CMSの潮流を捉え、Webビジネスを加速させよ! CMSの「いま」と「これから」
いまやWebサイトの運営に欠かせないCMS。しかし、時代のニーズにあわせて変化を続けるCMSの実態を把握しきれていないという人も多いのでは? そこでまずは、CMSの「いま」と「これからの可能性」について知ることから始めましょう。近年注目が高まる「ヘッドレスCMS」や「AI」などのキーワードにも触れながら解説します。
Chapter1_データで見るCMSの「いま」
WebサイトにおけるCMSの導入率は?
クライアントの不安材料はデータ改ざんと個人情報漏洩
世界のWebサイトにおけるCMS導入率は年々上昇し、2023年1月時点で約7割に。一昔前は外注先が運用を担うことが多く、対応に時間がかかるという課題もありました。そこで、HTMLやCSSの知識がなくても自社でコンテンツを更新し、迅速に情報発信できるCMSの導入を検討する企業が増えたのだと感じます。
世界のWebサイトにおけるCMSの導入率
国内上場企業のコーポレートサイトでは約4割
国内コーポレートサイトにおけるCMS導入率を市場別で見ると、新興企業中心のグロース市場は約6割。一方、グローバル企業が多いプライム市場はやや低めです。大規模サイトへのCMS導入は大がかりな作業となるので、一歩踏み切れない企業が多いのかもしれません。
コーポレートサイト新市場区分別CMS導入率
選ばれているCMSは?
世界シェアNo.1はWordPress
世界で最も利用されているCMSは「WordPress」です。2023年1月時点で、4割以上のシェアを誇っています。無料ですぐに始められるという手軽さはもちろん、テンプレートやプラグインが豊富で、多様なカスタマイズが可能な点も支持される理由です。第2位は、ECプラットフォームの「Shopify」。コロナ禍でネットショッピングの需要が高まり、個人でも容易にECサイトが作れるツールが普及しているのだと思います。
世界のWebサイトにおける主要CMS利用推移
国内シェア第2位は、国産CMS「ShareWith」
国内上場企業でも「WordPress」が圧倒的シェアを誇っていますが、IR系に強い国産CMS「ShareWith」が2位につけています。また、動的CMSが主流な中でも安全性や表示速度の優位性から「Movable Type」や「NOREN」といった静的CMSを選ぶ企業も増えている印象です。
国内上場企業で使われているCMS TOP10
話題の「ヘッドレスCMS」とは?
CMS選択のポイントは多数ありますが、弊社のお客様の傾向を見ていると、特に重要視されているのは「セキュリティ」であると感じます。加えて、シェア率が高いCMSは避けたいという声も挙がっています。例えば「WordPress」は優れたCMSではありますが、オープンソース型で利用者も多く、プラグインが多様すぎるあまりにハッキングの対象となりやすいのも事実。セキュリティ面での脆弱性を指摘されることが多いです。
Chapter2_近年のCMSトレンドワード
KEYWORD① [ヘッドレスCMS]
クライアントの不安材料はデータ改ざんと個人情報漏洩
「ヘッドレスCMS」は、バックエンド(コンテンツの管理機能)のみを備えたCMSのこと。従来のCMSとは異なり、フロントエンド(コンテンツの表示機能)とバックエンドを分離し、情報のやりとりはAPIを利用して行います。バックエンドの制約を受けないからこそフロントエンドを自由に構築できることが最大の特徴。そのため、1つのコンテンツをPCやスマートフォンだけでなく、カーナビやゲーム機、電子レンジの画面など、さまざまなデバイスに表示することが可能です。
ヘッドレスCMSのメリット
フロントエンドを自由に構築できるのは、ヘッドレスCMS最大のメリット。従来はチャネルごとにCMSプラットフォームがありますが、ヘッドレスであればコンテンツの一元管理が可能です。また、一般的なCMSはテンプレートとセットになっているので少しのデザイン修正でもテンプレートごとにつくり直さなくてはいけません。しかし、ヘッドレスCMSは管理側と表示側が分けられているため、システム的な部分に触れず表示側のデザインだけを変更することができます。他にも、表示速度の高速化などのメリットがあります。
ヘッドレスCMSの主なメリット・デメリット
それでも、利用経験のある制作会社は2割弱
多くの利点を持つヘッドレスCMSですが、まだその実態を理解しきれていないWeb担当者が多いというのが現状だと思います。制作側も同じように、やはり制作難易度が高く、まだまだ知見を持った技術者が少ないのも事実です。ヘッドレスCMSのデメリットとしては、各デバイスでどう表示されるかプレビューを行うのが難しいという一面も…。しかし、これからどんどんツールが高度化していくと思いますので、大きなポテンシャルを秘めているのは間違いありません。
ヘッドレスCMSの利用経験はありますか?
ヘッドレス×Jamstackで高速化!?
