Webエンジニアになろう! 第5回 Webエンジニアが知っておきたい税金・保険の話

「Webエンジニアになろう!」は今回が最終回。本連載では、Webエンジニアの「働き方」として、個人事業主や法人化などについても紹介しました。どんな働き方を選ぶかは、自分のやりたいことや将来などを考えることも重要ですが、切っても切り離せないのが税金や保険といった「お金」の話です。
最後に、お金についての最低限の話もしっかり知っておきましょう。

目次

個人にかかわるお金

所得税

私たちが支払う税金の中で、最も身近な税金です。「所得」とは、収入から各種経費を差し引いた金額のこと。正社員や契約社員の場合は、給与を受け取るときにあらかじめ所得税を会社が預かって、残った金額が支払われます。

所得税には、扶養家族がいれば「扶養控除」、医療費がかかっていれば「医療費控除」など、多くの控除(所得から差し引ける金額)があるため、本来はこれらを差し引かなければなりません。
そこで、毎年年末に「年末調整」という手続きを雇用されている会社に対して行い、ここで各種控除などを申告することで、会社から預かりすぎた所得税を返してもらうことができます。これを「還付」といいます。
個人事業主の場合は、所得税を納める手段が異なります。個人事業主の場合、毎年3月までに前年の1月から12月までの所得を、自分で申告をして所得税を納めなければなりません。この手続きを「確定申告」といいます(個人事業主のほか、家賃収入などがある場合や副業などで、複数の箇所から給与を受け取っている場合なども確定申告が必要です)。
毎年3月の確定申告の時期が近づいてくると、フリーランスの方で申告書類の書き方や領収書などの整理などで、かなりの時間がとられてしまい、仕事の忙しさと合わせて阿鼻叫喚になっている場面をよく見かけます。
日頃から、レシートや領収書を整理しておいたり、できるだけ早めに確定申告の準備を進めていきましょう。

累進課税

所得税の特徴は「累進課税」と呼ばれるしくみで、これは所得の金額に応じて税率が変化するという複雑なしくみです。

2024年現在の税率は、表の通りで最初は5%から始まって、900万円以上で33%、4,000万円以上になると、実に所得の45%を所得税として納税しなければなりません。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
※出典:国税庁 No.2260 所得税の税率(最新の税率表は、以下Webページでご確認ください)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm


この累進課税が、個人事業主のまま収入が増えていくと所得税がどんどん増えていってしまう原因になります。仕事が軌道に乗って収入が増えてきたら、「法人化」を考えるタイミングなのかもしれません。

法人にかかわるお金

法人税

会社(法人)が支払うべき基本となる税金。個人でいう所得税に当たるものです。

「法人にすると税金が安くなる」とよく言われますが、これは先の通り所得税が累進課税で、収入が増えると所得税額がどんどん増えてしまうのに対し、法人税は所得税よりも税率が低くなる場合が多いためです。

先の通り、同じ900万円の所得があった場合、所得税だと33%なのに対して、法人税の場合は20%程度で収まる場合が多いです。そこで、よく言われているのが「年収1,000万円を超えたら法人化」というもの。 1,000万円を超えると、第2回でご紹介したインボイス制度に関わらず消費税の納税義務も発生するため、それもあって1,000万円というのがボーダーラインになっています。
ただし、安易に法人化をしてしまうと税金が安くなる代わりに、そのほかの部分でさまざまな費用が発生する場合もあります。それぞれ紹介しましょう。

社会保険

法人が加入する年金・保険制度で、法人には加入義務があります。

法人税の方が所得税よりも税率が安くなるからといって、安易に「法人成り」をしてはいけません。「保険」と「年金」のこともしっかり考えておかないと、負担が大きく増えてしまう場合もあります。
先に紹介したとおり、個人事業主の場合、保険と年金はそれぞれ「国民健康保険」と「国民年金」に加入します。しかし、法人化をした場合は「社会保険」に会社として加入する必要があります。
「社会保険」とは、健康保険、介護保険、厚生年金保険と労働保険、雇用保険を組み合わせた総称で、社員と会社で負担をします。この「会社で負担をしている」という部分が落とし穴。 自分が正社員や契約社員で、会社に雇われている身だった場合は、給与から天引きされている保険料しか見えていませんが、実は社会保険はそれと同じくらいの金額を会社側が負担しているのです。
そして、法人化をした場合は当然ながらその負担は、「自分の会社」が負担しなければなりません。個人事業主の頃と比べると、この社会保険の負担額が非常に大きくなってしまいます。

