ルーキーズキャンプ開催レポ②|“学校では教えてくれない”現場のリアルな課題に、若手Webディレクターが挑む!
ルーキーズキャンプのWebディレクター養成研修では、座学と実践を組み合わせた全4日間のプログラムを実施。業界の第一線で活躍する講師陣によるフィードバックや、実際のクライアントを想定したヒアリング演習、他社ディレクターとの交流を通じて、受講者たちは自身の強みと成長課題を明確にし、“現場で活かせるディレクション力”を磨き上げました。彼らがこの研修で得た学びと、次のステップへとつながる手応えを伺いました。

受講者

佐々木康祐さん
株式会社ゴマシオカンパニー所属。Web広告のマーケティング業務を経て、制作業務への関心からキャリアチェンジ。Webディレクターとして総合的なスキルを身につけるため、Webディレクター養成研修に参加。

中根美稲さん
カズミア株式会社所属。事業会社での営業やSNSマーケティング業務を経験した後、Web制作への関心を深め2024年に転職。現在は長く活躍できるWebディレクターを目指し、実務を通じて研鑽を積んでいる。
講師

江辺和彰さん
2007年頃よりWebデザイナーとしてキャリアをスタート。2014年より株式会社コンセントにてディレクター/プロジェクトマネージャーとして、大規模コーポレートサイト構築やグローバルサイトガイドライン策定、CRMプロジェクトなどに携わる。現在はさらに活動の幅を広げ、プロジェクト立ち上げ支援や人材教育などを行う。

嶋田智成さん
2004年から10年以上に渡り、WebやITの技術的な仕事に携わる。専門書の執筆や、専門学校でWebマーケティングの指導も行う。2015年1月に 海外旅行メディアFish&Tipsを立ち上げ、月間25万PVのメディアに育てあげる。海外の最新ツールをいち早く導入して、サイト改善につなげられないか日々研究を重ねている。
リアルなディレクター像から得た新たな気づき
──ルーキーズキャンプのWebディレクター養成研修に参加したきっかけを教えてください。
佐々木康祐(以下、佐々木) 現在の会社に入社して3年目になりますが、ディレクターという職種には「人をまとめるコミュニケーション力」と「Webに関する総合的な知識」の両方が求められると日々感じています。そのどちらにもまだ不安があったため、この研修を通じて「自分がどこを伸ばすべきか」を明確にするために参加を決めました。
中根美稲(以下、中根) 私は実務の中でディレクション業務の全体像を把握しているつもりでしたが、実際には曖昧な部分があることに気づいていました。足りない部分は書籍やSNSなどで学習していましたが、それが正しい知識なのか確信が持てず不安も感じていたんです。
昨年この講座の存在を知り、「今年こそ受講しよう」と決めていたので、上司に「クライアントの課題を深掘りし、Webサイトに落とし込む力を身につけたい」と自分から提案し講座への参加に至りました。
──今回の研修では、前半パートでディレクターとしての基礎知識を学びましたが、印象に残っている点はありますか?
佐々木 印象に残っていることが2つあります。ひとつは、最新のマーケティングツールの具体的な使い方です。これまでもデジタルマーケティングツールを導入した経験はありましたが、「ヒートマップ」の視点や活用方法について具体的に学べたことが非常に実践的でよかったです。
もうひとつは、「ディレクターに必要な素養」として教えていただいたチームビルディングの考え方です。メンバーのタスク量や状況に常に目を配ることの重要性を改めて認識し、実務でも意識するようになりました。
中根 講師の嶋田(智成)さんの講義では、「実際に現場でどうしているか」といったリアルな視点からのお話が多く、とても参考になりました。たとえば、AIの活用方法や納期から逆算したスケジュール設計など、実務に即した“あるある”をたくさん共有していただきました。今でも講義中に取ったメモを見返しながら、日々の業務に役立てています。
本番さながらのヒアリング演習で得た衝撃と学び
──研修の後半は実践的なワークが中心でしたが、印象に残った学びはありますか?
佐々木 やはり一番印象に残っているのは、クライアントへのヒアリングを想定した演習です。開始5分前に「これから実際にマイナビ出版の部長職の方にヒアリングを行います」と告げられたときは、驚きと緊張でいっぱいでした(笑)。まさに本番さながらの緊張感の中で、プレッシャーを感じながらも対応できたことは非常に貴重な経験になりましたね。
また、企画書の制作も強く印象に残っています。最初はあくまで演習のつもりで取り組んでいたのですが、次第に「どうすればこの企画を通せるか」と本気で考えるようになり、最終的には何度も見直して自分なりに納得のいく形に仕上げることができました。
中根 ヒアリング体験があるとは事前に聞いていたのですが、まさかあそこまで実践的だとは思わず、とても驚きました。
さらに印象的だったのが、スケジュール設計に取り組む際に学んだ「タスクの洗い出し」の方法です。ちょうど実際の案件で抜け漏れが発生し慌てていたタイミングだったので、「これはすぐに実践で使おう!」と思いました。
実際にその手法を試してみたところ、デザイナーやコーダーから「この工程も必要だよ」といった指摘が出てきて、チーム全体としての連携の精度が格段に高まったと感じています。