ヘッドレスを採用する際は、「Jamstack」構成で開発を行うケースが多いです。Jamstackは、ヘッドレスCMSからコンテンツをAPIで取得し、静的ページを生成。ホスティングサービスを通して配信します。サーバを介さずサイトを表示するため、速度とセキュリティの向上が期待できます。
KEYWORD② [AI]
ユーザーサポートの面で活躍
「よくある質問」等のサポートコンテンツにAIを導入することで、ユーザーの満足度が向上するだけでなく、企業側にとっても業務の負担軽減につながります。しかし、本来は検索でサイトに訪れた時点で、ユーザーの求めるコンテンツを提供できるというのが、理想のWebサイトではないでしょうか。本質的にAIが必要であるのか否かはしっかり検討すべきところです。
ビッグデータとの連携に期待
CMSとビッグデータを組み合わせることで、高いパフォーマンスを発揮できると期待しています。例えば、これまでは仮説を立ててコンテンツを用意していたものが、ユーザーがサイトに訪れた時点で、その人が求めるコンテンツの並びになったり、画像が変わったり。AIを活用することで、よりユーザーの求めるコンテンツを的確に表示し、質の高いユーザー体験を提供できるようになるのではないかと期待しています。
AIに頼りすぎるのも危険?
CMSとビッグデータを組み合わせることで、高いパフォーマンスを発揮できると期待しています。例えば、これまでは仮説を立ててコンテンツを用意していたものが、ユーザーがサイトに訪れた時点で、その人が求めるコンテンツの並びになったり、画像が変わったり。AIを活用することで、よりユーザーの求めるコンテンツを的確に表示し、質の高いユーザー体験を提供できるようになるのではないかと期待しています。
Chapter3_CMSの「これから」
CMSは「シンプル化」の時代へ
よりコンテンツ管理に特化した連携のしやすさが重要に
進化を続けるCMSですが、今後はより一層シンプルになっていくと思っています。これまでCMSは、Webサイトに求められる多様なニーズに応えるために、ECやマーケティングなど、さまざまな機能を盛り込んだ製品が多くありました。しかしこれからは、コンテンツ管理に特化し、より外部ツールとの連携のしやすさを求める声が高まっていくと思います。特に専門性の高いMAツールなどは、CMSに付随した機能ではなく、質の高い外部ツールを選びたいという企業も多く見受けられます。「連携のしやすさ」でいえば、機能と機能を結びつけるAPIを最大限に活用した「ヘッドレスCMS」はベストな選択です。まだまだ活用事例が少ないのですが、弊社でも「ヘッドレスCMSを利用したい」という声が増えてきており、今後ますます目が離せない存在になりそうです。
まとめ
◆ 世界のWebサイトにおけるCMS導入率は約7割。導入率は年々上昇している
◆ 柔軟性の高いヘッドレスCMSが、Web制作を変える!
◆ AI×CMSで、より質の高いユーザー体験の提供が可能に!
◆ 今後CMSは、よりコンテンツ管理に特化し他ツールと連携しやすい「シンプルさ」が求められるように
機能ではなく「目的」で選ぶ!
多様化するCMS 選定のポイントは?
ますます導入を検討する企業が増えているCMS。しかし、「なんとなく便利そうだから」と導入するだけでは、CMSの本来の力は発揮されません。CMSを効果的に活用していくためにも、選定前に考えるべき重要なポイントを教えてもらいました。
①大前提は、目的・目標を明確にすること
CMS導入の際にまず考えるべきは「導入の目的・目標」です。コンバージョン率を上げたい、ブランド価値を高めたいなど、導入によりどのような「成果」が得られるのか、具体的な目標を立てることが大切です。よく、CMSを機能で比較して選ぼうとするケースが見受けられますが、現在のCMSの機能はどれも似たり寄ったり。カスタマイズすればたいていのことができてしまいます。だからこそ、機能よりも「目的・目標を達成するために最適なCMSはどれか」という視点をもつことが重要です。
②「規模感」や「社内ワークフロー」などを把握する
「CMSの機能は似ている」といっても、根本的なつくりの部分でカスタマイズが難しいところがあるのも事実です。例えば、Webサイトの「規模感」。どのくらいのページ数、アクセス数を想定しているのか、何人で管理・運用していくのか、ドメイン数はどのくらいかなど。将来的な部分も見据えて、想定している規模に耐えられるCMSを選ぶことが大切です。また、社内の承認ワークフローも把握しておきましょう。ページ公開に至るまでに、複雑な承認フローを必要とする場合、それに対応できるCMSとできないCMSがあります。そのほかにも、コストやセキュリティの面などから考えなくてはいけないポイントはたくさんあります。総合的に判断し、最適なCMSを選択しましょう。
③制作会社とのパートナーシップも大切
そうはいっても、自社だけで適したCMSを選定することはなかなか難しいと思います。導入にあたっては、やはり信頼できる制作会社と、前準備の段階から共に考えていくことがベターです。社内の担当者と制作会社が同じ目線に立ち、協力してプロジェクトを進行できるような体制を組むことができれば、きっと求めていた成果を得ることができるはずです。
CMS選定で考えるべき、7つのチェックリスト
□ ページ規模と閲覧者の規模は?
□ どれだけ複雑な承認フローが必要?
□ 運用者は何人で、承認者は何人?
□ ドメインの数は? ドメインをまたいで利用するか否か?
□ クラウド型か、ライセンス型か?(コスト面で判断)
□ オープンソースCMSか、商用CMSか?(コスト・セキュリティ面で判断)
□ 静的か、動的か?(使用目的に応じて判断)
※株式会社キノトロープ コラムより引用
(https://www.kinotrope.co.jp/article/theme/cms/004/)
Text:室井美優(Playce)
Web Designing 2023年10月号(2023年8月18日発売)掲載記事を転載