SNS解析データによる良い投稿・悪い投稿の見分け方とPDCA
FacebookやInstagramにはインサイト、TwitterにはTwitterアナリティクスと呼ばれる解析機能が標準搭載されている。これらの機能をいかにして求める成果へと繋げるのか、一般社団法人ウェブ解析士協会が運用するソーシャルメディアアカウントの解析画面をご覧頂きながら解説する。
著者プロフィール
田村 憲孝さん
ソーシャルメディア・WEBコンサルタント。ウェブ解析士協会ソーシャルメディアマネジメント研究会代表。企業や地方自治体向けにソーシャルメディアの運用指導・運用コミュニケーション代行
一般社団法人ウェブ解析士協会
事業の成果に導くWeb解析を学ぶ機会の創出、研究開発、関心を持つ人たちの交流促進、就業支援などで、Web解析を通じての産業振興やWeb解析の社会教育を推進する。
まずは、目的を明確にすること
解析について書く前に、ソーシャルメディアアカウントの運用目的そのものについて触れておきたい。大きく分けるとソーシャルメディアの運用目的は2つある。
1つ目は直接効果を狙うもの。いわゆるコンバージョンを目的として運用するパターンである。本来ソーシャルメディアはコミュニケーションツールであり、直接効果を目的とするものではなかったが、近年は広告メニューの充実などによりコンバージョンのみを目的としてソーシャルメディアを運用する企業も少なくない。もう1つは認知度の拡大や顧客とのコミュニケーションなど、あえて名付けると「非コンバージョン」的な効果を目的とするものである。
運用目的によって見るべき指標も異なる。まずはそこを踏まえて、目的別にチェックするポイントを解説する。
解析の基本的な考え方
FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアは日々新しい情報を発信し、ユーザーに訴求するツールである。Webサイトの解析であればページ毎の効果を検証するが、ソーシャルメディアの場合も考え方は同様である。ただし、Webサイトとは異なる点もある。ソーシャルメディアの場合、「ページごと」ではなく「投稿ごと」の効果を比較することである。日々の投稿が運用目的に対してどれほどの効果を及ぼしているかをチェックし、PDCAサイクルを回すのが基本となる。
目的:サイト誘導とコンバージョン
ソーシャルメディアがコンバージョンに対して寄与できる役割は、ランディングページへのトラフィック誘導である。投稿の中にサイトへのURLを記載しておき、閲覧したユーザーの興味を引いてクリックさせる。この一連の導線にユーザーを乗せることこそが、コンバージョン目的でソーシャルメディアを運用する際の唯一の目的となる。
Facebookインサイトで投稿ごとのサイト誘導数を確認するには、「投稿」メニューから各投稿の解析結果に記載されている「リンクのクリック」をチェックする(03_A~B)。どのような投稿でクリック数が大きい数値になるのか、逆にクリック数が少なかった投稿は何が要因だったのか仮説を立てる。
Twitterアナリティクスではツイートメニューから各ツイートの解析画面を開き「リンクのクリック数」をチェックする(03_C)。ここでも投稿内容によるリンク数の差異に特性を見出し、仮説を立てておく。
目的:認知拡大とコミュニケーション
コンバージョンではなく、認知拡大やコミュニケーションなどを目的として運用する場合の効果解析は、考え方としては次の2点を軸に見ることになる。1つはいかに多くのユーザーに情報を届けられたか。もう1つは、いかに多くのユーザーが各投稿に対して反応したか。それぞれのメディアでこの2点について効果を追い、目的に対して最適化してみよう。
Facebookインサイトでは「投稿」メニューで投稿を一覧表示させる。まず「どれだけ多くのユーザーに情報を届けられたか」をチェックするには「リーチ」の項目を確認する。また、「いかに多くのユーザーが各投稿に対して反応したか」をチェックするには「エンゲージメント」欄の「リアクション、コメント、シェア数」を視覚的に比較する。ここで突出して良い数値を記録しているものや、逆に他の投稿と比較して数値が少ないものを抽出し、その要因を検証する(04_A)。
一般的には「いいね」「コメント」「シェア」など、いわゆるエンゲージ数が多いとリーチ数も比例して増加する。したがって、実際のFacebookページ運用に落とし込むと、投稿内容のメンテナンスや広告の併用によって、どれだけファンの反応が得られるかということが重要なポイントとなる。
Twitterアナリティクスでは、ツイートメニューで「ツイート」を選択する。投稿されたツイートが新しいものから時系列で一覧表示されるので、インプレッション(閲覧数)とエンゲージメント(反応数)を確認する。エンゲージメント指標の中でも、他のユーザーへの拡散効果が高い「リツイート」の数を最重要チェック指標として確認しよう。TwitterでもFacebookの場合と同様、各数値に突出した数値を見出し、その要因を探る。
また、Twitterアナリティクスの場合は「トップツイート」というメニューが存在し、インプレッションが多い順に投稿を並べ替えることもできる(04_B)。さらに「ツイートと返信」メニューでは、自ら発信した投稿だけでなく他のユーザーに対して返信したツイートも解析の対象としてチェックすることができる(04_C)。自身が発信したツイートよりも他者への返信のほうが効果が高いケースもあるので、こちらのメニューもあわせて確認しておきたい。
仮説はどう立てるのか?
