地域別攻略(2)東南アジア編 急成長するタイ・ベトナム・インドネシアの現在に迫る!

経済成長著しい注目の3カ国から東南アジア市場を読み解く

事業の海外展開を考える際に、東南アジアを第一選択肢として考える企業も少なくありません。地理的にも近く急速な経済成長を遂げているASEAN地域は、将来を考えたときに有望と考えられるからです。また、デジタルマーケティングの面においても、FacebookやLINEといった日本でもお馴染みのプラットフォームを活用できる点は大きな魅力とも言えるでしょう。

しかし、東南アジアといっても多くの国が存在し、経済・文化の状況はさまざまです。

そこで、シンガポールをはじめ、タイ、ベトナム、カンボジア、インドネシア、マレーシア、台湾、フィリピンなど13の国と地域を拠点として事業展開し、アジアマーケットに詳しいアドアジアホールディングスに、もっとも将来性が期待できる3カ国を挙げていただきました。

「シンガポールや香港のような先進国水準のマーケットは別として、成長率の観点からはタイ、ベトナム、インドネシアの3カ国が有望です」(小堤音彦さん)

 

EC市場規模が拡大するタイ マイクロインフルエンサーのプロモーションも効果大

歴史的・文化的にも日本との関係が深く、安定した経済状況から日系企業の進出も多いタイでは、近年オンライン広告市場規模が大幅に拡大しています。2017年は約426億円と昨年対比で31%という急成長を遂げ、2018年には約492億円に達すると見られています。規模としては約1.5兆円の日本の30分の1以下ですが、伸び率については注目すべきレベルと言えます。

日系ブランドの浸透度は高く、特に人気があるのが化粧品や健康食品などの分野です。スマホなどモバイル環境の普及度は日本並みで、市場を牽引しているのはFacebook&Instagram、YouTubeといったSNSメディアで、中でも動画コンテンツがクリエイティブのメインストリームとなっているのが特徴的です。

「ほかの東南アジア諸国と同様に消費者の年齢が若いので、動画コンテンツを視聴する傾向は高めです。特にInstagramのストーリーズなど15秒以下の短い動画や縦型動画が流行していて、キャッチーなワードやインフルエンサーのコンテンツはシェアされやすいです」(山田果歩さん)

インフルエンサーも10万人以上のフォロワーを持つトップランクだけでなく、数千人規模のマイクロインフルエンサーを起用することで、身近な商品を比較的低価格からプロモーションを実施できるのが魅力と言えます。

また、EC市場も2.5兆バーツ(約8.8兆円)と拡大傾向にあります。主なプラットフォームは「Lazada」「Shoppee」「11street」で、日本でお馴染みのLINE Payや中国資本のAliPayなどによるモバイル決済が可能なことから、今後日本からの進出も増加していくと考えられています。ただし、トレンドの変化は速く、LINEは他プラットフォームと比較して中高年の比率が高い点も注目です。

「肌感覚でもEC案件のご相談が増えています。中国の影響もあって、11月11日や12月12日のゾロ目には大きなセールがあります。また、インバウンド向けにタイでプロモーションを実施するなら4月あるいは年明けからがおすすめです」(山田さん)

 

日本製品との親和性が高いベトナム市場は参入するチャンス

1986年のドイモイ(刷新)政策の導入以降、ベトナムは段階的な規制緩和とASEAN諸国との協調路線による経済交流拡大、日本のODA(政府開発援助)などの効果もあって、2000年代以降は実質経済成長率が約6~7%前後という好況を呈しています。

GDPなど国民の所得は周辺国のタイなどを追いかける形となっていますが、これから東南アジア展開を考えている日本企業にとっては注目度の高い市場と言えるでしょう。

近年はIT導入にも積極的で、インターネット普及率は68%、モバイル普及率は75%に上っています(アドアジアホールディングス調べ)。それに伴いオンライン広告費も2017年度の実績で約130.5億円、2018年は約161.25億円に達すると予想されています。

そのベトナムでもっとも活用されているSNSプラットフォームはFacebookとYouTubeで、ともに6割近い利用率を誇っています。その半数以上のユーザーが毎日オンラインでビデオを視聴すると回答していて、今後はバナー広告や検索連動広告に取って代わり動画広告が伸びてくるものと考えられます。

市場としての可能性も東南アジア諸国の中では高いと語る藤田翔大さん。

「百貨店など以前から進出している日本企業も多いのですが、ほかのASEAN諸国と比べると業種によってはまだ参入する余地はあります。Facebookがインフラとして機能していることから、インフルエンサーマーケティングも有効です。中国文化の影響もあって、外資の高品質な商品(化粧品など)を好む傾向があります」

所得による渡航規制があることなどからインバウンド需要は少ないかと考えられがちですが、逆に訪日するのは高所得者層である可能性が高く、そこをターゲットとしたプロモーションも効果が期待できると言います。

「もちろんこれも現状の話で、おそらく2年後には今とはまったく異なる市場状況になっていると予想されます。もし、ベトナムとの事業展開を考えているのであれば、1日も早い参加をおすすめします」(藤田さん)

 

東南アジア屈指の巨大市場インドネシアへの展開は成功への近道

インドネシアの人口は約2億6,000万人と世界第4位の規模を誇り、GDPは2016年に9,323億ドルに達します。経済成長率も年5~6%を推移するなど、その規模や発展度は東南アジア地域の中でも大きな存在感を放っています。

多民族国家で多様な価値観を持ちますが、基本的に親日の傾向が強く事業展開する日本企業も増えています。ただし、国民の約8割を占めるイスラム文化と正しく向き合えるかどうかで事業の成否が分かれるため、業種や商材によってはタイやベトナムと比較して難易度がやや上がると考えてよいでしょう。

「一例として化粧品、アルコールの輸入には規制があります。また、2019年に向けて輸入品にハラル認証を義務付ける動きがあります。特に食品関係は注意が必要で、調味料に豚由来の成分が含まれていたことで問題となったことがあります。ターゲットにもよりますが、マジョリティ向けの商品については信頼の置ける現地パートナーを見つけ、代理店を通じて販売してもらうのが安全です」(泉裕一さん)

なお、インバウンドの場合も文化の違いが影響するため、店単独ではなく地域ごとあるいは施設ごとのハラル認証対応など、行政を巻き込んだ大規模なプロモーション施策が求められます。

インドネシア国内のオンライン広告の市場規模は2017年実績で約1,690億円、2018年には約2,138億円に伸びることが予想されています。特徴的なのはSNSユーザーの伸び率で、主要プラットフォームは統計上はYouTubeとFacebook、メッセンジャーはWhatsAppが4割程度の普及率を示しています。

「この傾向も常に動いていて、現在はInstagramの利用率が急速に伸びています。人口の約半数が20代と若く、ストーリーズ広告などインフルエンサーを活用した動画広告が受け入れられつつあります」(泉さん)

トレンドの動きの速さや文化の多様性など難しさはあるものの、今日より明日が良くなるというポジティブな雰囲気は東南アジア地域に共通していて、参入しがいのある市場と言えるでしょう。

教えてくれたのは…小堤音彦_Otohiko_Kozutsumi
博報堂アイ・スタジオ プロデュース2部 副部長 グローバルビジネスプロデューサー
教えてくれたのは…山田果歩_Kaho_Yamada
[タイ担当] Head of Advertiser Engagement
藤田翔大_Shodai_Fujita
[ベトナム担当] Business Development Executive
泉裕一_Yuichi_Izumi
[インドネシア担当] Advertiser Engagement Manager
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