2カ月でサイトを立ち上げ、半月で検索結果に10万回以上表示! 「Orizm」の強みとSEOの専門性が生んだ「Beauty Clip by N organic」の成果
株式会社サイバーエージェントの子会社で、「N organic」などの化粧品ブランドを手掛ける株式会社シロクは、2025年7月に美容の情報を提供するオウンドメディア「Beauty Clip by N organic」(以下、ビューティークリップ)を開設しました。サイト構築を手掛けたのはWeb制作・システム開発を行うちょっと株式会社で、同社が開発・提供するCMS「Orizm(オリズン)」が採用されています。
公式オンラインショップに約300万人の会員を持つシロクが、新たにオウンドメディアを始めた背景とは? また、短期間でのサイト構築とSEO成果を実現できた理由は? シロクの石山貴広さんと江口浩史さん、ちょっとの江辺和彰さんと関新太郎さんの4人に話を聞きました。

会員が300万人でも、検索流入には伸び代がある
–––––––まずは、今回シロクさんがオウンドメディア開設を企画した背景を教えてください。
石山貴広(以下、石山) 当社では8年前に化粧品のD2C事業を立ち上げ、その第1弾がN organicというスキンケアブランドでした。その後、N organicの成長に合わせ、お客様のニーズに応じてヘアケアやメイクアップへと領域を広げてきました。
現在、公式の「シロクオンラインショップ」会員は300万人を超え、多くの方に定期購入をご利用いただいています。そんななか、今年4月に江口がサイバーエージェントの社内キャリア異動制度を利用して当社へ入社したのをきっかけに、オウンドメディアのプロジェクトが立ち上がりました。

江口浩史(以下、江口) 私はサイバーエージェントの広告事業本部、なかでもSEOに特化したチームに長く在籍していました。これまで数々のオウンドメディアを立ち上げ、検索流入が潜在的なユーザーとの重要な接点になることを経験してきましたが、シロクに入社した当初、シロクオンラインショップは検索流入が弱く、受け皿もない状態でした。メディアを立ち上げることで、その課題を解消したいと考えたのです。

–––––––すでに多くの会員様が定期購入していらっしゃるブランドでも、やはりSEOは重要なのでしょうか?
江口 そうです。これまでに私が携わってきた事例でも、オウンドメディアによる検索からの集客はそれなりの割合を占めるものでした。特に、自分で調べて訪問するユーザーはモチベーションが高いことが特徴であり、それを獲得できないのは非常にもったいない状況です。
当社の製品は指名検索以外のキーワードでは集客がほとんどできていなかったので、約300万人の会員がいたとしても、伸び代はかなりあると見込んでいました。

SEO課題への最適解、モダンでカスタマイズ性の高い「Orizm」
–––––––ちょっとさん側は、シロクさんからのご依頼をどう受け止めていらっしゃいましたか?
江辺和彰(以下、江辺) 私たちはもともと、Jamstackというアーキテクチャを活用し、SEOに強いサイトを構築できる技術力を強みとしています。シロクさまの課題に対しては、自社開発CMS「Orizm」での開発が最適だと判断しました。高いカスタマイズ性を備えているため、単なるオウンドメディアにとどまらず、機能追加や拡張にも柔軟に対応できます。そうした点に期待を寄せていただけたのだと思います。

石山 今はレスポンスのよいサイト、体験のよいサイトが、検索エンジンにもユーザーさまにも評価されていると感じています。その要件を満たす意味で、モダンかつメンテナブルなアーキテクチャをお持ちの制作会社さんに依頼したいと考えていました。まさしく、ちょっとさんのOrizmは最適でしたね。
AIを使ってコーディングが効率化されている時代ではありますが、お客様の体験をつくることに関しては、まだまだ人が考えていかなくてはなりません。「いかに気持ちのよいサイトにしていくか」という意味で、ちょっとさんのフロントエンドの開発力は非常に高いと思っています。
関 新太郎(以下、関) おっしゃるとおり、今はまだ人が目で見て手を動かさなくては調整できない部分が多々あります。そうした部分への対応の積み重ねによって、最終的にお客様の体験が変わってくるという意識を持って開発しています。

