
AI時代だからこそ。CMSはどう選ぶ? Web担当者が迷わないための判断基準【2026年版】

CMSの導入の有無を検討しながら、自社に最適なCMSを選び、実装後の運用を軌道に乗せていく──特集「CMS選定の教科書[2026年版]」では、現代のビジネスシーンとデジタルを取り巻く環境を踏まえながら、CMSのあり方や本質に迫る切り口のもと、5回の内容を届けてきました。
最終回である本記事では、これまでの内容を十分に踏まえたうえで、企業が自信を持ってCMSを選定できるようになるための判断基準を探ります。新規のサイト開設、既存サイトのリニューアルのどちらにとっても、どのCMSを選び(もしくは、既存CMSを踏襲しつつ)、目的に基づく継続的な運用を可能にするには、どういう判断をしていくといいのでしょうか?
CMS導入及び運用実績の豊富な株式会社GIGで代表取締役を務める岩上貴洋さんに話をうかがいながら、数々の実務に裏打ちされた、確かなCMSの選び方を学びます。
目次
CMS選定の最初に意識したい2点。「更新箇所」と「システム運用保守体制」
──本特集では、CMS導入のあり方や実装後の運用などについて考えてきましたが、結局、どのCMSを選べばいいのでしょうか? まずはCMS選定の場面で、新規サイトもしくは既存サイトのリニューアル対応に直面した企業のWeb担当者が「最初にどう動けばいいのか?」を考えたいです。
岩上貴洋(以下、岩上) まずは2点を意識してください。
1点目は、「CMSを運用する側(企業のWeb担当者)が、Webサイトのどの箇所を更新したいのか?」をはっきりさせることです。これは新規開設とリニューアル対応のどちらにも言えることです。
──最初から、公開後の運用フェーズのことを決めておくということでしょうか?
岩上 はい、具体的に決めておきます。たとえば、新着ニュースや導入事例、通常記事など、任意のカテゴリに対するコンテンツをブログ感覚で更新する想定であれば、どのCMSの標準機能でも対応しやすいと導けます。
さらに詰めていったとき、会社概要やサービスページなど本来静的なページでも、頻繁に内容を自社で更新したいとします。すると、HTMLにあまり詳しくない担当者でも使いやすい、「見たまま編集」のような機能の必要性が見えてきます。

──なるほど。運用する側がどれくらいのスキルを持ち、どの箇所をどのように更新したいかを洗い出していくわけですね。
岩上 2点目が、リリース後の「運用」「保守」「セキュリティ」対策です。これらの対策に対応できる、「システム運用保守体制を担うエンジニアが社内にいるかどうか?」を必ずあらかじめ確認してください。
社内にいる場合でも、WordPress(以下、WP)のように頻繁なCMSのアップデート対応経験を持つエンジニアがいるかどうかなど、リソースの質や量を検証しておきます。社内対応が難しいなら、制作会社やベンダーに外部委託してリスク軽減を図ることを計画しておくべきです。
──これら2点を意識するうえでの注意点はありますか?
岩上 現場では、窓口になる人や交渉の先頭に立つ人が広報やマーケティング部門に在籍している方たちが多いです。つまり、エンジニアリングの背景をお持ちでない方の場合、特に2点目に関する意識、たとえばサーバの心配やセキュリティ対策などが抜けがちです。
実際、既存サイトにWPを導入しながらアップデート対応していないケースが、現場では見受けられます。仮に今まで問題が起きていなくても、AIの進化が加速するなかで、現代のセキュリティリスクはさらに高まっています。システム運用保守体制は、事前にはっきりと対策の方向性を出しておくべきなのです。
予算とは? 「初期構築」「ランニング(運用)」「マーケティング」を検討する
──CMS選定には「予算」も外せない条件です。予算を踏まえると、どういった判断基準のもとでCMSを選ぶといいでしょうか?
岩上 予算の考え方は、「初期構築」コストと「運用」「保守」「セキュリティ」にかかわるランニングコストの2つに分けると、実務的に考えやすいです。
前者の「初期構築」コストは、汎用的なCMSほどコストは安価に抑えられます。複雑な独自実装が必要なCMSほど高価になりますが、自社のニーズに適った状態にしやすいメリットもあります。どちらを選ぶかは、予算がわかりやすい条件になる。予算に余裕があるなら、後者を採用して本当に運用しやすいかが判断基準になってきます。
後者の、「運用」「保守」「セキュリティ」にかかわるランニングコストとは、たとえばCMSのアップデート対応や日々のセキュリティ対策をはじめとした状況に対して、エンジニアが対応するための常駐コストを見積もっておくことです。そこには、担当エンジニアが辞めた場合の採用コストなど「体制を維持するコスト」も、予算に含めて考えておけるとベターです。
──先ほどの話にも通じますが、社内に情報システム部門がない場合、こうした視点は社内から生まれにくいのではないでしょうか。
岩上 その通りです。だからこそ、今後さらに変化が激しくなる時代においては、組織としてその変化に対応できる体制を整える必要があります。具体的には、スキルを持つ人材の確保に加え、人材育成を含めた体制を構築することです。単に意識するだけでなく、体制構築に必要なコストをあらかじめ予算に組み込むところまで、しっかりと進めていくことが重要だと考えています。
──まとめると、予算検討では初期費用・ランニング費用の抜け漏れを防ぎつつ、事前に自社の対応方法を整理しておくことが重要、ということですね。
岩上 さらにもう1つを挙げるなら、マーケティングコストです。CMS導入後の集客や販売促進施策を考えたときに、自社が選ぶべきCMSが何か、もあわせて考慮したいです。

