検索エンジンに評価される3つのポイント
サイト運用において、検索エンジンで適切にヒットするかというのは重要なポイントです。そのために押さえるべきは「良質なコンテンツ」「セキュリティ」「表示速度」の3つだといわれています。その理由や背景について、WordPressの高速化サービスなどを提供するプライム・ストラテジーの西牧八千代さんに伺いました。
Googleは“ユーザーに役立つ”情報を評価する
検索エンジンの対策を考える際、すでに95%以上のシェアを占めるGoogle検索についての対策をするという判断でよいでしょう(01)。かつてはSEO向上のために、タグの付け方やキーワードの設定の仕方などさまざまな裏技的な方法が考案され、そうした対処法に左右されないためにGoogleがアルゴリズムを変更するという歴史を繰り返してきました。しかし近年、Googleは詳細な検索アルゴリズムは公表していないものの、「ユーザーにとって役に立つ情報」を評価するという方針を公言しています。同社が使命として掲げる「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」を実現しようとしているのです。またGoogleの「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」では(02)、基本方針として「検索エンジンではなく、ユーザーの利便性を最優先に考慮してページを作成する」とし、「ユーザーをだますようなことをしない」「検索エンジンでの掲載位置を上げるための不正行為をしない」といったことを掲げています。裏技で検索順位を上げるようなことをすると、かえって評価を下げることになりかねません。
もちろんサイト構造やデザイン、画像などの観点からの評価もあり、そうした留意点はGoogleによる「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」で解説されています(03)。これらをすべて手動で対応し、なおかつGoogleのアルゴリズムのアップデート(1月14日にもアップデートされたばかり)に都度対応していくのは大変です。
例えばWordPressはもともとSEO適正の高いつくりになっていて、Googleの検索エンジン最適化対策担当であるマット・カッツ氏が「WordPressはSEOに関する多くの問題を自動的に解決する。SEOの手法の80~90%に対応するようつくられている」と発言したこともあります。その他のCMSも同様ですが、サービス側であらかじめSEO対策のポイントが押さえられていて、なおかつ自動でアップデートしてくれるのが、CMSにおける検索エンジン対策への大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、先述したガイドラインの中にも「人を引きつける有益なコンテンツを作成すれば、このガイドで取り上げている他のどの要因よりもウェブサイトに影響を与える可能性があります」という一文があります。つまり、どんな対策よりも良質なコンテンツが評価されるということになります。
もっとも重要な評価ポイントは「良質なコンテンツ」
先述のように、Googleから評価されるために一番重要なポイントは「良質なコンテンツ」であることです。CMSには、「人を引きつける有益なコンテンツ」を作成するために有用な機能が揃っています。
例えば投稿においては、Web制作の知識がなくても簡単・スピーディに情報発信ができるので、一番商品に詳しい人が、その時流に沿った情報を発信するというようなことが可能です。また、あらかじめコンテンツの構成にあわせた入力枠やタグの選択肢などを用意しておくことで、誰が投稿してもクオリティが担保された投稿にすることもできます。
また、ニュース一覧ページに新規投稿のタイトルを表示させるなど、サイトの構造を仕組みで担保し、情報へのアクセシビリティを向上させるので、自動的にユーザビリティの高いサイトになっていきます。デバイスごとの表示に対応していたり、プラグインなどでSNS対策もできたりと、SEOに役立つさまざまな仕組みを備えています。ただし、ページごとにユニークな内容とすべきタイトル要素やメタ要素を機械的に出力するなど、すべてをCMSの機能任せにせず、人間が見て有用なものとなっているのか判断をする必要はあります。
さらに、印刷物などと比べて投稿のハードルが低いため、内容が浅かったり不正確だったり誤字脱字が多かったりと、価値の低いコンテンツを安易に投稿してしまうこともありがちです。そうしないように気をつけましょう。
ランキングシグナルとなるセキュリティと表示速度
他にGoogleがランキングシグナル(検索順位を決める要因)として公表しているものに、「セキュリティ」と「表示速度」があります。前者については、「セキュリティは最優先事項である」としていて、例えばHTTPS対応しているか否かがランキングシグナルとなることを2014年8月に発表しています。
後者の表示速度については、0.1秒以内にレスポンスを返す、サーバの応答時間は0.2秒以下に抑える必要があることなどが明言されています。2018年3月には、「モバイルファーストインデックス(以下MFI)」が開始され、それまではPC向けサイトが検索順位の評価対象となっていましたが、モバイル向けサイトによって評価されるよう変わりました。サイトをモバイルで閲覧するユーザーが増えたことによるものでしょう。また、MFIは1月21日に大幅アップデートされ、モバイルサイトとPCサイトとで同じコンテンツを提供する(モバイル向けだけ情報量を減らしてあると検索順位が下がる可能性がある)、両者で画像に同じaltタグを設定するなどの変更点も公開されました。
WordPressのような動的CMSは、表示速度が遅くなるのが難点です。WordPressを高速表示させるためには、画像を圧縮性能が高いフォーマットに変換するプラグインを利用したり、ミドルウェアやモジュールを入れて高速化させたりするなど、さまざまな高速化対策があります。プライム・ストラテジーが提供する仮想マシン「KUSANAGI」では、それらの最善策を一括して実行し、高速化できます(04)。セキュリティ対策も施されているので、両面においてSEO的な効果が期待できるでしょう。
現状のSEO対策状況を把握する
CMSには、現在運用中のサイトがどの程度SEO対策ができているのか、改善できるポイントはあるのかを知ることができる機能もあります。例えばWordPressプラグインの「Yoast SEO」(05)。こちらを利用することで、現状のSEOスコアの表示、改善アドバイスなどを見ることができます。ただしGoogleが開発に携わっているものではありませんし、機械的な判断なので必ずしも正しい指摘になっていない場合もあります。あくまで参考程度に見るのがよいでしょう。また、高機能がゆえに、サイトが重くなったり他のプラグインと競合したりすることもあるので、注意が必要です。利用するときは最低限必要な機能のみに絞り、事前に動作検証をしておくのがよいでしょう。
Googleでは、Chromeの拡張機能である「Lighthouse」を検査ツールとして使うことを推奨しています(06)。Yoast SEOに比べると基本的な項目のみの監査とはなりますが、こちらでチェックしてみるのも一つの手段でしょう。
とはいえ、繰り返しになりますが現在のGoogleでは「ユーザー視点で良質なコンテンツを提供する」ことが一番の評価ポイントとなっています。多くのCMSでは基本的なSEO対策などが施されているかと思うので、そこにリソースを割かないで済む分、コンテンツの質を上げることに集中することが、CMSにおける一番のSEO対策ではないでしょうか。
教えてくれたのは…西牧八千代
プライム・ストラテジー(株)取締役CMO。プライム・ストラテジー(株)の創業メンバーとして17年間、経営全般のほか、ブランド戦略、Webマーケティングに携わる。企画執筆した『本格ビジネスサイトを作りながら学ぶ WordPressの教科書』(SBクリエイティブ)は2012年度「CPU大賞(書籍部門)」受賞。 https://www.prime-strategy.co.jp/
Text:平田順子