グッドパッチ創業15周年サイト、表現の限界に挑んだFunTechの創造力

グッドパッチ創業15周年サイトの舞台裏_FunTech太田義孝CEOにインタビュー

グッドパッチが創業15周年を記念して、5年ぶりとなるコーポレートサイトのフルリニューアルと同時に公開したのが、創業15周年サイト(15th Anniversary Special Site)。同案件を手がけたのが、スーパークラフト&ブランディングカンパニーを掲げるクリエイティブプロダクション「FunTech」です。

じつは当初、FunTechに求められていたのはコーポレートサイトの全面刷新のみだったそうです。ではなぜ、特設サイトの制作も担うことになったのでしょうか。Web Designing編集部では、FunTech代表取締役CEOの太田義孝さんにインタビューを実施。実際の制作現場でどのような挑戦が行われたのかを、数々の成果物を見ながら整理していきましょう。

グッドパッチのコーポレートサイトのリニューアルについての詳細は、こちらをご覧ください。

目次

なぜ創業15周年サイトは生まれたのか

──コーポレートサイトのフルリニューアルとは別に、創業15周年サイトを制作した経緯を教えてください。

太田義孝(以下、太田) 当初の商談で出ていたご要望は、コーポレートサイトのフルリニューアルだけでした。ただ、事前のヒアリングを進めているときから、グッドパッチさん側で15周年サイトも「あったら良い」という声があり、つくる予定自体は元々ありました。

──そうだったんですね。てっきり、15周年サイトと一緒に動いていたのかと思っていました。

太田 私たちが3Dや映像制作を得意としていますし、それらの強みを活かしたクリエイティブへの期待があることも、事前ヒアリングを通じて感じ取っていました。そこで、15周年サイトやスペシャルムービー制作の企画を提案したところ、光栄にもそれぞれについても取り組めることになったんです。

──では、15周年サイトの全体像をうかがいます。コーポレートサイトは、「Design to envision」というコンセプトを掲げていましたが?

太田 15周年サイトは、テーマを「Charge, Chaos」、としました。

──このテーマにした背景や理由は何だったのでしょうか?

太田 私たちがテーマを考えるうえで、この15年を振り返ったとき、最も大きな社会変化は「AIによる産業構造の変革」だと考えました。AIの台頭は、デザイン業界にとってはネガティブな側面も強いです。「もうデザイナーはいらないんじゃないか」といった声が出てきたり、今後も厳しい事業環境が予想されています。

一方でグッドパッチさんは、土屋尚史代表が2026年3月、全社的に「Claude Codeを使って、1アプリケーションをつくり、デプロイまでやること」という「Claude Code大号令」を出しました。

──はい。その活動でつくられたアプリが、このサイトの中盤に用意されている「Over 30 AI Apps Gallery」でコンテンツ化されています。

太田 そのギャラリーの説明は後ほどに譲りますが、これほど全社的にAI活用が浸透している組織の例は、稀だと思っています。まさにグッドパッチさんから、「新しいことへ素早く挑戦し、AI時代というカオスを楽しむ姿勢」を読み取りました。創業から今日に至るまで、さまざまなカオスを乗り越えてきたのだろう、と。

──そうした背景を踏まえて、ChargeやChaosという言葉を選んだ?

太田 その通りです。チャージ(Charge)には、力に変えるという意味と、サーフィン用語で「巨大な波に果敢に挑む」という意味もあり、ダブルミーニングになっています。私たちを取り巻く環境が大きく混迷する中でも、荒波(カオス)に飛び込み、怯まず恐れず乗り越えていく姿をデザインで表現しよう、と進めたのが本プロジェクトになります。

──アクセスした瞬間、パッと勢いのあるクリエイティブが一気に広がります。

太田 ファーストビューで広がるキービジュアルが、最初の大きな見どころですね。ここでは、4種類の波の素材を用意しています。それぞれ、「イントロでの出現」「ループ」「波の変化の演出」「ループ」の4カットで構成していて、合計16素材です。これらをループさせながら合成する表現をAIで組んでいます。アイコンが波間に浮いているようにしたくて、レイヤーとレイヤーに挟んで表現しました。

ローティングの画面表示。
ローディングを終えると……
ローティング完了後、「Charge,Chaos」とともに画面に広がるキービジュアル。
コンセプトワード「Charge,Chaos」とともに、画面全体に広がるクリエイティブ
グッドパッチ特設サイトの制作過程で使用されたGUI調整画面。
15周年サイト制作中のGUI(提供:FunTech)

──そこからスクロールすると……

太田 オリジナルキャラクターの「ぱっちー」が、波がうごめく背景全体をグシャッとつかんで、布のようにめくっていきます。ここも、めくった際の光の反射具合を調整したり、重たくならないような処理を施したりしています。ここに限らず、1つずつ細かなパラメータ調整をして仕上げました。