岩上 たとえば、Web接客やリード獲得のためにランディングページ(LP)をつくりたい場合、エンジニアの手を借りないとつくれないCMSではなく、非エンジニアのマーケターが直感的な操作で構築できるCMSを選んでいれば、非エンジニア層だけでも現場の運用が進めやすいですよね?
ここでの焦点は、メタタグの設定や表示速度の最適化など、SEO対策がしやすいCMSを選ぶかどうかです。SEO対策が不得手なCMSを選んでしまうと、余分な機能拡張など追加費用が生じる可能性があります。こうした点も踏まえ、エンジニアの有無とあわせて、選択の判断になるわけです。
──「自社でやりたいこと」に対して得意なCMSを選ぶか、不得意な代わりに導入コストを抑制できるCMSを選ぶかということでしょうか?
岩上 そうです。ここまで詰めておけると、予算とあわせて組織の最適解を導きやすくなります。
自社に最適な外部パートナーの見つけ方
──企業担当者が迷うのは、「最初に何をするのか」「予算の考え方」に加えて、誰と一緒につくるのか? つまり、「どの外部パートナーと組むべきか」もあるはずです。
岩上 外部パートナーの選び方もまた、分解しながら考えると、適切なアプローチが見えてきます。
まずは、自社で何をしたいのかを洗い出します。この洗い出しとは、冒頭から説明してきた「最初に何をするのか」「予算の考え方」を順に整理していくことです。
──整理した内容に基づき、適切なアプローチをしてくれる制作会社やコンサルティング会社が、自社にとって最適なパートナーとなるわけですね?
岩上 そうです。そこで、「自社にとって“適切”とは何か?」を探っていきます。ここでは失敗例で考えると、わかりやすいかもしれません。
たとえば、サイトリニューアルが目的だったとして、リニューアル自体にフォーカスし過ぎた結果、デザインは気に入ったけれどマーケティングの効果が薄い仕上がりになったとします。
この場合、1年後、2年後と継続していくと、先々で「違っていたな」となることが想像できます。これを防ぐために、「適切」とは、「最低5年単位の長期で捉えたときに、Webサイトを通じて成果を導く状態にできること」と具体化して対応にあたることが得策です。
──そうなると、サイトの完成ばかりを意識させる制作会社ではなくて、長期で運用の観点を持つ制作会社を探していけばいいのでしょうか?
岩上 そうですね。長期の観点があれば、セキュリティを含めてシステム運用保守体制についても、自然と考えが至りやすいです。制作会社側のリソースや構造上の問題として、Webサイト「制作」に軸足を置くがあまり、システム側の運用保守にリソースを割けない会社も少なくありません。そうした事情を念頭に置いて、パートナーを選ぶ側は自社の体制や組織状況も踏まえて、5年単位で先々を見据えたディスカッションに応じられる制作会社が有力候補になります。

