【コラム】300万円の広告費より大事なこと

今回のテーマはインターネット広告(ペイドメディア)。インターネット広告について私は専門家ではないので、語れることも少ないですが、一応昔、会社員時代は自社メディアのリスティング広告の運用をやっていて、月間300万円の広告費でコンバージョンをどれくらい上げられるかというのをやっていました。

当時は私が所属していた会社はいわゆるWeb制作会社で「ホームページ制作 大阪」などの検索キーワードでリスティング広告を出し、問い合わせを獲得してそこからセールスが営業に行って契約を決めてくるというスタイルでした。そこに月間300万円ものコストを掛けて必死に見込み客を獲得していました。たしかに間違ってはいないやり方ですが、私はもう少しやり方があるんじゃないかなと思っていました。要はお金を掛けないと自社を知ってもらえないということですから、お金が払えなくなった瞬間に見込み客は取れなくなり、会社は危なくなってしまいます。

前職でリスティング広告運用のノウハウを貯めた私ですが、その後グッドパッチを起業してからそのノウハウを一切使うことなく、まったく違う方法で顧客獲得をしていきました。それは自社を、当時まだ認知が薄かった「UIデザイン」という領域にフォーカスし、UIデザイン会社としてのブランドを確立していく方法でした。

当時のデザイン会社やWebデザインの会社は、長らく大きな差別化が難しい状況が続いていました。そこで私はUIデザインにフォーカスをし、UI以外やらないという姿勢を崩さずに大手の仕事だけではなくスタートアップとも仕事をして実績を積み上げていきました。その結果、日本のUIデザインの業界では先駆者のイメージが付き、多くの仕事の問い合わせが来るようになりました。

グッドパッチを創業して5年が経ちますが、デザイン部門の仕事を取るためにインターネット広告は一切使ったことはありません。すでに当時働いていた会社の規模以上になっていますが、300万円の広告を使って獲得していた以上の問い合わせ数をグッドパッチは毎月広告を使うことなく獲得しています。

やはり重要なのはマーケットを見極め、たとえ小さい範囲でもフォーカスをしてブランドを築くことが重要だと私は思います。

グッドパッチが設立された2011年、日本ではまだ「UIデザイン」という言葉が浸透していなかった時代から「UIデザインカンパニー」を掲げ、UIデザインに特化した姿勢を崩さずブランドを確立していきました。その甲斐あって、「UIデザインといえばグッドパッチ」というイメージが浸透し、今では多額の広告費用をかけずとも多くの仕事の問い合わせをいただくまでになりました

 

ナビゲーター:土屋尚史
(株)グッドパッチ代表取締役。1983年生まれ。Webディレクターとして働いた後、サンフランシスコに渡る。帰国後、2011年9月に(株)グッドパッチを設立し、UIデザインを強みにしたプロダクト開発で2015年にはベルリンに進出。グッドデザイン賞受賞の「Prott」も開発している。
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