「現場の声」から見えてきたこと

Q&A6選、ケーススタディ3選として用意した「現場の声」について、どうお感じですか?

桑野先生 コンテンツを提供する立場のみなさんについては、相手との力関係の違いに神経が使われていることが伝わってきます。「よそで企画が使われた」「二次利用について文句が言えない」というケースが象徴的です。本当にひどい事態には公正取引委員会が下請法違反がないかなどで動いてくれますが、すべてとはいきません。横のつながりを活かして業界団体を作って抗議する手はありますが、団体に所属しない、適当な団体が(少)ないという現状もあります。

WD だからこそ、この企画で防げることは未然に防いでほしいです。

桑野先生 コンテンツを利用する、引用するという立場に立つと、許可なくできる範囲に関心が高そうですね。インターネットに出回っているものへの違法性についてと、自分たちのために提供してもらったものをどれほど自由に使っていいのか、についてです。

WD 日ごろの業務が忙しいと、事前承諾の行為自体が面倒なので、つい「許諾なく」進めてしまい…

桑野先生 もし不注意でミスを犯すと、今まで堅調に推移したことも一転しかねません。インターネットで目立つ声は、苦情、ネガティブな意見が中心。それらがごく一部の声でも、世の中の大多数が批判的であるかのように袋叩きにされる傾向があることも忘れないでおきたいです。

印象的だったのは、他社の取り組みを気にする声が少なかったこと。自社の取り組みへの関心についての声が多数でした。

桑野先生 意外でしたね。割と他社のチャレンジには関心があると思っていました。確かに、外から見えていることは許諾ありきかどうか、わかりません。裏づけがないことは参考にしづらい、表面的に真似をしても心配なだけ、と感じているのかもしれません。

WD ギリギリとは言わずとも、あまりに手前からブレーキを踏みすぎるのは避けてほしい。この企画を通じて、ブレーキの位置が?めるようになると嬉しいです。

桑野先生 「自分の立場として」だけでなく、「相手の立場に立って」読むと、「相手は自分のことを、こう考えるのか」という気づきにもつながるはずです。

 

教えてくれたのは…桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/
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