じにしない。 英語版では、海外で受けるデザインを推す配置にしている

高額商材だからこその対応とは?

問い合わせフォームにも、ショッピングサイトのトップページにも電話番号を記載。結果、Web上でのやりとりがもっと活発になるために、エンドユーザーが安心できる自社側の情報はなるべく開示する

自社サイトにPayPal

SAMURAI STOREの決済ページへ進むと、日本語版(上)、英語版(下)ともにPayPalが用意されている

 
桐田敏彦_Toshihiko Kirita
(株)ルイーズスクエア 取締役 サムライストア事業部
  • URLをコピーしました!
目次