次世代グループビデオチャットアプリ「Houseparty」

若者に人気のビデオチャットアプリ

「モノより体験」

「一人よりみんなで」

「一度きりの人生を楽しみたい」

これはアメリカのティーンエイジャーやミレニアル世代に共通するキーワードです。物心ついたときからインターネットやデジタルデバイスに触れて育ったことで、新しい価値観や生活習慣が生み出されています。

そんな若者に人気のアプリの一つが、グループビデオチャットアプリ「Houseparty(ハウスパーティー)」です。これは、その名前からもわかるとおり、スマホを通じて最大16人の友達とパーティーをしているかのような体験を届けます。ユーザーの多くが20代前半の若者だというのも特徴的なアプリです。

Houseparty

アメリカの若年層に現在大人気のビデオチャットアプリ。リリースから1年半で24歳未満の若者を中心に2,000万人のユーザーを獲得しています

Housepartyは、単純な複数ユーザー向けのビデオチャットアプリというよりも、より“楽しさ”にフォーカスを当てた設計がなされているのが特徴です。誰かが会話を仕切ったり、誰かの配信にみんなが反応することでコミュニケーションが行われるといったものではなく、スクリーンを分割し、会話に参加している人全員がリアルタイムにビデオチャットができます。

 

シンプルさがウケる理由

このアプリは「グループビデオチャットのためのアプリ」であり、それ以外の機能はありません。「起動すればチャットができる」というとてもシンプルなコンセプトになっています。

使い方はごく簡単で、ユーザー登録後に、今オンラインになっている友達をリストから探してリアルタイムにグループチャットを始める、もしくは既存のアクティブチャットグループに飛び入り参加することも可能です。まるで、LINEのグループチャット的な感覚でカジュアルに使えるアプリなのです。

Houseparty

アメリカの若年層に現在大人気のビデオチャットアプリ。リリースから1年半で24歳未満の若者を中心に2,000万人のユーザーを獲得しています

 

手軽さ、楽しさを追求した設計

このアプリは、「インターネット上のリビングルーム」と言われます。既存のチャットサービスに感じる、まるで会議や議論に参加するような使命感、他人に評価されたいと思う気負いというものがなく、リラックスして人と会話したり、 ただ一緒に同じ空間を共有しているという、いわば「たまり場」をインターネット上に作り出しています。

その空間を仕切るホストはいないので招待されなくても誰もが自由に出入りができますし、事前に約束していなくても何となく一緒に過ごせる、という精神的負担が少ない場を提供しているのです。

若年層は、お金がない代わりに有り余る時間があり、そんな時間を友人と集まって過ごしたいという願望を強く持っています。しかし、自家用車を持っていなかったり、友達に会いに行く交通手段がなかったり、自宅に集まるにも親の目を気にしたりしなければいけません。そんなニーズにピッタリなサービスであり、さらにホームパーティー好きなアメリカ人のニーズもカバーしているとなれば、アメリカの若者にウケるのは想像に難くありません。

アプリのデザイン面でも、アイコンやボタンといったUIエレメントを極力抑え、スワイプを中心とした操作で、手軽さ、楽しさを追求したユーザー体験設計がされています。この辺も若者を意識した、次世代のユーザー向けアプリという感じです。

実はこのアプリ、友達だけではなく、若者ユーザーの親や祖父母の世代の高齢者を誘って使うケースもあり、バイラルでユーザーが広がりやすくなっています。

 

ソーシャルの巨人の前で

Life on Air社が開発した同アプリは、2016年にTwitterにAPIを閉鎖されたことによりサービス終了に追い込まれた「Meerkat(ミーアキャット)」と呼ばれるライブストリーミングアプリの開発チームが生み出しました。2015年にモバイルデバイスでのライブストリーミングを可能にするアプリとして話題になったMeerkatですが、TwitterとFacebookのライブストリーミング機能をめぐる覇権争いが勃発した2016年、同社は商品の方向転換という英断を行い、「リアルタイムのブロードキャスティング」技術をベースにしたまったく新しい新商品として、同年9月にリリースに至りました。

この方向転換は、現在のところ正解のようです。というのも、リリースしてから現在までに、すでに2,000万人のユーザーを獲得しており、1ユーザーの平均利用時間は51分に達していると言います。資金面でも、Instagramなどに投資したことで有名なセコイヤ・キャピタルを中心に、著名なベンチャーキャピタルから約7,300万ドルもの資金調達も達成しています。

若者ユーザーのFacebook離れ、Instagramはもう古い、などのニュースを目にすることもありますが、そんな「ソーシャルの巨人」の前で方向転換という英断を行い、若者の心をつかんだHousepartyに今後注目です。

Housepartyの共同創業者であるベン・ルービンとシーマ・シスターニは、16~24歳をターゲットにしたサービスを立ち上げたいと考え、彼らがソーシャルメディアをどのように利用しているのか、どんな体験を求めているのかを徹底して調査しました。その結果が、「シンプルに使える」「肩肘張らない」アプリを生み出しました
Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/
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