「売れてるECサイト」は何が違うのか? その理由3つの側面から考える(4/4)●特集「EC再強化」

Fliction 障壁を取り除きシームレスなサービスを作れ

いまではスマートフォン対応が当たり前の時代になったが、それでも、まともな対応がなされていないサイトは少なくない。このような障壁を「Fliction(障害)」と呼ぶ。メールで問い合わせをしたいのに、サイトのどこを見ても問い合わせフォームが見当たらないサイトもその一つ。こういったところから、顧客は不信感を抱き、逃げて行ってしまう。

スマートフォンからアクセスしても、PCからでも、電話からでも、どんな方法でアクセスしても、同じサービスを提供できるか(02)。どれか一つだけ窓口があればよいと言う時代はもう終わっているのだ。

 

01_信頼ある関係性を構築するための5つの要素

 

02_顧客にとってFlictionのないサービスを提供する

Flictionを取り除いて、360度どこからでもシームレスに店と顧客とを結び、サービスを提供することが大事になる。

 

 

FAST 速さが信頼を生む様子を見ている暇はない

アマゾンが翌日に届けるというサービスを始めた当初、「気持ち悪い」という声が上がった。そんなに速いなんておかしい、と感じる人がいたのだ。しかし、今はそんなことはない。世の中はより高速になっている。

ECショップへの「問い合わせ」を考えてみよう。ある超人気ECサイトの平均回答時間は、数年前は「26分」だったが、現在は「5分」にまで縮まった。さらに一部時間帯はチャット化することでリアルタイムにしているという。いまやECサイトもリアルタイム接客が求められているのだ。そして、その速さは店の信用に直結する。商品が届くのも、問い合わせに対するスピードも「FAST」を心がけたい。

 

Authority 権威付けは苦労話とセットにする

ECショップの「権威付け」は常套手段。EC黎明期から行われてきた手法である。「◯◯受賞」とか、「ランキング連続1位」「雑誌に掲載されました!」といったものがそれにあたる(03)。こういった権威付けは以前は効果があったのだが、今は「だから?」と思われてしまうことのほうが多い。大事なのはやり方だ。

例えば、「東大出身」「フェラーリに乗っている」「MBA取得」「インターハイ優勝」「高収入」、初対面の人物が、こんな経歴を語り出したらあなたはどう思うだろう。「すごい」と思う一方で、「嫌味だな‥‥」とも感じるのは私だけではないだろう。ただし、こういった経歴で共感を呼び起こす方法が一つだけある。それはバックオフィス(裏側の仕組み)を紹介し、苦労話を付け加えることだ。この経歴が、苦しい人生経験の上に成り立っているとわかると、印象はガラリと変わるのだ。ECサイトでも「ランキング連続1位」の背後にこんなストーリーがあったらどう感じるだろう。

「農家のご主人様には何度も断られて‥‥。それが、ある日スーツを脱ぎ捨て、作業を手伝わせてもらって‥‥はじめてこの野菜を売ることができるようになったんです」

「中国に工場を建て、一生懸命事業を立ち上げてきました。途中、裏切られることもあったのですが、いまでは現地のスタッフと国境を越えたチームが生まれ、品質が一気に向上しました」。印象はガラリと変わるはずだ。

ただし、ウソはダメだ。今の高速コミュニケーション時代ではあっという間にバレてしまう。情報の透明化が大事なのだ。

 

03_「権威付け」は慎重に扱うこと

「◯◯受賞」「ランキング連続1位」「雑誌に掲載されました!」といった権威付けは、やり過ぎるとかえって嫌味に見えることがある。扱いは慎重に。

 

Fresh 新鮮な情報には価値がある

高速コミュニケーションの時代、価値があるのはフレッシュな情報だけだ。昔のネタに関心を持つ人はもういない、そう考えるべきだろう。例えば「売上ランキング」。顧客が価値を感じるのは、今のリアルタイムなランキング情報だけ。「店長おすすめの商品」も、「売上ナンバーワン商品」も、顧客はそれがいかにフレッシュな情報かを厳しい目線で見ている。「お客様の声」「レビュー」「レイティング」、そしてFacebookなどのソーシャルメディアもまた、顧客がフレッシュな情報を求めてチェックする場所だ(04)。

中国では、ECでの購入前に、ソーシャルメディアを確認する人が95%を超えており、日本でも50%以上だとするデータもある。そこでいかに新鮮な情報を展開するか。顧客はそこを重視していることを忘れてはならない。

 

04_日付から信頼感が生まれる

顧客が重視しているのは、サイトが今も動いているか、新鮮な状態かだ。どんなに良くできたサイトでも古いようでは信頼感は生まれない。

 

Fun 楽しさを作り出せ。その気分は必ずサイトの向こうに伝わる

最近は「オウンドメディア」に取り組むECサイトが増えている。ECサイトの定番であるメルマガもその一つと言えるだろう。オウンドメディアで難しいのは長続きさせること。作り手が、モチベーションを維持するのが難しいからだ。

ではモチベーションを維持するいい方法はないのかというと一つある。顧客から寄せられた「評価する声」を皆で共有するのだ。よく「不満」や「クレーム」を共有する企業があるが、これはスタッフにとって、苦痛でしかない。もちろん、クレームや問い合わせにはスピード感を持って誠実に対応する必要があるし、その原因を追求して対策を取る必要はある。しかしそれは事務的にこなせばよい。

大切なのはお客様から寄せられた「褒め言葉」。これを集めて社内で共有すると、不思議なほどに「Fun」、楽しい気分が広がって、モチベーションが上がっていく。名前は控えるが、ある成功を収めたECサイトは、本部の広い玄関に、顧客からのポジティブな声をプリントし、ズラリと並べている。その数なんと5,000枚。そこには心が沸き立つような感動がある。

顧客の声が集まりやすいECサイト。その特性を、うまく使って「Fun」を生みだそう。

 

Text:川連一豊
フォースター株式会社代表取締役、ジャパンEコマースコンサルタント協会代表理事。1999年よりEコマースを始め、倍々で業績を伸ばす。楽天市場で講師等を手掛けた後独立。これまで1万社以上の企業、モール、ECサイトにアドバイスや取引実績がある。
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