データに基づいた戦略的Twitter広告の実際

最近のGoogleやYahoo!のリスティング広告は、キーワードによってはクリック単価が高騰している。今回は、それによってCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)が1万円以上になっていた家庭教師の学生アルバイト募集を、若年層のユーザーが多く、比較的クリック単価の低いTwitter広告を運用することで、1カ月に100件の応募を獲得しながらも、CPAを1,500円以内に収めることができた事例を紹介しよう。

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目次

Twitter広告の機能

Twitterは、ユーザーの5割以上が10~20代で(02)、その多くが学生であるため、若年層に非常に効果的な広告媒体である。したがって、Twitter広告で成果を出すためには、媒体の性質を理解した上で、キーワードやクリエイティブの作成などを行ってうことが非常に重要になる。

Twitter広告では、9つの「ターゲティング」をもとに広告の配信が可能だ(03)。もっともよく使用されるのは、ツイートや検索したキーワードに反応して広告を配信する「キーワードターゲティング」、Twitterアカウントを指定して、そのフォロワーとフォロワーに類似するユーザーに広告を配信する「ハンドルターゲティング」の2つだ。この2つのターゲティングとそれ以外の7つのターゲティングを組み合わせることによって、広告配信のターゲティング精度やユーザーの反応率を高め、既存のPPC(Pay Per Click)型広告の平均を大きく超える高いパフォーマンスを実現できる(集中企画のChapter01も参照)。

01 Twitter広告運用時に使用するアカウントは、ごく一般的なものでフォロワー数なども特別に多い必要はない。 0フォロワーでも十分に高い効果を期待することができる
02 Twitterのユーザー層 男性(女性)比率は、そのアプリを所持しているユーザーに占める男性(女性)の割合 出典:App Ape Report 2014年12月版(国内約3万台のAndroid端末を分析)
03 Twitter広告では、上記の9つのターゲティングを組み合わせて広告効果を最適化する

ユーザーの分析とペルソナの設定

Twitter広告に限らず、SNSの広告に共通していえるのは、潜在的なニーズを持っているユーザーを掘り起こす必要があるということだ。たとえば、Twitterでバイト探しをするユーザーは多くはなく、たまたま募集広告を見て、「おもしろそう」「やりがいがありそう」と応募するわけだ。つまり、具体的なターゲットユーザーを想定した上で、どのような潜在的なニーズを持っているかを分析して、そこに「刺さる」広告を制作し、確実に届ける施策を打つ必要がある。

今回の事例の家庭教師募集の場合、同様に家庭教師募集系のツイートをしているアカウントを選定し、そのアカウントをフォローしているユーザーを分析した。どういった内容をツイートしているのか、どんなアカウントをフォローしているのかといった情報を分析し、それに沿って具体的なペルソナ(ある程度の学力がある男子大学生)を設定し、的確なターゲティングを行うことができた(04、05)。

04 Twitter上の検索で話題のツイートや検索キーワードに関連するアカウントなどをリストアップし、分析を行う
05 ユーザーの興味を惹くデザインを意識することで、このような高いエンゲージンメント率を実現できる

キーワードターゲティングの特徴

キーワードターゲティングの特徴は、「○○したい、○○がほしい」といったリアルタイムで発生したニーズに対して広告を配信できることだ。

今回の場合、「家庭教師」といったわかりやすいキーワードのほかに、そこから派生した「カテキョ」などのユーザーが実際にツイートしそうな口語調のキーワードが効果的だった。また、「シラバス、就活」といった単語は、直接的には関係しないが、大学生がつぶやきそうなキーワードであり、応募につながった例もあった。

Twitter広告では、キーワード選定に、このような傾向があることを理解していないと効果を上げることができない。

ハンドルターゲティングの実際

ハンドルターゲティングは、自ら情報を得ようと能動的に行動するユーザーに対して広告を配信できるため、CVにつながる可能性が高い。

この事例では、Twitter内で家庭教師募集などのキーワードでアカウントを検索し、関連するアカウントを選定した。この時、フォロワー数が最低1,000以上の認証済みアカウントを選定することがポイントだ。

