UXデザイナーの理想と現実_教育機関デジタルハリウッドに聞きました

Question?? なぜUXを中心に据えたコースを新設したのですか?

 

「“UX”という概念をきちんと理解してほしい。あくまで解決策の一手法が“UI”なのです」

デジタルハリウッドの本科では、「UX」を学べる内容をデザイン系専攻へ加えて、1年週2回、学びながら作品を仕上げる「本科UI/UXD専攻」を2017年9月からスタートしたところです。主な目的の1つは、未経験者の方がUXの概念をきちんと身につけたデザイナーになることです。ほとんどの受講生さんが社会人で、会社経営者の方や、エンジニアからのスキルアップ転職が目的という方もいらっしゃいます。

もともとクリエイターを養成するさまざまなコースにはUXの授業も含みましたが、もっと本格的にUXを探求できるフラッグシップコースとして、1年のカリキュラムを用意しました。社会的にUXに関わる人材育成のニーズを感じ、かねてから新設を模索していました。「日頃携わるビジネスとUXがどう関わるのか?」などについて、もっと理解を深めたい社会人のニーズは、当初の想定以上でした。

専攻名にはUIが並列で記載されてい るため、この点を気にする方がいること は承知しています。本校ならびに専攻の 目的には、学習内容を具体的な作品へ と昇華して、現場に就/転職することも 目的にするため、表現の一手段としてUI も掲げています。本科UI /UXD専攻の スタンスは、UXの問題解決にはさまざ まな表現があり、一つの手法として「UI」 があるという大前提に立っています。つ まり、UXとUIを混同しない授業内容と 人材の輩出が責務だと考えています。

ユーザー体験のためのさまざまな選択肢がある(UX)中で、最適な表現の1つとしてUIを選ぶ、という理解が大事

 


 

Question?? 「UX」を教えるにあたって、特に伝えたいことは?

 

「ユーザーのための工夫がブレイクスルーして、世の中に貢献できる存在になってくれたら嬉しい」

UXデザインは非常に広範囲に及ぶ概念です。授業では、未経験者の方がきちんと理解できることが求められるので、UIなど見た目だけを扱うのではなく、ユーザー体験全体を考えることを丁寧に解説しています。例えば、ユーザー体験を損ねる根本的な原因がサーバのレスポンスということもあります。UXデザイナーは、こうした目に見えない部分をも対象とする存在だと伝えています。

UXデザインに関する多くを伝えることは限られた講義の時間だけでは難しいだけに、講義では「考え方」や「取り組み方」を重視しています。学術的な話もしながら、ディスカッションやワークショップスタイルに多くの時間を割くのは、ユーザーの立場でサービスについて「考える」行為を習慣化してほしいから。カスタマージャーニーマップや、リーンスタートアップを経てリーンキャンバスづくりなどもやりますが、これらに底流する、ユーザーの体験について徹底して「考える」ことが第一歩。

私が所属するシナップの採用現場では、上流工程にコミットしたいWebデザイナーがUXデザインに関心を示すケースが増えています。転身希望者は、デザイナーとしての視点を強みにしてください。

UXデザインとは、ユーザーへの気遣 いの具体化、気づきの提供とも言えます。 そうした工夫がブレイクスルーして、世 の中がより豊かになっていく。そんな人 材づくりのお手伝いにつなげたいです。

ユーザー視点で最善のあり方を模索できる人材の輩出もまた社会貢献、と言えそうです

 

森内芳枝
デジタルハリウッド(株)東京ユニット 東京本校でマネージャーを務め、「本科UI/UXD専攻」などのスクールプログラムなどを担当する。 http://school.dhw.co.jp/course/digital/index.html
大川貴裕
(株)シナップ 取締役兼クリエイティブディレクター。シナップはUXデザインによるサービス開発からグロース施策による改善まで、クライアントのUX戦略をトータルでサポートする会社(UXデザイナー募集中!)。デジタルハリウッド東京本校にて「本科UI/UXD専攻」講師を務める。
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