
UXデザイナーの理想と現実_開発会社フェンリルに聞きました
Question?? UXデザイナーとはどういう存在だとお考えですか?
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「依頼相手と徹底的にコミュニケーションできるか? ヒアリング能力が求められる職業です」
私たちにとって、主な案件はソフトウェアやアプリ開発のご相談、というケースです。ご相談時点でのフェーズもまちまちで、かなりゼロに近い状態からサービスをつくり上げるところまで求められたり、いくらか進んだ状態からどう打開すべきかを相談されるケースまであります。さまざまな状況に共通するのは、ユーザーにとって使いやすいのかどうか、という観点。対応方法はケースバイケースですが、私たちの基準は、何よりもエンドユーザーが使いやすいかどうか。これらに応えるためのすべてが、UXデザイナーに求められる資質だと考えています。
UXは、よくUIと並列で語られる機会が多いですよね。そのことが現場や多くの企業を混乱させています。もちろんUIはUXを考える一部ですが、その他にもっと多くの考えるべき要素があります。ですので、私たちがUXに踏み込む際は、クライアントと徹底したコミュニケーションを行い、クライアントが抱える課題をあぶり出します。UXデザイナーと名乗りたいなら、ヒアリング能力は必須。いかに相手から課題を引き出せるか? コミュニケーション力が問われます。
他にも、ユーザーに近い被験者を呼 んでのユーザーテストの実行や、新サー ビスの立ち上げであれば「該当サービ スが本当に受け入れられるのか」、プロ トタイプをつくっては改善を繰り返すこ ともします。UXデザイナーなら、こうした すべてについて、ジャンルを限定せず横 断的にできる存在であってほしいですね。

Question?? 仕事をする上で、UXデザイナーに求める資質は何でしょうか?
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「UXを指し示す定義や範囲は人それぞれ。いずれにも対応できる包容力が必要です」
日頃の業務をもとに考えると、柔軟性のある人ほど、真摯に忌憚なくUXに取り組みやすいと感じています。今でこそUXという言葉はかなり耳にするものの、現場の立場からは人それぞれにUX観があるので、相手(クライアント)のUXが何を指すのか? そこを過不足なく汲み取る必要がある。UXはISOで定義されていますが、クライアントが異なる意味で要求をしてきたら、相談された側(受託側)は引き受けなければなりません。仮に戸惑わせる要望でも、クライアントが抱える課題解決につながり、その先にビジネス的な成功が予測できるなら、むしろ積極的に関与すべきです。
キャリアアップとしてWebデザイナーからUXデザイナーを目指す観点でも話をすると、WebデザイナーとUXデザイナーがそもそも近い存在なのでしょうか? 「デザイナー」という側面ではユーザー体験に近いところで仕事をする共通点はあります。Webデザイナーの延長線上にUXデザイナー「も」ありますが、同じWebを舞台にしている職種なら、見た目だけにとらわれず、案件全体の判断が求められるWebディレクターのほうが近いとも言えます。
キャリアアップとしてWebデザイナーからUXデザイナーを目指す観点でも話をすると、WebデザイナーとUXデザイナーがそもそも近い存在なのでしょうか?
「デザイナー」という側面ではユーザー体験に近いところで仕事をする共通点はあります。Webデザイナーの延長線上にUXデザイナー「も」ありますが、同じWebを舞台にしている職種なら、見た目だけにとらわれず、案件全体の判断が求められるWebディレクターのほうが近いとも言えます。
日本では、まだまだデザイナーと聞く とスタイリングを想起しがちです。「設計」 を前提に語る側と見た目重視で語る側 との溝、意見の齟齬が起きやすい現実 があります。UXデザイナー自身が、溝や 齟齬を仲立ちできるような存在となる必 要があるでしょう。


- 荻野博章
- フェンリル(株)デザイン部次長。デザイン部門のマネージャーを経て、2015年4月のデザイン部立ち上げより現職。東京、大阪に在籍する32名のデザイン部を統括する立場にある。共著に『プロトタイピング実践ガイド』(インプレス刊)など。