安易な法人化はNG! 法人化の前に知っておくべき注意点

決算手続きの落とし穴

さらに、法人になると税務署に提出する確定申告の書類は個人事業主のそれとは全く異なり、かなり複雑な「決算書」という書類群になります。
個人事業主の確定申告は、自分自身で作成して申告することもできますが、決算書となると「税理士」の力を借りなければ、とても自分で作れるような書類ではありません。
この税理士に決算書を作ってもらうための費用が、年間で数十万円程度必要となります。さらに、社会保険周りの手続きに社会保険労務士、会社の各種届け出などに行政書士など「士業」の力を借りる場面が多くあり、これらの費用も個人事業主の時よりは負担が増えていきます。

役員報酬の落とし穴

「会社を作る」といった場合、自分の所有物になるという感覚を持つかもしれません。しかし、実際には「法人」という言葉に「人」という言葉が入っているとおり、自分とは「別の人格を増やす」という感覚になります。
例えば、自分で仕事をして得た売り上げを会社の売り上げとした場合、そこで入ってきたお金はあくまで「法人」のものであって、自分が自由にできるお金ではありません。下手をすると「横領」として、罪に問われることすらあります。
会社に入った売り上げを、自分のものにするには「給与」または「役員報酬」という形で、法人から自分に払ってもらって、初めて自分のお金となります。
そして、やっかいなのがこの「役員報酬」という制度です。例えば、1人で会社を立ち上げる場合、自分は「代表取締役」という役職になります。いわゆる「社長」のことです。
この、代表取締役という役職は「役員」という役職の1つで、会社からは「役員報酬」という形で毎月の支払いを受けることができます。
しかしこの役員報酬、1度決めると1年間は変更することができず、会社の売り上げがあろうとなかろうと、一定額しかもらうことができません(上場企業の場合は、業績に連動した役員報酬にすることもできますが、非上場企業には認められていません)。また賞与、いわゆるボーナスも簡単にはもらうことができません。これは、役員が節税のためだけに会社を自由に操作できないようにするため。
そのため、どんなに売り上げが上がっても、役員報酬を低い金額に設定してしまったために、会社にお金が残っているのに手元に移すことができないとか、逆に会社の売り上げが少ないのに、役員報酬を高く設定してしまい、会社のお金が常にないといった具合に、資金繰りに困ることもあります。

なぜ法人化するの?

さてここまで聞いて、最初の「税金が安くなる」というメリットは吹っ飛んでしまったのではないでしょうか? それは正しいです。
「税金が安くなるから」などという安易な理由で、法人化を検討するべきではありません。では、どんなときに法人化をするのが良いのでしょう?

社員を雇って一緒に事業をしていきたい

もし、エンジニアの仲間を集めて、大きな仕事ができるようにしたいとか、一緒に仕事をしていきたいなどの場合は、法人化をしてメンバーとして迎え入れると良いでしょう。

大企業・官公庁と取引をしたい

仕事の規模によっては、個人事業主のままでは契約ができないというような仕事も出てきます。そんなときに法人化をして、その企業と取引ができるようにすることがあります。

夫婦や家族で、節税をしたい

本書では詳しく紹介しませんが、法人化をする場合でも例えば配偶者(自分の妻または夫)を代表取締役にして、自分は社員とするとか、自分の両親を役員にするなど、さまざまな手段を使うことで、節税につなげられることがあります。
安易には判断せず、少しずつ「お金」や「税金」に対する知識を身につけながら、自分に合ったやり方を見つけていくと良いでしょう。

※本記事は『Webエンジニアを育てる学校』の本文を一部引用・再編集しています。

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