江口 当社は化粧品ブランドという事業の性格上、デザインの評価基準が特に厳しく、制作物に関してのやりとりが多発することがよくあるんです。その点においても、ちょっとさんには基準を超えて「いいものができた」と言えるところまで粘り強く向き合っていただきました。
約2カ月でサイト立ち上げ、無駄なく最適化されたCMS
–––––––「ビューティークリップ」は、開発期間がとても短かったと聞きましたが、具体的にはどれくらいだったのででしょう?
江口 期間は約2カ月でした。一般的に考えると、このスピード感は異例だと思います。代理店の立場から見ても、比べものにならない速さでした。通常であれば、オリエンテーションの後に制作会社が内容を噛み砕いて形にするまで、相応の時間を要します。しかし、ちょっとさんは経験が豊富なこともあり、レスポンスが非常に速かったのが印象的でした。
江辺 それはCMS構築にOrizmを用いていることも理由のひとつだと思います。ある程度スケルトン(構造躯体)がある状態から始められるので、スクラッチ開発や、枠組みから準備が要るCMSに比べてスピード感のある開発が実現できるのです。
関 Orizmにはメディアサイトでよく使われる「下書き機能」や「全文検索機能」なども用意されているので、ご要望に合わせてすぐに実装できることも利点です。過去のさまざまな案件を通じてアップデートされてきた機能やナレッジの蓄積といった点からも、素早い対応が可能になっているのだと思います。
石山 メディアサイトなら、例えばWordPressを使って構築することも可能ではありますが、パフォーマンスを得るためにかなりのチューニングが必要であったり、柔軟性という強みの反面アーキテクチャの古さがあることなどから、選択肢から外れていきました。
それにコンテンツがSNSで波及していく時代において、「あまり余計なものをCMSに乗せたくない」という気持ちもあったのです。その点でいうと、今回のプロジェクトでは、当社の事業に最適化された、研ぎ澄まされたCMSができたと考えています。
ローンチ半月で検索結果に10万回以上表示。AI Overviewsにも参照
–––––––「ビューティークリップ」の公開以降、どのような成果が出ていますか?
江口 7月22日のローンチからおよそ半月(取材時点)で、検索結果表示回数は約10万回に達しており、 初速としては速いほうだと思います。検索結果への露出もかなり得られていて、Googleの「AIによる概要(AI Overviews)」にもさっそく一部の記事が参照されています。
石山 AI Overviewsへの掲載ロジックは開示されていないため、何が理由なのかはわかりませんが、やはりよいコンテンツを提供できていることと、お客様の体験がよいことの両輪があって評価されているのではないかと感じています。

江辺 成果につながっているとわかって何よりです。開発の方でもSchema.orgベースの構造化データに対応したフィールド設計を行ったので、その点でも効果があったのではないかと思います。
石山 そうですね。アーキテクチャ、コンテンツの構造化、記事のディレクションと、検索フレンドリーなサイト構築という意味では多くの工夫を盛り込めた形になっていると思います。
–––––––その他に開発で注力された点はありますか?
江辺 Orizmはお客様に合わせて柔軟なカスタム機能開発ができることが特徴ですが、そうした機能を盛り込みながらも管理画面は使いやすく、直感的に操作できるUIを意識しています。今回のシロクさんの場合は、監修者情報の編集などが当てはまりますね。
関 はい。これは監修者の情報を一括管理できる機能で、各記事からこの情報を参照でき、プロフィールなどを更新した場合は全体に反映されます。また、記事を編集する「リッチテキストエディター」画面にも監修者の情報が埋め込まれた状態で表示されるようにしました。

石山 CMSによっては管理画面のカスタマイズに制限があったり、そもそもできない場合もあるので、このような柔軟さは大変ありがたいです。
–––––––好スタートとなった「ビューティークリップ」について、今後の展望があればお聞かせください。
江口 ローンチしたばかりですので、これからどんどん記事を追加し、検索結果を通じてお客様の美容の悩みを解決していきたいですね。そして、より多くの方に当社の製品に触れていただく機会を増やしていくことが目標です。
江辺 まだ私たちの発案段階の話ではありますが、例えば商品データベースを連携させて記事上で特徴を比較するなど、Orizmのカスタマイズ性の高さを活かした機能を盛り込んでいくことで、よりメディアの価値を高められるのではないかと思います。今後も「ビューティークリップ」の成長に貢献していきたいと考えています。

取材・文/笠井美史乃、写真/秋山枝穂
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