波のうねりが収まりを見せる、スクロール中の演出画面。
ファーストビューの後、スクロールしていくと……
新米キャラクター「ぱっちー」が画面を布のようにめくり、次のコンテンツ(テキスト)が現れるスクロール中の演出画面。
これまでのビジュアルを布のようにめくり出すぱっちー。めくった後には、何やらテキストが見えています
グッドパッチの創業から現在までの歴史が記されたテキストエリアと、各コンテンツへつながるリンクの配置画面。
創業から今日までのグッドパッチストーリーが記されています。テキストのリンクは、この先に待ち受ける各コンテンツと連動

ナレーションからアプリ開発まで。AIフル活用のコンテンツ群

──冒頭だけでも見どころが詰まっていますが、創業15周年記念サイト全体の構成を教えてください。

太田 構成自体はシンプルです。長い1ページに対して、ギャラリーページが加わるくらいのコンパクトな構成です。

スクロールに連動し、背景全体が布のように丸められて次の画面へと切り替わるユニークな演出。
ファーストビューの背景を布に見立て、ぱっちーが背景全体を丸めて運び去ろうとしている……

──上から順番に見ていくと、次に「グッドパッチ創業15周年コンセプトムービー」が用意されていますよね。

太田 「グッドパッチが歩んだ15年」をぐっと詰め込んだ映像です。素材は半分近くAIで用意しながら、画としてまとめ上げるのはデザイナーの手で、映像はアニメーションデザイナーの手でしっかりとつくり込んでいきました。ここで特に強調したいのが、ナレーションも含めてAIで制作した点です。「AIでできることなら、すべてやってしまおう」と、むしろ積極的に用いています。SNSのショート動画などでよく耳にするような音声をつくって、他にもAIの技術をこれでもかと詰め込んで、表現や内容、つくり方そのものも含めて、テーマである「Chaos」を表現しています。

「グッドパッチ創業15周年コンセプトムービー」のキービジュアル
15年の軌跡とカオスが凝縮された、コンセプトムービーのキービジュアル
創業から未来までの軌跡を描く、コンセプトムービーの再生画面。
創業から未来へと向かうストーリーを1分少々に凝縮した、コンセプトムービー再生中の1場面より

──次に待ち構えている「Over 30 AI Apps Gallery」が、またまたユニークですよね。

太田 冒頭で触れた、グッドパッチの社員のみなさんがClaudeで自作したAIアプリをギャラリー化したものです。この取り組み自体が斬新ですし、率直に面白いですよね。土屋代表が社内に大号令をかけて、実際に280件以上のアプリがたまっていました。「数多くのアプリが生まれているので、ギャラリー化して公開しましょう」と提案して、つくらせていただいたコンテンツです。

社内自作AIアプリのギャラリーコーナーを示す、「Over 30 AI Apps Gallery」セクションのトップ画面。
グッドパッチ社員がClaudeで自作したAIアプリのギャラリーコーナー「Over 30 AI Apps Gallery」のトップ画面

太田 実際には非公開のものがありますし、公開可能な状態に仕上げられた40ほどのアプリを公開となりました。フルAIで構築されたサービスが、ここに一挙に掲載されています。

社内自作AIアプリの中から特定の1つを選び、詳細な説明ページを表示している画面。
公開可能な約40のアプリから、任意の1つを選択した詳細ページ

──アプリが多数並んでいて、圧巻ですね。

太田 こうした取り組み自体が、グッドパッチさんの「Charge, Chaos」を体現していると思います。

対談動画から、オリジナルキャラクターの誕生まで

──土屋代表がホストとなって登場する対談動画コンテンツもあります。

太田 はい、こちらは3編あって、いずれも見ごたえのある動画ばかりです。これらの動画自体は、グッドパッチさんにご用意いただいています。

青井浩氏と土屋尚史氏の対談動画「01」の開始を示す、セクションのトップ画面。
最初に、丸井グループCEO・青井浩さんを迎えた対談動画「01」が用意されています

──続いて、オリジナルキャラクター「ぱっちー」についての紹介パートもあります。

太田 本プロジェクトで当初完全に予定がなかったのが、この「ぱっちー」とゲームです。ぱっちーについては、本サイト制作のさなか、土屋代表の「キャラ、つくりたいんですよね」という一言から、私たちが自主提案をしました。予定外でしたが、覚悟を決めて「極限まで。やりたいと思ったのなら、やろう!」となりました。

オフィシャルキャラクター「ぱっちー」の紹介パートを示す、セクションのトップ画面。
グッドパッチ・土屋代表の一言をきっかけに、FunTechが自主提案したオリジナルキャラクター「ぱっちー」の紹介セクション
「ぱっちー」のキービジュアル
「ぱっちー」のキービジュアル

──予定になかった2つのキーコンテンツ(キャラクター・ゲーム)の対応があるなかで、動画、キャラクター、後ほどうかがうゲームの実装までもある。まさに、短期間で一気に詰め込んだ分、サイト全体の迫力につながっています。

太田 特にBtoB企業で、キャラクターをプロモーションやブランディングで活かしながら、さらに成功している事例は決して多くないと思うんです。そこへの挑戦ができたことが光栄でしたし、嬉しいことでした。ちなみに、今後のぱっちーの動向は、私たちもイチファンとして見守りたいと思っています。

