
地域密着型ビジネスで使える、アナログ+デジタル戦略
リスティングを中止してチラシ広告を継続した理由
東京都世田谷区で住宅リフォーム業を営むさくらリフォームは、創業して23年。社員数4名の小規模ながら、テレビや雑誌でも取り上げられることも多い、地域密着型として人気のリフォーム会社だ。
同社が、地元のお客様に対してのアプローチするツールとして、長年使っているのが新聞の折り込みチラシ。現在、中小企業が真っ先に思いつく広告といえば、リスティングやSNSによる広告だろう。だが、さくらリフォームでは、一時期取り組んでいたリスティング広告を中止。現在はチラシのみで広告を行っている。
とはいえ、同社ではチラシにのみ頼っているわけではない。Webサイトを用意しているのはもちろん、プロならではの視点でリフォームに関する情報をWebサイト内で定期的に発信するなど、コンテンツマーケティングにも取り組んでいる。このように、「チラシ×Web」の手法は、同社のビジネスモデルにあわせた結果、考え出されたものだ。
「当社の対応エリアは、車で45分で行ける範囲を基準としています。離れた場所のお客様だと、移動時間がかかり、それをリフォーム代金に反映せざるを得なくなりますし、急なご相談にもすぐにかけつけることが難しくなります。だからこそ、地域のお客様の認知向上を図るために、チラシの配布を続けています」
こう説明するのは、代表を務める久井リカさん。同社では、B4サイズのチラシを2カ月に一度、新聞の折り込みチラシとして約7,000部を配布するほか、新聞を取っていない住宅へもポスティングで3,000部、計1万部を定期的に配布している。1回あたりのおおよその予算は10万円。配布エリアはその都度、変更することもあるが、最もレスポンスが高いのは店舗を中心にした2~3km圏内に配布したときだという。
来店を促す仕掛けをチラシに施す
当然ながら、チラシではWebのようにレスポンスを細かく測定することは難しい。そこで同社のチラシには、リーチした人のアクションを促すような仕掛けが施されている。
同社では毎週土日に、壁紙の修理方法やプチリフォームの方法を教える「DIY教室」や、インテリア小物の作り方を教える「カルトナージュ教室」を実施。その内容やスケジュールの告知にチラシの半分を使い、リフォームの価格などは一切掲載していない。これは、今、リフォームに興味はなくても、さくらリフォームに足を運ぶきっかけを作るためだ。

同社が配布しているチラシ。掲載内容は時期によって異なるが、認知向上と来店のきっかけづくりを最大の目的としているため、価格はあえて掲載しないようにしている。Webサイトリニューアル後は、QRコードも掲載し、流入数もカウントしているという
チラシ→Webサイト→来店の流れを考えることが大事
チラシ広告を効果的に活用しているさくらリフォーム。だが、こうした効果を得るようになるまでにはチラシのデザインや配布エリアなどの試行錯誤を積み重ねてきた。リスティング広告と、チラシを比較して、チラシを継続した理由を久井さんは次のように説明する。
「今年、Webサイトをリニューアルしたのですが、その直前までの約半年間、月に7万円程度をかけてリスティング広告も行っていました。ですが、地域密着型という当社のビジネスモデルや、商圏を考えると、既存サイトへの流入を促すリスティング広告よりも、チラシをきっかけにWebサイト、そして来店へと?がるような仕組みを考えました」
そこで同社では2016年2月にWebサイトをリニューアル。相談に来るお客様の大半が女性のため、久井さんが積極的にWebサイトにも登場することで親近感を促すようにしたほか、お客様の声を動画で掲載するなど、コンテンツを充実させる方針に変更。さらに、「さくら知恵袋」と題したブログをサイト内につくり、リフォームに関する役立つ情報を週に1回以上、発信することで、リスティング広告ではなく、コンテンツマーケティングを実施することにした。こうすることで、チラシをきっかけにさくらリフォームを知ったユーザーがWebサイトを訪れ、そこで興味を持ったユーザーが来店するという導線ができ、チラシの反応も大きく向上したという。
「Webサイトをリニューアルしたあとは、チラシの効果もより高くなったように思います。今ではチラシを見たあとに、Webサイトを見て、相談や来店してくださる方がほとんど。チラシやWebで私の顔を掲載しているせいか、『初めて会った気がしない』と言ってくださる方も多いですね」

目的やビジネス次第でチラシの費用対効果は高い
どこでも購入できる家電や食品を販売するのとは異なり、お客様ごとに提案するさくらリフォームのようなビジネスの場合、特に重要なのが、お客様とのコミュニケーション。そうした点でも、事前にチラシやWebサイトで親近感や信頼を得られることは、ビジネスにとってプラスになると久井さん。今後はWebサイトでの情報発信やSNSの強化とあわせて、継続的にチラシも続けていく予定だという。
「単純に商品を紹介したり、価格を掲載したりするだけのチラシで効果を上げるのは難しいと思いますが、自社のビジネスの特長を踏まえて、来店を促すような仕掛けを入れたり、Webサイトを見ていただくためのきっかけとして考えるなら、チラシもまだまだ有効だと思います。今後はチラシとWebサイトをさらに連動させるような仕組みを考えていきたいですね」
チラシとWebでの情報発信をうまく組み合わせ、着実に効果を上げているさくらリフォーム。顧客ターゲットや商圏の特性を見極めれば、チラシやDMといったアナログ広告も効果が高い手段となる好例だろう。

さくらリフォームのWebサイト。親しみやすいデザインで、地域密着型であるこをアピール。チラシに掲載しているリフォーム相談会やDIY教室、カルトナージュ教室へのリンクもわかりやすく配置し、チラシとの連動性を高めている
