決済の改善が売上拡大に直結する

希望する決済方法がないと離脱の原因に

ネットショッピングなどで使われる決済方法といえば、現在もクレジットカード・代引き・振り込みが大きな柱になっている。一方で、コンビニ後払い、キャリア決済、Amazonペイメントなどさまざまな形で多様化が進んでいることも確かだが、実際に利用されている決済方法としてはクレジットカードが7割近く、それ以外は数%ずつに留まる。

01 購入者が利用している決済方法

ネットショッピング利用者が使っている決済方法。全体で見ればクレジットカードが多いが、購入者の属性によって傾向は異なる。ニーズにあった方法を用意できているかどうか、考えてみよう 出展:ネットプロテクションズ調査(2014年)

しかし、従来どおりの決済方法を提供しているだけでは、売り上げの機会を逃している可能性があるという。例えば健康食品では代引きが、化粧品やアパレルではコンビニ払いが多いなど、商材にひもづく購入者の属性によって、決済に求められるニーズは異なっている。

「お客様はそれぞれ慣れ親しんだ方法を希望される傾向があります。アンケートによると、その決済方法が使えない場合は離脱してしまうという回答が4分の3にも上ります。いつも代引きを使っている人なら、代引きが使えない店舗ではカードや振り込みを使うのではなく、購入をあきらめたり、他の店舗に移動してしまうのです」(秋山 瞬氏)

決済の選択肢は、いわゆるカゴ落ちの大きな原因となっているのだ。しかし、店舗の方ではそこまで気が回っていないケースも少なくないという。

「店舗の方では、利用しているシステムに付随する決済方法から選択して導入されることが多いと思います。しかし一部には、その中からクレジットカードと代引きしか導入していないといったケースも見受けられます。そうした場合、代替になる店舗があればそちらに移ってしまうお客様がいる可能性がありますよ、とお伝えしています」(浅見 剛氏)

 

決済方法の見直しは売り上げ拡大の第一歩

ECで売り上げを伸ばすには複数のフェーズの取り組みがある。例えばWebサイトの作りの見直しやランディングページの改善、CRM活動、さらに広告・マーケティング施策などに日々取り組んでいる事業者も多いだろう。しかし、売り上げを考えるなら決済環境はそれらに優先して見直すべきポイントなのだ。

「カートシステムが適切なのか、決済方法が整っているのか、この2点が店舗の決済環境の基盤です。時間的なフェーズでいうと、ここが最初に取り組むべきところですね。売り上げを伸ばしたいという意識が強いと広告やマーケティングの方に注目しがちですが、お金をいただくECにとって基盤となる部分を多様化することで、一人でも多くのお客様のニーズを満たすことが、売り上げアップの第一歩になると思います」(浅見氏)

「訪問者のうちカートに商品を入れた人が10%、実際に購入した人がそのうちの2割だとすると、CVRは2%です。しかし、もし希望する決済方法がないために離脱してしまった人が全体の0.1%いた場合、それを決済方法の見直しによって取り込むことができれば、売り上げとしては5%アップすることになります」(秋山氏)

02 決済方法の整備が売り上げに直結する

コンバージョンが2%、希望する決済方法がないために離脱した人が0.1%だった場合を想定。 決済方法を増やすことでその0.1%の離脱を防げば、売り上げには5%アップの効果がある

訪問者の離脱はどの段階でも起こり得る。しかし決済段階での離脱は、商品に興味を持たなかったうちの0.1%ではなく、実際に購入する段階まで進んでいたうちの0.1%。コンバージョンに至ったはずの人たちだ。広告でいくら導入を増やしても、基盤が整っていなくては得られるはずの成果を失ってしまうことになる。最後の段階でカゴ落ちさせない決済環境を整えておくことが重要だ。

 

自社にあった決済ニーズを考えよう

カゴ落ちを防ぐために、多様化する決済方法をすべて網羅するべきかといえば、コストやシステム面から見ても現実的ではない。また、同じ決済方法も店舗によってあう場合・あわない場合がある。

「Amazonペイメントを導入すれば、Amazonユーザーには利便性が高いでしょう。しかし、Amazonにある商品を扱う店舗ならそれがAmazonへの流出につながってしまうことも想定されます。どの選択が最適かは、店舗によってそれぞれだと思っています」(浅見氏)

では、自社店舗にとって最適な方法をどのように考えていけば良いのだろうか。秋山氏は「商材」「顧客ターゲット」「注文方法」「販売手法」の4つを軸にした考え方を提案する。

03 決済方法のニーズを4つのカテゴリで考える

自社店舗を利用する顧客にとって、買いやすい決済方法とは何か。 4つのカテゴリそれぞれの視点から適した決済手法を当てはめて考えてみよう

まず商材と、それにひもづく顧客ターゲットについて、併せて考えてみよう。単価の高い家具・インテリアや、男性利用者の多いアウトドア用品などでは、クレジットカードの利用意向が高くなっている(04)。一方、先にも挙げたように利用者の年齢層が比較的高い健康食品、女性の多い化粧品・アパレル関係では、後払いが好まれる傾向がある。

