
「企業の内製化への要望」に制作会社はどう向き合う?【Web Designing独自アンケート】

Web制作の現場で、静かに広がっている変化があります。それが「内製化」への要望です。「Webページの要素やレイアウトを、社内で自由に変更できるようにしたい」とクライアントから言われた経験のある方も多いのではないでしょうか。
そこでWeb Designingでは、Web制作会社を対象としたアンケートを実施。クライアントにおける内製化ニーズの変化や、現場が直面している課題についてうかがいました。
本記事では調査結果を紹介するとともに、次世代Webサイト構築プラットフォーム「Orizm」を提供するちょっと株式会社代表の小島芳樹さんに、こうした変化を見据えて制作会社が今後どう向き合っていくべきかをお聞きしました。
目次
調査概要:回答者の6割超は受託の制作会社
今回の調査は、Web Designingの公式XやFacebook、メールマガジンなどを通じて告知し、2026年6月17日から7月10日までの約1カ月間で実施しました。Web制作会社をはじめ、Web制作に携わる方を対象に呼びかけたところ、70件の回答が集まりました。
回答者の内訳を見ると、「Web制作会社(受託)」が37件(53%)と半数を超え、「フリーランス」が21件(30%)、「事業会社(インハウス)」が9件(13%)と続きます。受託の制作会社とフリーランスを合わせると8割以上を占めており、日々クライアントと向き合う現場のリアルな声が集まったと言えます。

サイトの「内製化」ニーズ、6割超えの制作会社が実感
「『公開後のサイト編集・更新を社内で行いたい』というクライアントからの要望は、2~3年前と比べて増えていますか?」という問いに対し、「明らかに増えている」「やや増えている」を合わせた回答は64%にのぼりました。「減っている」という回答はゼロです。内製化への意向は、もはや一部の先進的な企業に限った話ではなく、業界全体で共有されつつある明確なトレンドだと言えるでしょう。

内製化を望む理由は「コスト」と「スピード」
では、なぜクライアントは内製化を望むのでしょうか。その理由でもっとも多く挙げられたのは「コスト削減」で56件、次いで「スピード重視(都度依頼の手間を省きたい)」が46件でした。Webサイトの制作・運用コストを抑えつつ、施策のスピード感を上げたいという企業側のリアルな事情がうかがえます。
一方で「社内にWeb担当者を育てたい」という人材育成を見据えた回答も17%あり、単なるコストカットにとどまらず、中長期的なデジタル運用の内製化体制を目指す企業が一定数存在することもわかります。

制作会社はすでに対応済み。6割超が複数件の実績
こうしたニーズに対し、制作会社側の対応はどこまで進んでいるのでしょうか。「クライアントが内製化できるようなサイト構築・CMS導入を行ったことがあるか」という問いに対しては、「3件以上(継続的に行っている)」が64%、「1〜2件ある」が26%という結果になりました。実に90%もの回答者が、すでに内製化を見越した案件を手がけた経験を持っています。
どこまでカスタマイズの自由度を持たせるかは案件ごとに判断が分かれるところだと思いますが、運用の柔軟性を備えたサイト設計は、今後のWeb制作において必須のアプローチとなりつつあります。

制作と運用の間にある課題
一方で、内製化しやすい環境を提供するうえでの課題を尋ねると、制作現場の苦労が浮き彫りになりました。最多となったのは「カスタマイズの自由度と操作性の両立」で35件。次いで「操作が複雑で、クライアントが使いこなせない」が30件、「誤操作・誤削除などのリスク管理」が24件と続きます。
これらの結果を俯瞰すると、1つの構造的な問題が見えてきます。それは、クライアント側に「内製化したい」という意向はあっても、それを実際に運用し続けるための社内体制やスキルが追いついていないという現実です。
本業を抱える社内スタッフが運用に割ける時間をどう確保するのか。ツール操作だけでなく、デザインのクオリティを保つスキルをどう養うのか。さらには、内製化によって特定の担当者に負担が集中する「属人化」や、引き継ぎ・共同作業の難しさといった運用面での課題も大きなハードルとなっています。

これからの制作会社に求められること
こうした課題を踏まえると、これからの制作会社に求められるのは単に「更新しやすいサイトをつくる」ことだけではないでしょう。運用担当者が迷わないためのマニュアルを整えたり、万が一の誤操作があってもすぐに復旧できるバックアップ体制をあらかじめ組み込んでおいたりといった、運用フェーズまで見据えた手厚いサポートが鍵を握ります。
また、将来的な運用の変化を見越して先回りしたスタイル定義を行うことや、構築前の段階から運用のしやすさを担保できるプラットフォーム(CMS・ツール)を選定することも、制作会社に求められる役割となっていくでしょう。
ちょっと株式会社代表の小島芳樹さんは、今回の結果を踏まえてこう語ります。
シェアの高いWordPressだけでなく、UI/UXに優れた新興のCMSやWebサイトビルダーが広がりつつあり、ユーザー企業でも更新がしやすい環境が整いつつあります。
また、今後はAI経由でサイト更新が行える場面も増えていくと思います。例えばChatGPTに「新しい製品の資料をアップするから、製品紹介ページに追加して」という指示を出すとサイトを更新してくれるような仕組みが、実現可能になってきています。
コンテンツの更新コストが下がっていくと、企業の情報発信がより活発的になり、サイト上の情報がこれまでよりも大幅に充実していく可能性があります。しかし情報が増えるからといって、それにともなってユーザーが急激に増えるとは限りません。また情報があふれることにより、かえってユーザーが必要な情報にたどり着きにくくなってしまう可能性もあります。
今後、Webのプロフェッショナルとして提供していかなければならないのは、サイト更新の効率化だけではなく、ユーザーにどういった情報をどういう手段で届けるべきかをいかに設計し、お客様のビジネスに貢献するということなのではないでしょうか。
内製化という大きな潮流は、Web制作会社にとって単に「運用の仕事が減る」というネガティブな変化ではありません。クライアントのビジネスに寄り添い、共に成長を目指す「長期的なパートナー」としての価値をどう提示できるか。今回の調査結果は、Web制作業界が新たなフェーズへと足を踏み入れていることを示しています。
Text:小平淳一
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