年表がゲームに?! なぜゲームまで用意したのか

──目白押しの象徴の1つが、ゲームですよね。

太田 はい(笑)。どのコンテンツ、どの場面も体験してほしいのですが、特にと言われれば「Goodpatch’s 15-Years Chaos Journey」は外せません。可能であれば、ぜひ音声をオンにして体験してください。ゲームの実装も、他の場面と同様、私やデザイナーなど非エンジニアチームがエンジニアの手を借りることなく、つくりきっています。体験中のゲームの操作感を味わってほしいですし、きっと音の気持ちよさも感じていただけるはずです

「Goodpatch’s 15-Years Chaos Journey」のキービジュアル。
非エンジニアチームが手がけたゲームコンテンツ「Goodpatch’s 15-Years Chaos Journey」のキービジュアル
「Goodpatch’s 15-Years Chaos Journey」のクイズプレイ中の画面。
音声の演出とともに本格的なクイズゲームが体験可能。画面は、ゲームプレイ中の様子。
推奨は、音声オン状態でのゲーム体験です

──なぜゲームだったのでしょうか?

太田 もともと、このエリアで「15周年をまとめた年表のようなものを提供する」という方向性は決まっていました。ただ一般的な感覚として、企業の年表を出しても興味が持たれづらいですよね? その企業にとっては大事なコンテンツではあっても、です。

年表やその延長線上の表現だけではなく、15年の歴史そのものを体験してもらえるにはどうしたらいいか? そこでたどりついたのがゲームです。「AIを使えばゲームをつくれるのなら、じゃあつくろう!」と。

──たしかにAIによって可能だったのかもしれません。一方で、AIを使っても「本当にここまでのことができるのか?」とも思います。

太田 グッドパッチさんと当初から共通認識として持ってきたのが、起爆剤になるものをつくりたい、でした。グッドパッチさんが上場から5年経過して、次の5年を見据えたとき、同時にそれは創業20周年に向けてにもなります。AI時代の今を最大の機会と捉え、「大きな進化を遂げよう!」という強い姿勢を示したかったのです。こうした目白押しのクリエイティブを通して表現できているのではないか、と思っています。

AIを活かした「圧倒的なクリエイティブ」を実現する

──最後に、今回のプロジェクトを経て見えてきたFunTechの展望をお聞かせください!

太田 AI活用については、AIで効率化できるところは効率化しながら、その分、生まれた時間をすべて「つくり込み」に注ぎたいですね。どこにも負けない熱量を携えながら案件に取り組むことこそが、私たちの最大の武器であり強みだからです。今回実践できたこの姿勢を、今後のあらゆるプロジェクトにも貫けるようにしたいです。

本案件は、AIを用いない従来的なアプローチであれば実装だけで半年以上はかかったでしょう。見方を変えると、半年以上かかっていたことを3カ月でできるのなら、残りの3カ月をかけてさらにすごいものがつくれる環境が、今すでにあるのです。私たちは、手数をかけたり品質を限界まで引き上げていくことにこそAIを活用し、これからも世の中を驚かせるクリエイティブを生み出し続けていきます。

WD Editor’s Eye|編集者の視点

怒涛、圧巻のクリエイティブ。そしてフルAI実装と言いきる潔さ。これまでに取り上げてきた2サイト(コーポレートサイトと15周年サイト)からは、新世代の勢い(波)を痛感しました。FunTech太田代表が吐露した「やりきった」という言葉の奥に何が隠されているのか。グッドパッチとFunTechが突き進み、切り拓こうとする制作の未来から、これからからも目が離せません。

本プロジェクトを手がけたのは……

FunTech CEO 太田義孝さんのプロフィール写真
FunTechコーポレートロゴ

FunTech株式会社(ファンテック)

2016年5月創業。「スーパークラフト&ブランディングカンパニー」を掲げ、戦略設計から、Webデザイン、フロントエンド実装、モーション・3D表現、映像制作までを自社チームで手がけるデジタルクリエイティブ制作会社。東京・渋谷を拠点とする。Awwwards Site of the Day、CSS Design Awards Website of the Day など、国内外のアワードでの受賞多数。

今回は、FunTech代表取締役CEOの太田義孝さん(写真)がインタビューに応じました。

Title

Goodpatch 15th Anniversary

Credit

Client:株式会社グッドパッチ
#15周年サイト
Strategic Planner、Concept Design:太田義孝、松本健佑/CD、AD:太田義孝/Concept Copy Writing:松本健佑/Design:仮屋佑哉/Frontend Developer、Motion Design:橋本卓磨、城倉禄

#15周年コンセプトムービー
CD、AD:松本健佑、太田義孝/Design:仮屋佑哉/Video Production:近藤尚幸

#キャラクターデザイン
CD、AD:松本健佑/Character Design:堀野絢平/3D Modeling:Luis Antonio Bermúdez González/Character Animation:ワカメケイナ

#15周年サイト内ミニゲーム
CD、Game Design、Development:太田義孝/Game Asset Design:仮屋佑哉

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取材・文:Web Designing編集部

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