
相手に毅然と対応するためのケーススタディ3選
クールに対処できる秘訣は? 日頃から備えの意識を持つ!
ここから取り上げる3つのケースに共通することは、堂々と対応してほしい、ということです。相手から訴えられる場合、逆に相手を訴えなければならない場合、双方ともなるべく回避したいですが、どれほど備えていても起こってしまうことがあります。
困った時を想定して相談できる弁護士や信頼できる相手を見つけておくのは一案です。事前に見つけておかないことで、初動が遅れて、訴えてきた相手の怒りが増幅したり、権利を侵害している相手の態度が増長することを防ぐのが目的です。組織間の横のつながりや、人と人とのつながりの中で、日ごろからこうした話題を共有しておくのもいいでしょう。そうしたつながりが、困っている時の気軽な相談相手となってくれるだけでも、違ってきます。
Case Study2 プレゼン不採用のアイデアにも著作権を問いたい!
競合プレゼンなら、複数案で勝負したいけれど…
あの時のボツ案が…言えない。確証ないし(涙)
Point アイデア流出防止を重視するなら防止に関する契約を結ぶ手はある
このケースは、クリエイターや初めての取引先を相手にする企業など、アイデアを提供する側に根深く付きまとう悩みや相談です。例えば、競合プレゼンテーションに参加した場合、自社にとって有利に運ぶために、他社に先んじたアイデアを提供したり、複数の提案を携えて事業会社側に熱意や姿勢をアピールするなどの活動が考えられます。プレゼンを呼びかけた事業側は、参加企業や人の分だけ、多種多様な提案を見聞きすることにもなります。
そこで考えられる事態は、プレゼンの場で出てきた提案が他のシーンで無断利用されることです。利用された側はたまったものではなく、防止策を講じることは可能です。例えば、プレゼンで発表するアイデアについて、著作権や秘密保持についてまとめた文書を用意しておき、事業会社側にサインしてもらうのです。


Check!
プレゼンを募った側もモラルが問われていることを忘れずに! どれほどの思慮の元、参加者たちは提案しているのか。取り扱いはこの上なく慎重に!
Case Study3 明らかに自分のコンテンツが使われている(怒)
しかも、よりによって、そのまま無断転載(涙)
いざそうなると…どうすりゃいい?
Point 明らかな著作権侵害を確認した上で速やかに相手側にクレームを
こうしたケースは、「明らかに著作権を侵害しているか」「似て非なる状態か」を必ず見極めてください。前者の場合、即座に相手側へのクレームとなります。
ただ、クレームの出し方は慎重に。例えば、著作権侵害した相手が知っている相手で、うっかりミスでしたことなのか、縁もゆかりもない相手から丸々盗用されたのでも対応は変えた方がいいでしょう。前者の場合は、クレームを出しつつ穏当な表現で、相手の様子をうかがうトーンがあってもいいかもしれません。侵害されて気分を害していても、今後のことを考えた対応です。後者は、「侵害された事実」に対して理路整然と記しクレームの一報を入れて、相手の出方を待ちます。明らかなケースの場合は、わざわざ弁護士に相談しなくても、直接抗議してもいいでしょう。
結果、コンテンツを取り下げてくれれば前進です。Case Study1(P109)と裏表ですが、非公開となった時点で納得できるなら解決です。問題はクレームに応じないケース。この段階で弁護士への相談や信頼すべき第三者の意見にもっと耳を傾けたいところです。
「似て非なる」ケースの場合は、本人が侵害だと感じる度合い次第です。不快な気持ちが募るならクレームは出した方がいい。クレームに対する相手の反応を見て、相手の見解を知ることが先決です。

Check!
勘違いもあります。対応時はくれぐれも決めつけないこと。あふれ出る怒りの感情のままメールをしたためるのではなくて、まずは一度、冷静になりましょう!

- 教えてくれたのは…桑野雄一郎
- 1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/