注文方法については、デバイスや利用シーンから使いやすい方法を考えてみよう。

「スマートフォンでの購入シーンをイメージしてみてください。例えば外出先や電車の中で見つけた商品を買おうとした時、クレジットカードを取り出して番号を入力、という作業は避けたいですよね。その場合は追加の情報入力が必要なく、手早く完結できる後払いの相性が良いと言えます。スマートフォン利用者の多い店舗では、後払いの導入が売り上げアップにつながった例もあります」(秋山氏)

販売手法は、新規顧客が中心か、定期購入かといった販売の形態を指す。例えばお取り寄せやアウトレットなら試し買い・衝動買いが多いだろう。初回の購入にはカードの利用を避けるかもしれない。逆に食品や日用品を定期的に購入するなら、カードを登録して手間を省きたい。どんな顧客がどんな形で自社店舗を利用しているのか、決済と結びつけて考えることで最適な方法を見つけよう。

04 商材別に見た最も利用したい決済方法

商材別に見た最も利用したい決済方法のニーズ(一例)。多数派に注目するだけでなく、自社が提供中の決済方法でカバーできていないニーズがないか、検討してみよう 出展:ネットプロテクションズ調査(2014年)

 

コストについての考え方と業務効率化

新しい決済方法の導入は店舗にとって売り上げを得る手段となり得るが、他の方法と比べて手数料が高ければ導入を悩むところ。手数料負担は店舗にとって重いコストとなるのだろうか。

「例えば後払いの導入を勧めても、カード決済と比べて手数料の料率が厳しいという事業者さんもいらっしゃいます。しかし、その差額を広告費と考えてみるとどうでしょうか。導入することで、離脱していたはずの人をコンバージョンできたなら、広告で1件数千円かけて獲得するより非常に優秀だと言えるでしょう」(浅見氏)

また、コストは売り上げ金額に直接関わるものばかりではない。業務にかかる手間や管理ミスから生じる時間的物的ロスもそのひとつだ。

「弊社の『NP後払い』の場合は、請求書の送付・入金確認・督促を我々が請け負い、代金の未回収も保証されます。これらの業務をアウトソースすることを目的にNP後払いを導入されたケースもあります。また、コンビニ前払いや振り込みでは入金が確認できるまで在庫を保持し、確認後に出荷するといったステータス管理が必要ですが、後払いでは与信が通ればすぐに出荷が可能です」(秋山 瞬氏)

一部の業務効率化も併せて検討してみてもいいだろう。

 

ペルソナの行動特性に最適な決済を考えよう

EC事業者にとって、決済手法は店舗の基盤であり、売り上げに直結する課題だ。店舗運用の中で品揃えやページの構造を見直していくのと同じように、決済方法も変化に対応していかなくてはならない。

「商材もユーザーも決済手法も、5年前10年前と今とは違うし、この先の5年10年でまた変化していくでしょう。現在はあまり認知されていない方法が突然広がることも考えられます。事業者さんを支援する我々のような立場の者は常にそこをウォッチしていなくてはなりません。すべての方法を導入できなくても、ニーズや条件から考えて何をそろえておくべきか、結論は必ず出せると思っています」(浅見氏)

顧客のニーズに合わせた決済方法を見つけても、導入さえすればいいというわけではない。顧客にとってわかりやすい・使いやすい状態で提供できているかという点にも注意しよう。例えば、選択肢の見せ方ひとつでもコンバージョンに影響することがある。

「ある美容関連商品のランディングページの例ですが、当初、決済方法選択のプルダウンでデフォルトをクレジットカードにしてあったため、入力フォームが長くなっていました。それをコンビニ後払いに変えたところ、CVRが約1.25倍に向上しました(浅見氏)

05 決済画面の利便性向上でCVRアップも

商品カテゴリや売り方に応じて決済画面のフォームも最適化しよう。自社店舗で利用率の高い決済方法にあわせたり、利用率を半期・年次ごとに再点検するといったメンテナンスも重要

その場で衝動買いしてもらいたいという狙いを持って組み立てたランディングページにとって、入力項目が少なく手軽に買えると一目でわかる方法が適していたと考えられる。

Webページのボタンやメニューの配置を考えるのと同じように、決済もまた顧客に対するお作法・おもてなしの一部。選びやすい形で情報提供することが必要だ。

「商品開発や販売ページ作りの段階では、ペルソナを設定し、その人が何を求めているのか、どんなふうにそれを使うのか、細かく検討されるケースが多いでしょう。では、その人の行動特性を追った時に、決済の段階では果たして最適な形が用意できているでしょうか。その視点で見ていただくと、何をどのように用意するべきか、イメージしやすいのではないかと思います」(秋山氏)

06 決済環境の整え方にもペルソナを活用

商品開発やコンテンツ制作のために活用されるペルソナ。 その行動特性を決済の場面にも当てはめてみると、決済方法に対するニーズも見えてくる

ネットでものを買おうとするとき、顧客はまず「どの商品を買うか」を決め、次に「どのように買うか」を決める。そう考えれば決済方法もまた商品の延長にあるものだ。適切な方法を使いやすい状態で提供できているか、顧客の視点で見直してみよう。

教えてくれたのは… 浅見 剛
ソウルドアウト株式会社 EC支援本部 本部長 http://www.sold-out.co.jp
教えてくれたのは… 秋山 瞬
株式会社ネットプロテクションズ 執行役員 https://www.netprotections.com
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