低予算で大きな効果を生む、リサーチ&リアクション

アンケートの目的は「仮説検証」「お客様への啓発」「広告」

愛犬・愛猫用の食事療法食やサプリメント、動物用医薬品などを扱い、自社サイト、Amazon、Yahoo!ショッピング、楽天市場などさまざまなプラットフォームでECビジネスを展開するペットゴー(petgo)。

2005年にECサイトをオープンした同社がメールを通じたアンケート調査をはじめたのは、2011年。以来、オンラインアンケートツールの「SurveyMonkey」を使い、1,000回以上ものアンケートを実施しています。現在は犬猫それぞれのユーザー別や、幼犬・成犬・老犬といったペットのライフステージ別、過去に購入した商品、商品到着後アンケートなど、さまざまなタイミング、セグメントに分けて、月に2~6回配信し、1,000人以上から回答が得られることも少なくありません。代表取締役社長の黒澤弘さんは、アンケートの目的は大きく「仮説検証」「お客様への啓発」「広告」の大きく3種類に分けられると言います。

「1つは、ある商品やサービスにニーズがあるのではないかという『仮説』を立てて、実際に開発やサービスを始める前に、そのニーズを『検証』するため。2つ目の『お客様への啓発』とは、例えば、毎年春先に実施している『ノミ・マダニ対策』に関するアンケートなど、お客様の実態を把握できると同時に、お客様にそういう時期が来たとお知らせして、商品の販促にもつなげる目的。3つ目の『広告』とは、『ペットゴー』の認知度調査などを外部に依頼してオープンなリサーチを行うことで、広くブランドやサービスを知っていただきたいという目的があります」(黒澤さん)

主なアンケート方法は自社サイトや各ECプラットフォームを通じたメールで実施するほか、「広告」の目的も担ったオープンな調査は外部に依頼。グループインタビューやDMによるサンプル送付なども行っていますが、ビジネスとの相性の良さから、メールマガジンを通じたアンケートが調査の中心になっています。

 

アンケートそのものをビジネスに活用

当初は自社のために始めたアンケート。しかし39万人もの会員を擁するECサイトに成長した今は、アンケートそのものもビジネスに成長しています。

同社ではペットの飼い主の情報やペットに関する多様なデータを「ペットデータ」として活用し、ペットフードメーカーやペット関連団体からのリクエストに応じたアンケートも実施。それらをフィードバックすると同時に、改善策なども提案することで、アンケートそのものがビジネスに大きく貢献しています。

「エンドユーザーである犬や猫の“声”を直接聞けるわけではないため、ペット業界はメーカーとユーザーとの距離が、ほかのBtoCビジネスと比較して遠いように感じます。だからこそ、私たちのようなEC(小売)がお客様の声を聞き、それをビジネスにも活かしやすい側面もあると思います」(黒澤さん)

ペットゴーでは、実際にどのようなフローで調査を行い、活用しているのでしょうか。アンケート作成のコツと回答の活用方法を次ページで具体的に見ていきましょう。

 

アンケート作成のフロー

現在、同社のスタッフは約50名。大規模なマーケティングチームがいるわけではなく、アンケートはすべて社内で作成しています。

「アンケートは知りたいと思った人やチームが、自分たち自身でつくっています。配送時の梱包についてお客様の声を聞きたければ、物流担当のチーム。自社開発の商品に関する仮説検証や、アプリの使い勝手について意見を聞きたければ、その担当チームがアンケートをつくる仕組みです」(黒澤さん)

アンケート作成は次の手順で行っています。

①検証したい内容や配布セグメントなどを記載したアンケート内容をテキストで作成

② 社内で回覧→修正

③修正を反映したアンケートを「Survey Monkey」上で社内公開

④ 社内でアンケートに回答→修正

⑤ 修正反映→ユーザーに配信

ポイントは実際のツールで作る前に、テキストベースで作ること。これによって「目的や検証したい内容をしっかり把握できる」と黒澤さんは言います。

 

調査結果の分析と活用

アンケートや調査は実施するだけでは意味がありません。ペットゴーでは回答結果を見ながら、担当部署や取引先などとディスカッションし、調査結果にさまざまな方法で“リアクション”しています。

例えば配送に使用するダンボール箱。当初、同社では「ペットを飼っていることを知られたくない」というアンケートの声を受けて、ロゴなしの“目隠し梱包“を用意。その後、「すべてのダンボールにロゴを入れていいかどうか」のアンケートも実施し、現在はロゴありダンボールに統一しています。

「アンケートの結果を受けて、できることはお客様に返していくことが大事。サービスや商品を改善したら、メールやプレスリリースなどでご報告する。お客様に知らせることで、さらなる『啓発』や『商品販促』につながりますし、自社サービスにより関心を持っていただくことができると考えています」(黒澤さん)

 

調査に大きなコストは不要

中小企業にとっては、リサーチにかける費用も重要ですが、ペットゴーではある考え方に基づいています。

「リサーチに限らず、予算に関しては『バックドア』があるかどうかを重視しています。失敗しても後ろに戻ることができるのか。つまり、経営に致命傷とならないかどうかということです。もしリサーチのために何百万もするシステムをつくってしまったら、失敗が大きな損失に直結します。でも、低コストのツールなら、うまくいかなければやめればいいだけです。そこが予算に対する考え方のベースになっています」」(黒澤さん)

「わからないことはお客様に聞く」という風土が社内に浸透しているという黒澤さん。これはBtoC、BtoBを問わず、あらゆるビジネスに通じるのではと話します。

「調査やリサーチはどんなビジネスにも使える手法だと思います。また、フリーコメント欄などで褒めていただけることもあり、それは大きなモチベーションにもなります。まずは他社のアンケートを参考に、始めてみるといいのではないでしょうか」(黒澤さん)

試行錯誤を繰り返しながらアンケートを継続し、しっかりとビジネスに活用してきたペットゴー。その手法はさまざまな企業が参考にできそうです。

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