ECとCMS
EC業界はリモートワークがかなり浸透している業界のひとつですが、リモートワークだからこそさまざまなツールにもセキュリティにも気をつけたいところ。ツールの中でも、CMSはなくてはならないものの一つです。今回はECでのCMS運用の注意点について見ていきましょう。
日々の運用か、自由なデザインか
表01は、各ショッピングシステムのCMSを筆者の所感を元に比べたものです。もちろん、ASPやモールによっても違いますし、カスタマイズの内容によってもかなり差があります。その上で今回は、「デザインの自由度」と「セキュリティ」に絞ってお話したいと思います。
ECでCMSを活用する場合、どの程度デザインの自由度を持たせるかはかなり悩まれるところかと思います。CMS運用の観点から考えれば、取り扱い商品の掲載ページは全て同一化した方が、新商品ページ公開やラインアップ変更などは早く対応できますし、トラブルなども起きにくいです。
しかし、運用をしていくうちに新しい分野の商品を扱ったり、イチオシ商品は際立たせたい! などの要望が出てくると、ある程度自由なデザインが許されているシステムの方が扱いやすいことになります。
こだわりが強くなく、効率的な運用をしたい場合には、ほとんどのショッピングカートシステムで採用しているデザインテーマを選択してパーツで組み立てていくパターンか、デザインテーマはプログラムで作成し、HTML・CSS、JavaScriptなどで組み立てていくパターンになります。前者のほうが比較的簡単につくれて、後者はデザイン自体をある程度自由に制作したい場合に採用することになります。
一方、ユーザビリティの観点から見ると、モールなどある程度自由度が制限されたシステムでは、カートボタンやお問い合わせボタンの位置などは最初から決められているので、それ以外のレイアウトや画像などの演出に集中できるメリットがあります。
逆に自由度が高いシステムだと、装飾的なデザインに注力しすぎてこれらの重要なボタンがすぐには見つからない、といったUI上の配慮が足りないページになってしまうという可能性も少なくはありません。
例えば、上に挙げた「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」の「ほぼ日ストア」(02)などは、同サイトがもともとコンテンツメディアであり、その発展系としてネットストアを立ち上げている背景があります。ですので、「ECもコンテンツのひとつ」として捉え、ほぼ日のイメージを踏襲したECストアを展開をするという方針がありました。
さらに、取り扱う商品が「クリエイターがつくったアイテム」というコンセプトのため、各々のクリエイターの世界観をよりよくつくり出せるように、商品ページごとにデザインを自由に変えられるシステムを採用しています。このように、まずは自社の取扱商品やECサイトの方向性、世界観、そして対象となる顧客の志向などをしっかり押さえた上で、どのようなサイトが自分たちのビジネスに有用なのか、よく考えておく必要があります。
ちなみに、デザインテーマをベースにページごとにデザインを変えたいとか、テンプレートを変更可能かどうかはシステムによって変わってきます。また、いきなりPHPでつくったデザインテンプレートを触ってしまう方もいます。どこまでの範囲ならば手を入れられるのかは明確にしておきましょう。
ログイン画面がセキュリティのカナメ
CMSでもうひとつ重要なのが、セキュリティです。2022年春には個人情報保護法が改正され、罰金が最大1億円まで引き上げられる罰則もあるため、要注意です。
ECは当然ですが個人情報がいっぱい詰まっています。CMSの場合、狙われやすいのはログイン画面です(03)。CMSには、ログイン画面のURLが固定化されているタイプと自由に変更できるタイプがあります。当然ながら、セキュリティ上はログインURLを変えられるほうが強くなります。
ログインの方法にも差があります。店舗用のログインとスタッフIDを分けるタイプや2段階認証のタイプもあります。リモートワークが多くなってきている今、2段階認証は携帯電話のSMSで行うことが多いため、多人数、多部署でログインする場合にとても不便です。ログインIDとパスワードの管理はさまざまなツールも出ていますので一元管理しておくのがリモートワーク時代にはよいでしょう。
ちなみに、生成されるURLは大切です。いわばネット上の住所であるURLが番号か、JANか、商品名かといったことが重要になってきます。例えば、照明器具だとJANコードで探す方が多いですし、検索で探す商材では商品名を入れたほうがいいでしょう。これはサイト成長した際、システムの入れ替えや移行時に大きな問題になります。使用CMSがこれに対応しているかは隠れたポイントです。
Text:川連一豊