多店舗管理に煩雑な作業を自動化し、EC事業に「余裕」を生み出す●特集「ECサイト、次に打つべき6つの施策」

ネクストエンジン

ハミィが開発した多店舗展開ツール。商品・在庫・受注の各管理機能がある。楽天店舗ユーザーに多く使われており、月額1万円からの安価な設定とサポートが充実している

Hameeストラップヤ

HameeはECショップも運営する他、卸売事業やオリジナル製品の開発も行っている。ネクストエンジンの開発にはその経験を注ぎ込んでいるという

“痛い目”が作り上げたサービス

「ネクストエンジン」はECなどの小売事業者や向けに開発された「多店舗展開」のためのツールだ。楽天市場、Yahoo!ショッピング、アマゾンなど複数のネットショップやモールを横断しての受注や在庫の管理を一括で行うことができるほか、それらに伴って発生する発注業務や顧客の管理、メール発送など、ECショップの運営に欠かせぬさまざまな機能を揃えたクラウド型のサービスだ。

最近、EC市場の規模拡大に伴って、注目を集めるようになった多店舗展開ツール。その中でもネクストエンジンは、他にはない視点からサービスを構築し、多くの事業者から高い評価を得ているのだが、その特色をよく表すのが、このサービスの「来歴」だ。

ネクストエンジンの開発と運用に携わる、ハミィの鈴木淳也さんは、同社は「そもそもECショップだった」と話す。

「ハミィは、ネクストエンジンのようなサービス事業を始めるずっと以前から、『ハミィ ストラップヤ』をはじめとした、携帯ストラップなどのグッズを販売するECショップを運営してきました。その事業が大きく発展し、店舗を増やしていったのが、ガラケーが全盛だった10数年前のことです。楽天市場にはじまり、アマゾンs、ビッダーズ、さらには海外向けショップも運営するようになっていったんですね。売り上げを上げるためには、なんといっても、店舗を増やすというのが早道でしたから。そうしてどんどんと手を広げていった結果、在庫管理の難しさに直面したわけです」

当時「世界一の品揃え」をうたっていたストラップヤは、数百カ所もの取引先から取り寄せた小さなストラップを扱う極端な「多品種展開」をしていた。それを複数の店舗に振り分けながら出荷対応をしていたのだ。

「当初はExcelを使って、すべて手入力で管理していました。PCの画面を睨みながら、モールごとの異なる管理画面を操作して出荷していたのですが、ある頃から、注文がどんな状態なのか、品物が実際に倉庫にあるのかがわからなくなるという事態が多発するようになったんです。各店舗向けの在庫の割り振りがうまくいかない、といったことも日常茶飯事でした。

そうなると、当然ながらミスが増えます。ミスが増えるとトラブルやクレームが増える。ECには在庫管理以外にやらないといけないことがたくさんあるのに、そちらにまったく手をかけられなくなったんです」

その結果、注文は増えているのに売り上げが落ち、「一部店舗の閉店に追い込まれたこともあった」という。そこで痛感したのが「在庫管理の重要性」。鈴木さんはその課題の克服が、トラブルを減らすだけにとどまらず、事業を成長させる原動力になると考えたという。

「ミスを減らそうというマイナスを埋める発想ではなく、本来ECショップが力を入れるべき接客であったり、品揃えの充実、さらには商品開発といったところにエネルギーを使えるようにしよう、と考えたんです。やっぱり、こういう商売をする以上、お客様に『神対応だ!』なんて言われるようにしたいじゃないですか」

 

注文・店舗が増えても手間は増えない

当初はさまざまなツールを使ってみたという鈴木さんだが、どれを使っても「余裕は生まれなかった」と話す。

「どのツールも工夫があってわかりやすく、在庫状況や注文の様子が見やすくなるのですが、結局は注文数が増えて、お店の数が増えるのに比例して手間が増えていくんですよ。商品数が一つ、店舗の数も一つというならいいんですが、これが二つ、三つと増えていくにしたがって作業する量が増えてしまう。なんだかんだと人手をかけるしかなくなってしまうのです。仕方ないので自分たちでツールを作ろう、と」

そうして生まれたネクストエンジンでこだわったのが、徹底した機能の「自動化」だ。

「ネクストエンジンは、注文が入ってきたら『その商品をそのまま出荷していいのか』をシステムが自ら判断する仕組みになっています。在庫があるか、支払い手続きは行われているかといった項目はもちろん、配送先の住所は郵便番号と合致しているかといった細かな部分まで、そのチェック項目は我々の“経験”をもとに、数十項目用意されています」

各店舗からの注文や在庫の状況を一画面で管理できる

受注状態から販売実績、商品の在庫状況などを一括で管理できる画面。すべての店舗の状況を合算した状態で表示される。多くの作業を自動化できるため、注文から出荷まで、「確認するだけで良い」ところまで持っていくことも可能だという

その自動化の成果は、自社サイトでの検証を踏まえて極めて高い精度まできており、現状でも「各モールからの注文のほとんどを特に何もせずに」処理できるようになっているという。

