事例:完視聴率40%!視聴者を引き込むコクヨ「解説動画」のしくみ●特集「動画マーケティング」

コクヨチャンネル

2012年に開設。2015年11月現在、6チャンネルで約100番組が用意されている

 

商品理解の促進に欠かせない「動画」

「コクヨチャンネル」では、広く一般消費者に向けて商品やコクヨの取り組みをわかりやすく伝えるコンテンツを中心に、番組を編成している。2012年の開設以来、月平均1本以上の公開を目安に、2015年11月現在で約100本の番組が生み出されてきた。

「開設の目的の一つが、お客様との接点づくりです。販売チャンネルが多様化している昨今、個人のお客様との接点が少なくなってきている問題がありました。コクヨチャンネルを通じて、少しでも多くのお客様にコクヨのこと、コクヨ製品のことを知っていただきたいという思いで開設しました」(清水千穂氏、以下同)

では、なぜ手法に「動画」を選んだのだろうか? それは過去に実施した社内向けコンテンツの動画配信による反響から、動画コンテンツの可能性の大きさに気づいたことに起因する。一例として、お客様相談室に寄せられる声をもとにした動画化がそれにあたるという。

「取り扱いの説明をするのに、電話口ではわかりづらい商品があります。その際、インターネットの利用が可能なお客様には、動画といっしょに説明できれば、格段にご理解が進みます。お客様とのつながりや信頼関係を深めるのに、動画は理に適った手段だったのです」

 

THE KOKUYO G-MEN

コクヨ製品を紹介する番組。クライアントから依頼を受けた文房具について、お笑い芸人ケンキ扮するGメンが調査するという設定。ケンキ氏と社員との軽妙なやりとりや、イラストを交えた詳細な説明で構成される、コクヨチャンネルの人気番組だ

 

約4割のユーザーが最後まで視聴

動画配信にあたっては、長年積み重ねてきたコクヨ製品への信頼を維持することも意識しているという。

「直接的な利益ばかりを求めていません。たしかに、約25%のユーザーが動画視聴後に弊社の通販ページへ遷移するというデータは出ていますし、導線設計もしています。ですが、もっとも大切なのはお客様に商品をはじめ“コクヨという企業を理解していただくこと”です」

この意識は、取り上げている商品の選び方にも現れている。新商品を扱うことはほぼなく、発売後に一定期間を経て反響の高い商品を中心にフォーカスするのも、よりお客様に求められた商品を取り上げたい狙いがあるからだ。

こうした気づかいに満ちた制作姿勢は、コクヨチャンネルの平均完視聴率(動画を最後まで観る割合)が約4割という高い数字にも表れている。目的を持って視聴するユーザーが多いとはいえ、1本あたりの動画の平均時間が3~4分でこの数字を出すのは驚異的だ。

 

高品質を支える丁寧なつくり込み

一度でも視聴すれば、100ある番組のどれもが高品質に仕上がっていることにも気づくだろう。平均完視聴率40%を支えているのも、それぞれの番組に対する丁寧なつくり込みに秘訣がある。テレビ番組の撮影に使われるようなスタジオやカメラ、照明などの機材を活用し、映像制作会社などにも制作協力を受ける。

「例えば、セロハンテープなどの透明な箇所がある商品を撮影するのに、慣れない人が撮ろうとすると、透明なのでうまく撮れなかったり光が反射してしまいます。そこを動画制作のプロにも協力を得ることで、一般的には表現の難しいコンテンツなども動画として万全に撮影と配信ができます。スマホ片手に簡単に動画が撮影できる時代だからこそ、プロの手をしっかりと入れて、高品質ながら身近に感じていただける映像づくりをつねに目指しています」

また、出演者にはお笑い芸人ケンキをはじめ、各地方のプロのアナウンサー、プロのナレーターなどを起用。コンテンツの要所の進行役にプロを採用しつつ、コクヨの社員も登場することで、高いクオリティを担保しながらコクヨらしさが漂う仕上がりとなっている。

 

コクヨチャンネルの今後の展望

2015年10月、コクヨ(株)は会社合併により新たなスタートを切ったところだ。コクヨチャンネルもまた、これから新たな方針のもとでチャンネルの進化を目指していくという。

「これまでは、KGIに視聴前後の態度変容(視聴後の購買)を据えながら、KPIにはサイト訪問者数や動画の再生回数を掲げ、運営をしてきました。インターネットパネル調査方式を用いてアンケートも実施し、特にユーザーの態度変容について検証を重ねてきました。おおむね、番組を通して商品理解の促進が達成できており、企業イメージの向上にもつながる活動が徹底できていると考えています。今後のコクヨチャンネルの立ち位置は再定義中ですが、直接効果と間接効果の兼ね合いを図りながら、事業貢献度の高い運営を目指します」

コクヨチャンネルの好評の輪は拡がり、販売店店員が商品理解のために視聴したり、店頭のサイネージとして動画を再生するなど、現場に則した活用も目立つという。こうした拡がりが可能なのも、高品質を維持したつくり込みと、数多くの公開数を継続しているからである。

 

6チャンネルの内訳は、「THE KOKUYO G-MEN」のほか、各地の文具店を紹介する「あの街、この街、コクヨのある街」(右上)やコクヨの家具を紹介する「ベンリのタネ」(右下)、コクヨグループの企業活動を伝える「レッツリポート!」、商品の細かな取り扱い方法を伝える「コクヨ取説の部屋」、G-MENの前身にあたる文房具商品番組「コクヨくださぁい!」で構成

 

清水 千穂
コクヨ(株)経営管理本部広報室。2015年4月より「コクヨチャンネル」を含むコーポレートサイト全般のメイン担当として従事する。http://www.kokuyo.co.jp/
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