Web制作会社進化論

進化の事例1●ベースメントファクトリープロダクション

進化の方向性の1つは、異分野への進出です。例として、1997年に創業し、現在は、商品開発、スマートフォンアプリ、飲食店なども手がける(株)ベースメントファクトリープロダクションを紹介します。数多くの事業の中で、今回はしゃぶしゃぶ店「しゃぶ八」について、お伺いしました。

話を聞いた人:北村 健
代表取締役

 

―まず、Web制作から別事業へ、特に飲食事業に進出した経緯を教えてください。

Webサイトをつくるというのは、その企業のブランディングを担っているわけです。にも関わらず、自社発信でブランドをつくったことがない点にモヤモヤしていました。そこで、アプリ、製品、店舗といった自社ブランドをつくっていこうと。「しゃぶ八」をはじめたのは、店舗では、お客様と直接コミュニケーションをとれるから。普段は消費者と会うことのないWeb制作者にとって、顧客の反応が直接返ってくる場が身近にあるのは、大きなメリットです。

―しゃぶ八は、「一人一鍋」を特徴としていますが、このアイデアはどのように生まれたのでしょうか。

家族や恋人ならともかく、仕事関係の接待など、あまり馴染みのない人たちと同じ鍋を共用するのは気まずいですよね(笑)。また、締めに麺を入れるか米を入れるか、一人一鍋なら各々好きなものを選べます。オープン当時は他にそういったお店はなく、女性を中心に反響は大きかったです。その他、使いやすさを考えて3Dプリンタでコンロのつまみを制作したり、店舗の予約システムを社内でつくったり、具が取りやすい鍋の高さになるテーブルの形を設計するなど、そういったユーザー目線の考え方と細やかな部分にはデジタルやクリエイティブの世界で培ったノウハウが活きているかもしれません。

―御社の最新動向や今後の展望を教えてください。

新たな取り組みとして、2018年9月、シャンパンの新ブランド「DRAGON&TIGER Champagne」に参画しました。ラグジュアリーなボトルデザイン、SNSによるプロモーションなど、全面的なプロデュースを行い、酒類では異例の直販体制を実現しました。近年ハイブランドでも注目度の高い「ドラゴン」と「タイガー」をブランドコンセプトに採用することによって、当初から計画していた世界展開を目指します。

「しゃぶ八」は、六本木交差点から歩いて10秒。一人用スペースに収まる計算された配置の写真は「最高級・かごしま黒豚コース」
ラグジュアリーなボトルデザインの「DRAGON & TIGER Champagne」

 

進化の事例2●アーキタイプ

進化の方向性のもう1つは、Webサイト制作の上流・下流の工程に踏み込んでいくような進化です。今回、制作会社としてWebサイトのUI・UXデザインに強みを持ちながら、コンサルティングやマーケティングまでもカバーする、(株)アーキタイプにお話を伺いました。

話を聞いた人:齋藤順一
代表取締役
話を聞いた人:神谷修平
クリエイティブディレクター 執行役員

 

―2007年の創業から現在まで、Web制作を取り巻く環境の変化について、どう感じていますか。

創業当初、Flashを用いたキャンペーンサイトが全盛だったような時代は、「広告代理店やクライアントからの要望に対して、いかにハイクオリティなWebサイトを納品するか」を考えて仕事をしていました。ところが、スマートフォンの普及や時代の流れによりキャンペーンサイトなどの案件は少なくなり、コーポレート、メディア、ECサイトなどの価値が見直された印象があります。「Webサイトはあくまでもツール」という考え方が当たり前になり、クライアントもいかに「コンバージョンにつながるか」を重要視するようになりました。広告代理店を挟まない形の取引も浸透し、デジタルコンサルティング会社からの引き合いも増えてきました。

―そういった変化の中、御社はどう変わりましたか。

他社と協業し、アクセス解析や集客といった、Webサイトを利用したデジタルマーケティングまでカバーするようになりました。また、要望をそのまま受け取るのではなく、本質的な問題を見極めるためにコンサルタント的な役割も務めています。サイトリニューアル時のコンサルティングから入り、現在もアクセス解析を行い、改善提案をさせていただいているクライアント事例も出てきました。現在は「ブランディング」「コンサルティング」「マーケティング」という3つの視点を大事にしており、社内に「顧客の成果を出すWeb制作」を浸透させています。

―いま力を入れていること、これから取り組みたいことを教えてください。

カナダ発のEC構築プラットフォーム「Shopify」を使用したEC支援パッケージ「EC Capsule」は、自社サービスとして力を入れています。また、次は人材サービスを始める予定です。実際に案件を進める中で、クライアントに「常駐できませんか?」と言われることもあり、事業会社にも優秀なWeb人材が必要だなと感じていました。さまざまな事業会社やWeb制作者と付き合ってきた制作会社としての視点も活かし、事業会社とWeb制作者をいい形でマッチングしていきたいです。

アーキタイプがWeb制作会社として大切にしている3つの視点

 

制作だけでなく、解析・運用改善業務も担う「KDDIプリシード」コーポレートサイト 

 

劇的な変化を遂げてきたWeb制作の世界は、これからもますます変わり続けます。冒頭の「Web制作白書」(P024)でも、業界内の多くの企業・個人が、「Web制作のその先」、「変化の重要性」を認識している印象を受けます。

Web制作会社が自身のノウハウや強みを活かすことで、これからも多くの「進化系」が生まれることでしょう。

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