[Webサービス:Trello]老舗の羊羹のように

「Trello」を知っているだろうか? Web業界では鉄板ともいわれるGTD(「Get Things Done」の略で、David Allen氏が提唱した仕事術)のWebサービスだ。対応プラットフォームも多く、この4月にはApple Watch版もリリースされた。しかし、Trelloのスゴさは、そういう対応力ではなく、逆に何年経っても変わらない「見た目」にある。

世の中一般のWebサービスは、どんどん新しい機能が付け加えられては、削られる。見た目もトレンドに合わせて変わっていく。ドラスティックに変更され、機能が加わり、その後シンプルに向かうフェーズが来て、削る。そういう波が行き来する。

けれどTrelloは、私が知る限り、ほとんどUIが変わっていない。よっぽど人が足りていないか、流行っていないのかとも思うが、サービス自体は順調に伸びているし、世界中で愛用されている。歴史は長く、2011年にFog Creek Softwareという会社で生まれ、2014年にはスピンアウトして独立し、10億円ほどの資金調達もしている。それが嘘のように本当に何も変わっていないように見えるのだが、それは逆に相当難しいことではないかと思う。

プロダクト作りをする人というのは、往々にして派手で見た目にもインパクトのある変更を好む。でもTrelloの開発チームは、見えないところに力を入れて地道に改善してきたんだと思う。とにかく動作の「サクサク感」がたまらないし、使い込むうちにほしいと思えてきた機能がすでに用意されている。

見た目は変わらないけど、実はすごく進化しているというのは、ユーザーを夢中にさせるための絶対条件だ。Googleも見た目はそんなに変わらないけれども、裏側で走るアルゴリズムや仕組みは日進月歩で進化を遂げている。ベースは残しつつ、マイナーに進化し続ける、老舗の羊羹のようなプロダクトを、私たちWantedlyも作っていきたい。

【Web Service】Trell

もともとのWeb版のほかに、iPhone/iPadアプリ、Androidアプリ、さらにはWindowsストアアプリやKindle Fireアプリまである。そして、今年4月のApple Watchの発売と同時に、Watchアプリもリリースされた

 

ナビゲーター:仲暁子
Chief Executive Officer/Founder 1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、企業と個人をビジョンでマッチングするビジネスSNS「Wantedly」を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。https://www.wantedly.com/
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