頼み方がわからない人のためのWebサイト制作入門 〜伴走クリエイティブの進め方〜

Webサイトを制作会社に依頼する際、「何を準備すればいいのか分からない」「ちゃんと伝えられるか不安」と感じる人は少なくありません。けれど、完璧な準備よりも、目的を共有し対話を重ねながら一緒に作っていく姿勢が大切です。
本記事では、株式会社Reiriの田口氏のセミナー内容をもとに、「伴走クリエイティブ」という制作スタイルを通じて、クライアントとデザイナーが信頼関係を築きながら、価値あるWebサイトを共に作り上げるためのポイントを紹介します。(2025年春 web professional summitセミナー資料より抜粋)
Webサイト制作を依頼する前に知っておくべきこと
Webサイト制作をスムーズに進められるかは、発注前に最低限の準備があるかどうかで大きく変わります。特に目的・素材・スケジュールの3点を整理しておき、社内で共通認識を持っておくことが重要です。そうすることでデザイナーとのやりとりが円滑になり、社内の合意形成も進めやすくなります。
目的や方向性を明確にする
依頼前に、「このWebサイトで何を実現したいのか」「誰に届けたいのか」「どんな雰囲気のデザインにしたいのか」を社内で共有しておくことが重要です。以下の4点を事前に整理しておくと、制作パートナーとのコミュニケーションが格段に楽になります。
- 目的の明確化
例:採用強化、顧客獲得、企業認知の向上、商品販売 など - デザインの方向性
参考サイトや「好きなテイストの雰囲気」があれば共有しておく - 優先順位の設定
ターゲットに応じて、PC/スマホのどちらを主軸にするかを決める - 制作期間の把握
標準的なWebサイト制作は、短くても1〜1.5ヶ月程度かかります
これは裏を返せば、デザイナーが初回ヒアリングで必ず確認するポイントでもあります。

素材などの準備をする
制作をスムーズに進めるために、以下のような素材や情報を事前に確認しておきましょう。
- ドメイン・サーバーの情報
持っていない場合は取得方法を相談 - 写真・イラストの素材
なければ撮影・制作依頼や素材購入の選択も - 原稿・テキスト内容
6〜7割完成した原稿があれば調整も可能(理想) - 希望する機能・要件
問い合わせフォーム、ブログ機能、予約システムなど
用意できるものが少なくても心配せず、まずは「何のためにWebサイトを作るのか」という目的を共有することから始めましょう。これらの素材や原稿は、一緒に作っていく過程で解決することができます。
Webサイト制作の流れを把握する
標準的なWebサイト制作は、1〜1.5ヶ月ほどの期間が必要です。制作会社によって多少差はありますが、おおよそ以下のような流れで進行します。
伴走クリエイティブにおいては、各フェーズでの承認・確認を丁寧に行うことで、後戻りや認識のズレを防ぐことが可能です。

伴走クリエイティブとは
伴走クリエイティブとは、デザイナーとクライアントが並走しながら、共にWebサイト制作を進める手法です。従来のような「依頼して、あとは完成を待つだけ」という進め方ではなく、対話を重ねながら一緒に形にしていくことを重視しています。
伴走クリエイティブには以下の4つのメリットがあります。
- 不安の解消
「何を用意したらいいかわからない」という不安をプロセスを共有することで解消します - 目的に沿った制作
「何のために作るのか」を常に意識しながら、本当に必要な機能やデザインに集中します - 修正コストの削減
各段階での確認と対話により、後戻りや大幅な修正が減少し、効率的に進められます - 満足度の向上
一緒に創り上げた達成感と、自分の意見が反映された成果物への愛着が生まれます
さらに、以下のような伴走クリエイティブの各プロセスを共に積み重ねることで、クライアントとデザイナーが共創パートナーとしての信頼関係を築いていくことができます。

ここからは伴走クリエイティブのより具体的な実践ポイントを紹介します。
対話を恐れないデザイン依頼
「専門用語がわからないから聞きづらい」「ざっくりした要望しかないのに相談していいのかわからない」などの不安から、デザイナーとの会話に気後れしてしまう人も少なくありません。
けれど、伴走クリエイティブでは、完璧に準備された依頼や、正確な言葉での説明を求めることはありません。むしろ、「何がわからないのかがわからない」という状態でも、一緒に言語化していくプロセスも制作の一部と考えています。
迷いや感覚を素直に伝え、遠慮せずに話すことで、デザイナーはその意図をくみ取りながら、一緒に課題を整理し形にしてくれます。
相談しながら一緒に作る姿勢こそが、良いWebサイト制作への第一歩です。

効果的なフィードバック
伴走クリエイティブでは一緒につくることが前提だからこそ、伝え方ひとつで仕上がりの精度やスピードが大きく変わります。
例えば、「なんか違う」「もっとオシャレに」といった、ざっくりとした印象を伝えるだけでは逆効果になりかねません。一見、デザイナーがうまく汲み取ってくれるように思えるかもしれませんが、意図と解釈のズレが生まれやすく、結果的に修正が増えてしまう原因になります。
むしろ、「どこをどのようにしたいか」や「なぜそうしたいのか」、そして「何が良かったのか」を具体的に伝えることが大切です。
フィードバックの方法を意識して変えてみるだけでも、お互いのデザインの解像度や納得感を高めることができ、より良い制作物ができます。

伴走クリエイティブにおける予算
伴走クリエイティブでは、初期投資と継続投資を分け、目的に応じた適切な予算配分をするのが基本です。さらに、投資対効果を測定しやすくするために、フェーズごとに予算を管理します。
また、公開後の運用・改善にかかる予算やコミュニケーションにかかる時間もプロジェクトに欠かせない要素になります。それらも含めて予算に反映させることが重要です。
こうした考え方で予算計画を立てることで、Webサイトは一度作って終わりなものではなく、継続的に成果を生み出す資産として成長させることができます。

長期的な関係構築
Webサイトは、公開後もコンテンツの更新や改善、ユーザー動向の分析など、やるべきことがたくさんあります。
だからこそ、伴走クリエイティブでは、一度作って終わりの関係ではなく、長期的な目線で一緒に育てていくことを前提として取り組みます。
例えば、制作の背景や意図を理解しているデザイナーなら、細かな修正や改善にもスムーズに対応することが可能です。また、第3者からの視点によって自社だけでは気づけなかった改善のヒントが見えてくるケースも少なくありません。
信頼関係に基づいた長期的な伴走体制があることで、Webサイトは単なる制作物ではなく、継続的に成果を生む事業の資産として育っていきます。

一緒に作るを大切にする「伴走クリエイティブ」
伴走クリエイティブで大切にしていることは以下の5つです。
- 「何のために作るのか」を明確にする
- 参考サイトやデザインテイストを共有する
- わからないことは質問し、対話を重ねる
- 各フェーズで確認と修正を丁寧に行う
- 公開後も継続的な関係を育てる
Webサイト制作を成功させるためにもっとも大切なのは、対話と信頼を重ねながら「一緒に作るという姿勢」です。そうすることで、Webサイトは見た目だけでなく成果につながる資産へと育っていきます。
▼セッションで使用されたスライドの全ページは、以下よりご覧いただけます。

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文/小嶋七海(ちょっと株式会社)
