
[1-2]採用プロセスで大事なのは「エビデンス」 を示すこと
いい人材が欲しいならこんな言葉を使ってはいけない
ここまで採用を巡る環境が大きく変わってきているという話をしてきましたが、その変化は具体的に、どんな部分に現れているのでしょうか。ここではその変化の様子をよく表すワードをざっと並べてみました(03)。これを見ながら、全体的な傾向を理解しましょう。
P024からの序章でも詳しく述べましたが、これからの採用活動は「選抜」ではなく、「マッチング」の場として捉えましょう。これは自分たち、つまり採用する側が入社希望者を評価するように、入社希望者もまた、企業を評価し判断する時代になったことを示しています。採用側だからといって、いつまでも「上から目線」では通用しないのです。
では、入社希望者から評価されるために必要なことは何でしょうか。まず大事なのは、募集要項を公開するところから面接に至る採用プロセスのすべての段階で、彼らが正しい判断をくだせるような、論理的で客観性のある情報を提供することです。会社の今の状況や将来に向けての計画を漠然と述べるのではなく、いわゆる「エビデンス(根拠)」のある情報として提示するのです。そうすることで初めて、彼らはこちらの姿勢を評価し、正しく判断しようとするでしょう。
うまく行けば、こちらの事業に「共感」しファンになってくれるかもしれません。採用の過程でこうしたプロセスを踏んでおけば、面接の途中でドタキャンされたり、入社した後に「こんなはずではなかった…」と離職されてしまうこともなくなるでしょう。
ちなみに最近の転職者には、かつてのように、年収を上げることだけを考えるような人は少なくなっていると言われています。それよりもむしろ、「会社の理念に共感できるか」といった点や、「どんな人と一緒に働けるのか」「裁量権はどれくらい与えられるのだろうか」、さらには自らの「スキルを上げるための環境が整っているのか」、といった点を特に重視すると言われています。

今の採用を考えるにあたって、ヒントとなるキーワード。それぞれの言葉をどうとらえているか確認してみるといいでしょう
社長の夢には要注意。そこにエビデンスはある?
その一方で、うまく扱わないと大失敗を招きかねないキーワードの筆頭が「夢」です。たとえば“社長の夢”といった形で語られるメッセージは、かつてはそれなりの力を持っていたと言えるでしょうが、いまは歓迎されにくいものになったと考えるべきでしょう。
「将来は日本一、いや世界一になるんだ。だから君の力を僕に貸してほしい」
「いまはまだなにもない。でも5年後には売上100億円を実現してみせる」
今はこうした夢を実現するための詳細で、客観性のあるエビデンスがあることを示すことができない限り、納得を得られないどころか、不信感を抱かせる結果になってしまうかもしれません。
また、これから働こうとしている会社が前時代的な社長のワンマン会社だと感じとり、逃げていく入社希望者もいるかもしれません。
今の若い世代は「ドライだ」と言われますが、むしろ、論理的な思考をする人が多くなったということだと捉えるべきでしょう。こうした時代には、ごまかすようなことを言うよりも、こちらも論理的に、なにより正直に向かい合うことが求められるのです。