──ふさわしい外部パートナーを選べたとして、さらにパートナーとのチーム体制を盤石にしていくには、どうするといいでしょうか。
岩上 要件定義を詰める段階で、運用フェーズもあわせて定義してください。要件定義の多くが、制作について定義することが優先され、公開後の運用の定義がおろそかになりがちだからです。
──要件定義に、きちんと「長期」的な視点を盛り込むわけですね。
岩上 間違いがないのは運用に加えて、成果につながる内容も定義しておくことです。マーケティングに力を入れたいプロジェクトであれば、デザインのリニューアルにフォーカスし過ぎて、激しいモーションを実装した“見映えはいいけれど重たいサイト表現”は避けたいはずです。そこで、サイトスピードの重要性が極めて高いプロジェクト、と要件定義化しておくのです。
2026年版、AI時代に企業のWeb担当者がどうCMSと向き合うべきか?
──最後に、長期的な運用を見据えて、企業のWeb担当者が今後どのようにCMSと向き合うべきでしょうか?
岩上 ここでは、3つの観点をお伝えしたいです。

岩上 1つ目が、「長期的な時間軸(5年単位が目安)を持つこと」です。本来、企業がサイトを新規開設したりリブランディングする現場は、そう頻繁にはないことです。5年前と今とでは、Webサイトリニューアルの概念やCMSの機能もまったく違いますし、AIをはじめ外的な環境が大きく異なります。企業として極めて重要度が高いにも関わらず、頻繁にない分、社内に知見が蓄積されづらいからこそ目先の公開で満足せず、長期的な視点で運用体制や予算を組むことが、プロジェクトの成功を引き寄せます。
──先ほど話に出ていた、長期的に運用保守やセキュリティ、マーケティングの体制をどう整えるか、というポイントにつながる観点ですね。
岩上 おっしゃる通りです。2つ目が、CMSで構築したWebサイトを、「顧客接点やマーケティング、PRにおける『ハブ(結節点)』と捉えること」です。現代の企業サイトは、デジタル上の接点(SNS、デジタル広告、MA、CRMなど)の中心であり、企業とユーザーや外的要因をつなぐ「ハブ」として機能しているからです。
この「ハブ」としての役割をまっとうするには、安定した運用保守体制と信頼性の高いセキュリティ対策が必須です。ユーザーが安心してWebサイトに訪問できて、安全にデータ連携できる基盤(CMS)があってこそ、ユーザーとの接点が途切れずに保たれるのです。
──では、3つ目の観点は?
岩上 「自社のWeb戦略を、AI活用で加速化させる」観点を持つことです。
これからのデジタル世界において、主体的にAI活用できている企業と、まったく活用できていない企業とでは、デジタルコミュニケーション上の露出度の差は大きく開いていくはずです。特に、元々Web活用に長けた企業ほど、AIでさらにパフォーマンスを加速させていくほど、Web活用できていない企業はその差をもはや取り返せないほど広がっていくでしょう。
実際、従来のユーザーが検索上位10位あたりまでの中から情報を選ぶことが多かったのが、今はChatGPTやGeminiをはじめとする生成AI経由で検索し、3つ程度に絞られた結果から情報を取得するスタイルが広がっています。要は、AIが示した3つの中に入っていないと、そもそも自社の存在が認知(検索)されない時代なのです。
対策として、自社の取り組みをリアルタイムで発信し、選ばれやすくなる仕組みづくりが急務です。それを支える人的、かつシステム的な体制の核こそが、CMSなのです。
取材・文:遠藤義浩