
プロトタイピングとユーザーテストによるSBI証券のサイト改善
サイト改善の動機と手法
SBI証券では、株やFXなどさまざまな金融商品を扱っていますが、それぞれの担当組織が独自にサイトデザインを改善していった結果、ユーザビリティが下がり、UIが不統一になっているという課題を持っていました。もちろん経営層を巻き込んで抜本的な改善を行えるのが理想ではありますが、大きな組織でいきなり推進するのは難しいものです。そんな場合、まずは取り組める現場で成果を上げていくというのが、経営層にも理解を得ていくための典型的な成功パターンです。SBI証券の例もそうでした。
具体的には、ペルソナの設定やカスタマージャーニーマップによる課題特定などを行ったあと、プロトタイピングとユーザーテストを繰り返してスマホサイトのトップページとランディングページ、問い合せページなどの改善を行いました。ユーザーテストを受けてもらう人は、「まずはできることから」ということで、社内の他部署の方々にご協力いただきました。
ユーザー視点を獲得するまでのプロセス
たとえば元々のランディングページでは、SBI証券が業界内での総合力がNo.1であり、それを裏付ける3つの理由をファーストビューで紹介していました。しかしプロトタイプでユーザーテストをした結果、「証券会社の選び方」にニーズがあることがわかりました。さらにプロトタイピングとユーザーテストを繰り返し、証券会社を選ぶ以前に投資について学びたいというニーズが浮かび上がってきました。そして「SBI証券で投資を学びながら始めよう」とコピーを変え、さらに「投資について知る」というコンテンツを用意しました。
つまりユーザーは「投資をはじめたいけれど、詳しいことがわからない」という気持ちでサイトを訪れていたということがわかったのです。
このサイト改善の結果、スマホサイトのトップページでは口座開設フォーム到達率が7.6%から9.6%にアップ。スマホのランディングページでは、口座開設フォーム到達率が10%も改善されました。
また、SBI証券の社内にこうした改善のフローが根付くことにもなり、リリース前には必ずユーザーテストが行われるようになりました。このときのご担当者の方を中心に、社内でペルソナやカスタマージャーニーマップ、KPIツリーといったフレームワークを植えつけていこうという働きかけも行われています。同社では現在もユーザー視点を取り入れながら、継続的にサイト改善が続いています。