セミナーなどでここまでの内容を伝えると、ご参加頂いた方からは「各投稿の効果を比較するところまではできるのだが、それをどう定義付けて仮説を立てるのかがわからず、結局いつも解析結果を見るだけになってしまう」というご質問を頂くことが多い。これに対しては、個々のケースに委ねる要素が大きいため、本来一般論で回答することは相応しくないのだが、あえて実際に私がクライアントにお伝えしている「仮説ポイント」を挙げてみよう。
以下に記載する、各項目について投稿の種類を分け、比較対象として検証する。あなたが自社のアカウントやクライアント企業のソーシャルメディア解析を実施する際のヒントにしてほしい。
①リッチメディアの種類と数を比較する
ひとつ目の要素は、その投稿に添付されている動画や画像など、いわゆるリッチメディアの種類と数である。動画なのか画像なのか、画像なら何枚添付されているのかなどを比較要素としてピックアップする。たとえば、直近1カ月のFacebook投稿を並べて「5,000リーチ以上獲得している投稿のほとんどで、画像が3枚以上添付されている」という傾向が見えたとする。次月はそれを検証するために、あえて1枚だけ画像を添付した投稿と3枚以上画像を添付した投稿を意図的に同頻度で発信し、仮説の成否を改めて検証し精度を上げていく。
②リッチメディアの内容を比較する
これこそ個々のケースに帰属する部分が多いので一概には伝えにくいところではあるが、あえて挙げると「人物が写っているか否か」「人物が写っているなら男性か女性か」「自社の商品が写っているか否か」など、内容によって、できれば2つの対極となるジャンルに振り分けて検証する。
③動画の長さを比較する
動画の時間的な長さも比較対象ポイントである。投稿した動画が1分を超えると極端に反応数が悪くなるなど、傾向が見出されるケースもある。
④投稿文の長さを比較する
一般論として、昨年頃まではできるだけ短く簡潔に表現するのが良しとされてきたが、今年に入って以降、特にTwitterではできるだけ制限文字数140文字いっぱい使って投稿する方が良い効果を生むなどの傾向も出てきている。ぜひ自社アカウントの場合はどのような動きをするのか検証してみてほしい。
⑤見出しの有無と種類を比較する
投稿見出しとは投稿文の冒頭に見出しのような一文を付与することである。たとえば「★いよいよ明日発売」「【速報】」など、冒頭にアイキャッチ的な要素があるのかないのか、あるならどのように表現したのかをチェックする。ソーシャルメディアの閲覧者は、自身のタイムラインを高速で上から下へスクロールして興味ある投稿をチェックしている。その動きの中でいかにして自社の投稿が表示されたタイミングでスクロールを止めさせることができるのか、それこそが大きなポイントとなる。そこで効果を発揮するのが「見出し」的な表記方法となる。見出しの有無とその内容を検証してみよう。
ウェブ解析士協会の仮説立ては、05_A~Bで確認してもらいたい。上記すべてのポイントをチェックすると判断要素が多すぎるため、効果を分けたポイントが不明瞭になってしまうケースもある。アカウントの特性によって比較ポイントを絞って判断することも必要である。
※Web Designing 2017年12月号掲載記事を転載