クリエイティブ作成時の注意点

Twitter広告では、クリエイティブ(画像や動画)のエンゲージメント率(ユーザーの反応率)によって同一入札額でのインプレッション数が大きく異なる。そのため、いかに高いエンゲージメント率を獲得するかが、クリエイティブ作成時の目標となる。

Twitter広告における画像の役割は、フィード上でユーザーの目を留めさせ、広告にエンゲージメントさせることだ。したがって、ツイートに添付する画像は、ユーザーの興味を惹くデザインが好ましい。1ツイートには4つまでの画像を添付できるので、これを十分に活かそう。たとえば、画像にセリフをつけて4コマ漫画形式にした仕掛け(01)は、29%という高いエンゲージメント率を実現した。

なお、広告で配信できるツイートには、広告用に作成した「プロモ用ツイート」、通常通りに投稿した「オーガニックツイート」がある。現状ではオーガニックツイートを使用した広告配信のエンゲージメント率が高い傾向であるため、オーガニックツイートでの運用が主流となっている。

また、Twitterでは、ほかの媒体以上に「広告っぽい」投稿はユーザーに嫌われやすいので、ラフな文章や画像を使用するのが効果的だ。配信するユーザーのペルソナにあわせてツイートを分けることもエンゲージメント率を上げるためには重要なポイントとなる。

文章量が多いとスルーされてしまうこともTwitterの特徴だ。したがって、流し見していても内容を把握できる程度の文章量が好ましい。文章の前半はキャッチコピーとして目に留まるような内容を盛り込み、ボディコピーでメリットを簡潔に伝える形式が効果的だ。

画像作成のポイント Twitter広告の独自性

Twitter広告には独特の傾向が多く存在する。それらを理解した上でデータの分析を行おう。たとえば、キーワードごと、ハンドルごとに集計すると、CVしたユーザーが複数のターゲティングに属していると重複して計測されるため、通常のCV数よりも高い数字になってしまう(06、07)。

また、ツイートやキーワードなどの設定がまったく同じでも、配信するOSや性別によってエンゲージメント率やコンバージョン率が大きく異なる場合が多い。したがって、アカウントはOS別、男女別に分けて作成し、各キャンペーンごとのデータの動きを分析することが重要になる。

06 今回は、「【関西】KW家庭教師_ios_男性向けのキャンペーン」を例として紹介している
07 06の「【関西】KW家庭教師_ios_男性向けのキャンペーン」の各キーワードごとのデータ。コンバージョン数値(65)がキャンペーンで表示されているもの(21)よりも多いことがわかる。このように、キーワードごと、ハンドルごとでデータを参照した場合、実際のコンバージョンと乖離が出るため注意が必要だ

アカウント構成と改善フロー

効率的にデータ分析と運用改善を行うためには、次のようなアカウント構成にするとよいだろう(集中企画のCapter03も参照)。

①OS、性別、ターゲティングごとにキャンペーンを分けて作成する

こうすると、どちらかにCVRやCPAの偏りが出るため、それにあわせて入札単価の変更やツイートの差し替えを行う。それによって目標CPA内でのコンバージョンの最大化が見込める

②キーワード、ハンドルターゲティングの評価は平均値を算出して行う

キーワードやハンドルごとの正確なCVやCPAが算出できないため、CPAやCVRなどの平均値を算出し、平均より上か下かで判断する。大きく上回って成果のよいキーワードは別キャンペーンで入札を高めて運用し、下回るものは削除することを繰り返してアカウントの最適化を行う

③ツイートは2~3週間ほどで新しいものに切り替える

他の広告と比べてTwitterではクリエイティブが飽きられるのが早いため、エンゲージメント率が下がってきた段階で、すぐにツイートの内容を切り替えよう。そうすれば、一定の効果を持続させることができる

※Web Designing 2016年5月号掲載記事を転載

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