アプリによる多彩な機能拡張

自動化に加えてもう一つの大きな特徴がAPIを公開して機能のカスタマイズを促すと同時に、追加された機能をアプリの形で公開できるようにした点だ。すでに数多くのアプリがリリースされており、同社のWebサイトに公開されている。

アプリでヤフオク対応(左)

ネクストエンジンは、専用のアプリを使うことで機能を追加できる。例えばヤフオクとの連携用アプリ。出品から注文取り込み、再出品、評価などの手続きが自動化される

領収書も自動生成(中)

こちらもアプリの一つ。ネクストエンジンの受注伝票から電子領収書を自動生成してくれるので、面倒の領収書作成も自動化できる

アプリはカスタムが可能(右)

独特な処理を行っている、あるいは小さなモールに出店しているといった場合にはカスタムアプリの作成を依頼することもできるようになっている

「現在すでに、大手以外の小さなモールの管理を可能にするとか、自動で領収書の発行をしたり、さらには物流との連携を図ったりといったアプリがリリースされています。また、アプリ経由で独自のサービスを提供する、といった事例も登場してきています」

すでにリリースされているネクストエンジンのアプリの中でも、大きな話題を呼んだのが倉庫物流を提供する「オープンロジ」(→P060参照)との連携を実現するアプリだ。

「このアプリを使うと、注文から出荷まで、自動的にデータが流れ、ほとんど何もせずに、出荷まで行われるという仕組みを作ることができます。我々が考えていた自動化をさらに広げるものだと言えるかと思います」

在庫振り分けもいったん設定すればあとは自動で

それぞれのモールの各店舗ごとに在庫の振り分けを行う画面。例えば楽天に多めに、とか本店には常に在庫を残しておく、といった設定ができる。いったん設定をすればあとは自動的に調整を行ってくれる。ネクストエンジンではこういったショップの事情に合わせた細かな設定項目が数十個用意されている。いずれもいったん設定してしまえば自動化してしまうことが可能だ

自動化で余裕を生み出す

鈴木さんは、今後自動化の精度をさらに高めるため、人工知能の研究なども取り入れた開発を進めているというが、その理想は高い。

「導入の検討をいただいているお客様にネクストエンジンの管理画面を紹介すると、『シンプルすぎる。もっといろいろと操作できるようにしてほしい』などと言われることがあるのですが、私としては管理画面はできるだけ少なく、可能であれば、なくなってしまう方がいいと思っています。通常の注文であれば、何も手をかけずとも出荷されていくような形です。そうなれば、難しい注文にじっくり対応し、商品を充実させる余裕が生まれるわけですから」

物流との連携も自動に

ネクストエンジンは、アプリを使った倉庫との連携も可能となっているが、その中でも物流アウトソーシングサービス「オープンロジ」との連携は、注文をボタン1つで倉庫へ一括出荷指示ができるようになるなど極めて先進的だ。両者のサービス構築の思想をうまく擦り合わせたことで実現したサービスだ。→レポート

大規模事業者から中小のECショップにも最適化

ところで、ネクストエンジンはどんなECショップに最適化されているのだろうか。まず大規模事業者はどうだろう。

「弊社は携帯アクセサリーのショップだけでなく、卸売もやっている関係で、日々の大量の注文に加え、数千個単位の注文が突然入ってくるといったケースもあるのですが、そのすべてをネクストエンジンで対応しています。その実績がありますので、大規模事業者にも安心して使っていただけると思います」

では小規模なECショップはどうだろうか。

「会社規模が小さい事業者様、たとえば楽天市場で一日数件というケースにも効果は大きいと思います。その規模ですと、担当しているのは一人とか二人だと思うのですが、ネスクトエンジンを使うと、その人数でも店舗数を増やしていくことができます。『うちは一店舗しかやりません』というショップさんでも、例えば『年末だけは3倍売れる』とか、『テレビで紹介されて注文が集中した』といった理由で、一気に注文が増加するケースもあると思います。そんな時ネクストエンジンを導入していれば、かつての我々のような『売り上げが上がっても儲けが出ない』などという最悪のケースを避けることができます。ネクストエンジンは、月額1万円から始められるサービスですので、そういった小規模の方にもぜひ活用していただきたいと思っています」

徹底した「現場目線」からできあがったネクストエンジンは、EC事業者を、商売の本質的なところへと戻してくれるサービスなのだ。

Hamee(株) 取締役 鈴木淳也

1979年生まれ。大学卒業後、独立系ICT企業で4年間受託開発に従事、「エンドユーザーの傍で仕事がしたい!」という思いで、携帯ストラップのECを中心に展開していたHamee(株)に1人目のエンジニアとして入社。ECの実務を経験しながら、社内向けの受発注在庫管理システムを構築し、「周りのEC事業者にも利用して貰いたい!」と考え、同システムを「ネクストエンジン」として事業化。約2,000社のユーザーを抱えるまでに成長

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