
Figma Japan、新オフィスへ移転。AI時代に日本市場へのコミットメントをさらに強化

Figma Japan株式会社は、7月22日(水)、新オフィス移転ならびにプロダクト戦略に関する発表会を開催しました。6月23日〜25日にかけて、アメリカ・サンフランシスコで年次カンファレンス「Figma Config 2026」が開催されたばかりのFigmaは、日本国内の事業拡大に向けて、どのような戦略を描いているのでしょうか?
本記事では、同日に行われた会見内容とともに、同社CPO(最高製品責任者)の山下祐樹さんに行ったWeb Designing単独取材の模様とあわせて、まとめていきます。
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目次
グローバルで重要市場に。国内で拡大を続けるFigmaの現在地
オープニングトークでは、Figma Japanのカントリーマネジャーを務める川延浩彰さんが登壇。国内におけるFigmaの事業展開の内容を中心に、説明しました。

「グローバルでマンスリーアクティブユーザー数を比べると、私が現職に着任した2022年当時の日本はトップ10圏外でしたが、2026年現在ではトップ5圏内に入るほどに国内市場が成長中です。ここ数年で、一気に大事な市場へと育ったのがFigmaを巡る日本の状況です」(Figma Japanカントリーマネジャー・川延浩彰さん、以下同)
国内大手企業のFigma導入数も広がっています。2022年当時は日経平均株価(日経225)に採用される企業の導入率が1割にも満たない状況だったのが、現在では3分の2を超える企業が導入、と国内市場の成長を示すデータとして紹介されました。
続いて、Figmaユーザーが運営するコミュニティ「Friends of Figma」の説明では、2022年は1つだったコミュニティが、2026年時点で20以上にも支部が増加。Figmaユーザーの積極的な展開が全国各地で広がり、アクティブメンバー数は3,000人以上(2026年3月31日時点)にまで伸びています。
また、Figma Japanがここ近年、積極的に推進する教育プログラム「Figma for Education」プランにも言及。小中高生向けにFigmaツールを無償で提供し、徳島県の神山まるごと高等専門学校や島根県の飯南町教育委員会、兵庫県のカナディアンアカデミーなどの現場で、授業での指導や探究学習、キャリア教育などへの活用にも触れていました。
AI時代の課題は「サイロ化」と「静かなる明け渡し」
次に同社CPOの山下祐樹さんが登壇し、AI時代におけるグローバルの方向性を語りました。
山下さんはまず、AIの普及によってデザイナーやデベロッパー、プロダクトマネージャーといった職種や役割の境界が曖昧になる一方、新たなサイロ化が生まれつつあることを指摘します。
「AIは目の前のアイデアを深掘りすることは得意ですが、その前提そのものを疑ったり、別の可能性に目を向けたりすることは必ずしも得意ではありません」(Figma CPO・山下祐樹さん、以下同)
プレゼンでは「自分だけが高い山に登った気になっていないか」とも問いかけ、AIによって個人の生産性が高まる一方、周囲との共有や連携の負荷がかえって増えていないか、と問題を提起します。
また、もう1つの課題を「静かなる明け渡し」という言葉で説明。AIは過去の成果物から学習するため、平均的な(予想しやすい)答えを返す傾向があり、そのアウトプットを鵜呑みにするほど、成果物の均一化が進まないか、とも話します。こうした大きな課題に立ち向かうには、ツールとカルチャーが必要だ、と山下さんは強調しました。

「Figmaは、チーム全員が一緒に作業できる“キャンバス”を共有できるようになったことで、サイロ化を防げるようになります。同時に私たちは、誰も予想しなかった答えを歓迎するカルチャーの醸成も大事になります。Figmaこそ、その可能性を大きく広げてくれる環境としたいのです」
その後、同社デザイナーアドボケートの谷拓樹さんがプレゼンテーションを引き継ぎ、Config 2026の振り返りとともにデモを披露。新機能「Code layer」をはじめ、デザインとコードの行き来がいかに自在にできるようになったかを実践しながら、従来よりもスピーディーかつ高度なクリエイティブづくりに関する実演が行われました。
「課題はデザインではなく組織」──三井住友カードが取り組む「意思決定の仕組み」の変革
プログラム後半では、カスタマーファイヤーサイドチャットが行われ、川延さんとともに、三井住友カードでCEOデザインオフィス Head of Designを務める前川美穂さんがゲスト登壇。AI時代を念頭に、同社でのデザイン組織の立ち上げについてや、1つのサービスだけに注力せずグループ全体で体験設計を進めていくことの重要性について、語りました。

「入社当初、弊社は経営の意思決定にデザインが含まれていませんでした。そこで、事業判断にデザイナーやエンジニアも巻き込んでいく仕組みづくりを進めていきました」(三井住友カード・前川美穂さん、以下同)
そこで前川さんは、最大の課題をデザインやテクノロジーにではなく「組織」にあると捉え、事業戦略や顧客理解、ブランディング、プロダクト開発などを別々で考えず、包括的で横断的に議論できる体制を整えていきます。その延長線上にこそ、よりよい意思決定が可能な組織がつくられる、と考えるからです。
「Figmaが目指す未来は、弊社が目指す姿と似ています。Figmaは、デザイナーのためのデザインツールから、職種を越えて議論できる、組織がよりよい意思決定をするためのプラットフォームへと変化を遂げているからです。今後、デザインはクリエイティブだけでなく、信頼を設計する経営機能として取り込んでいく必要性があります。Figmaが、AIネイティブなデザインシステムの進化を担う中核となり、よりよい意思決定を支える存在(=Figma)になることを期待しています」

【単独インタビュー】CPO山下祐樹さんが語る、AI時代におけるFigmaのこれから
記者会見終了後、Web Designingでは同社CPOの山下祐樹さんに、個別取材を敢行。Figma Config 2026を経た今後のFigmaについて、話をうかがいました。
最初に、Figma Config 2026を通じての山下さん自身の受け止めをうかがうと、「今回発表された、6つの新機能に共通するのは“キャンバス”上にあらゆる操作を持ってきたこと」に触れ、Figmaを通じて、平均的なものではなく差別化できるクリエイティブを生み出せる環境を提供したい、と語ります。

「元々、個人で完結しがちな制作環境では、プロセスがひと段落つかないと他者との共有が難しい状況でした。そこでプロセスの初期段階から、チーム内で協業できる仕組みづくりを整備したかったのです。Figmaでは素材(material)という言葉を用いていますが、デザインやコードの過程がもっと早い段階から、キャンバス上で素材が共有できれば、柔軟な協業も可能です。こうした整備が、さらなる表現豊かなクリエイティブにつながってほしいです」(Figma CPO・山下祐樹さん、以下同)
また山下さんは、AIに頼りきらない感覚の重要性も強調します。
「AIの力を借りたとしても、自分が確信を持って創造できている手応えこそ重視してほしい。問題解決を導く判断や、共感性の高いユーザー体験に近づく判断は人間(自分)がする、という前提でAIを使いこなすことが大切なのです」
最後に、来年に向けた展望もうかがいました。
「まだ対外的にフィードバックをもらっている最中ですが、今言えることは、超一流のデジタル体験をつくるには何が必要なのかについて、いつも私たちは試行錯誤を続けています。どのような機能や素材(material)が必要なのか。Figmaは今後も全力で、デジタル体験づくりへの最大限のサポートをお約束します」
取材・文:Web Designing編集部(遠藤義浩)
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