──講師陣からのフィードバックで印象に残っていることはありますか?
佐々木 研修最終日の提案発表の際に、講師の江辺(和彰)さんから「このスライドを追加すると、もっと説得力が出るよ」とアドバイスをいただいたことが印象に残っています。とても実践的な視点での指摘で、「自分の見せ方は、まだまだ工夫できる余地がある」と気づかされました。
社内では関係性に慣れてしまって客観的な評価を得にくいのですが、プロの立場から違う視点で見てもらうことの重要性を改めて実感しました。
中根 私も江辺さんから、「あなたの強みは企画を考える力かもしれませんね」と言っていただいたことが、今でも心に残っています。それまで企画力に特別な自信があったわけではなかったのですが、その言葉をきっかけに「自分はそこを伸ばせるかもしれない」と新たな可能性に気づくことができました。

実務で再現可能な“型”と応用のヒントを手にして
──今回の研修で得られた気づきや、ほかの受講者から学んだことはありますか?
佐々木 設計の流れや思考の整理ができたことが、今回の研修で得られた一番の収穫です。これまでは感覚的に進めてしまっていた部分も多かったのですが、ディレクターに必要な視点が自分の中で少しずつ整理されてきたと感じています。
特に「提案力」や「チームを見る視点」など、普段の業務では後回しになりがちな部分にも改めて目を向けることができたのは、大きな学びでした。今後は、研修で得た知見を実務に少しずつ活かしながら、社内にも還元していけたらと思っています。
中根 私は「ディレクションには、さまざまな流派がある」ことを実感しました。たとえば、最後に提出した提案書は用意されたフォーマットに沿って作成しましたが、その構成や考え方は自社のやり方とは異なっていて、「こういう見せ方もあるのか」と視野が広がりました。
また、ほかの受講者のアプローチやアウトプットを間近で見られたことも大きな刺激でした。自分ひとりで取り組んでいたら気づけなかった「課題の捉え方」や「情報のまとめ方」が見えてきて、「もっと自由でいいんだな」とか「こういう順序で組み立てるのもアリなんだ」と、たくさんの気づきがありました。
正直、「設計」や「ディレクション」という言葉に対して、どこかで「難しそう」「壮大すぎる」といったイメージを持って身構えていたのですが、今回の研修を通して「もっと具体的に、課題ごとに一歩ずつ進めていけばいい」と気づけたことも大きな学びです。研修で得た“型”を足がかりにしつつ、自分なりに試行錯誤を重ねながら、実践の中で育てていきたいと思います。

──最後に、講師の江辺さんと嶋田さんからも、お二人の今後のさらなる活躍に向けたアドバイスをお願いします。
江辺和彰 今回の研修では、「できるだけ実務に近い内容にしたい」というのが私たちの大きなコンセプトでした。世の中にはさまざまな研修がありますが、私たちは「実務に必要なスキルを、実務に近い形で身につけてもらうこと」にこだわりました。
とはいえ、すべてをそのまま実案件に適用するのは難しいかもしれません。だからこそ、「あのときのフレームワークだけ使ってみよう」とか、「この考え方だけ応用してみよう」といったように、パーツ単位でもいいので、今の業務や環境に合わせて少しずつ取り入れていってください。そうやって実務に活かして、自分のものにしていただけたら講師としてもうれしいです。
嶋田智成 今回の研修では、できる限り“実務ベースのリアル”をお伝えしたつもりです。ただ、実際の現場はそれ以上に複雑ですし、想定外のこともたくさん起こります。
だからこそ、今回学んだ“型”をそのままではなく、自分なりにアレンジしながら活用できるようになると、ディレクターとしての視座がさらに高まり、業務の幅も大きく広がっていくはずです。
また、「他社のやり方に触れたこと」も大きな意味を持つ経験です。ぜひ、今回の学びを自社のスタイルと照らし合わせながら、自分に合ったやり方をこれからも模索していってください。
文・栗原亮(Arkhē)
