リサーチを行うすべての人に届けたい!『ユーザーリサーチのすべて』

 ウェブサービスやデジタルプロダクトを運営するにあたり、ユーザーリサーチは欠かせないものとなっています。リサーチは必要だし行わないといけないのは理解していても、いざ実施するにはどうすれば良いのか……。迷う方も多いと思います。
 リサーチ業務でお困りの皆さまに届けたいのがこの『ユーザーリサーチのすべて』です。本書ではリサーチを行う組織づくり、企画・募集・実査・分析・報告という一連の流れを説明しています。そして業務で使用するドキュメントを見本図を用いて紹介しています。何から手を付ければいいのか分からない時、どんなドキュメントを作ればいいのか分からない時など、リサーチ業務で迷ったときに道しるべとなってくれるはずです。
 タイトルに「すべて」とあるように、業務の流れの「すべて」、個々の調査の「すべて」をぎゅっと凝縮した小事典のような一冊になっています。これは第一線で活躍する、著者の豊富な知識と経験があったからこそ実現できました。リサーチをもっと身近なものにし、もっと活用するためのきっかけになると嬉しいです。
 今回は本書の見どころをたっぷりと紹介している「はじめに」を公開いたします。(ウェブ掲載にあたり、内容を一部変更しております。)

ユーザーリサーチのすべて

ユーザーリサーチのすべて
  • 定価(紙/電子):3,179円(税込)
  • B5変:416ページ
  • ISBN:978-4-8399-8555-4
  • 発売日:2024年10月22日
目次

はじめに

 本書はウェブサービスやデジタルプロダクト(サイト・アプリ)運営におけるユーザー調査のマニュアルとなる書籍です。組織機能の立ち上げにはじまり、企画・募集・実査・分析・報告という調査の一連のプロセスに沿って、リサーチプロジェクトの担当者が自力で業務を実行して成果を上げる過程を支えます。
 筆者はマーケティングリサーチ最大手の調査会社マクロミルで定量調査のディレクター業務を経験し、現在は国内有数規模のECサービスの運営会社でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当しています。また、個人でBtoC・BtoBそれぞれの企業にリサーチのメンター活動(内製化支援・プロジェクト監修)を行っています。
 このような経験をもとに、2021年から株式会社ヴァリューズが運営する「まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン『マナミナ』」にて、「現場のユーザーリサーチ全集」の連載を続けてきました。本書はこの内容を大幅加筆して、リサーチ実務で使用するドキュメントやフレームワークを多数解説しています。

こんな方におススメ!

 本書の読者はビジネスパーソン一般を対象としつつ、企画・制作・開発など何らかの主業務に付帯するリサーチプロジェクトのディレクターとして立ち回る上で必要な知識と技能を身につけようとしている方を想定しています。具体的には以下のような職種と業務シーンを想定して構成しています。

マーケターだけじゃない! 多様な業種に対応

たとえば……

  • デザイナーとしてUXリサーチや軽度なサーベイを行う
  • マーケターとしてマーケティングリサーチやデータ分析を行う
  • プロダクトマネージャー・事業開発としてプロダクトリサーチ全般を行う

リサーチャーとの連携にも! さまざまな業務シーンで活躍

たとえば……

  • ユーザーインタビュー・アンケートをやることになった
  • 組織内の定性・定量リサーチ担当者と上手く連携したい
  • リサーチ支援会社の担当リサーチャーと上手く接したい

本書の特徴

企画・募集・実査・分析・報告まで網羅

 組織内でリサーチを推進するには、必然的に1人で調査の全工程に対応していくことになります。ところが、リサーチ分野で専門的な知見を持つ同僚・上司や、組織内での過去実績は一般的に少なく、研修の機会もほぼ無いのが実情です。
 私が個人でリサーチのメンター依頼を受ける時にも、「基本的な調査業務の実行は自分たちで行うので、リサーチャーの観点から設計や分析をチェックして欲しい(重要プロジェクトに一通り立ち会って欲しい)」という依頼が多いです。
 そこで本書では、組織立ち上げから企画・募集・実査・分析・報告まで全工程を扱うようにしました。1 ~ 6章を通じて業務マニュアルのように一つ一つの業務工程を掘り下げているので、トータルのディレクション能力を高められます。
 例えば、2章では「調査目的」を1つの項目として紹介しており、続く「調査概要」「課題・仮説リスト」と合わせて「調査企画書」の要点を形成しています。同じ要領で、後続の章では調査レポートや報告会への理解も深められます。
 リサーチの成果は計画した以上のものになることは基本的にありません。そのため、分析や報告から逆算して企画を立てることが重要です。初心者の人は質問を書き出すことに集中しがちですが、本書で仕事の全体像をつかみましょう。

業務や課題から調査の手順を逆引き可能

 リサーチの重要概念やプロセスを学習するための情報はかなり出ています。仮説が大事、インサイトが大事、プロトタイピングが大事ーこうした啓発をよく見かけますが、具体的にどのようなリサーチをしたら効果的なのかは不明瞭です。
 それゆえに、「インタビューやアンケートの流れはウェブの記事やオンラインセミナーを見たりしてだいたいわかる。でもいざ業務を実行しようとなると作成方法や判断基準のところで手が止まってしまう」という相談をよくもらいます。
 そこで本書では、業務や課題からリサーチの手順を逆引きできるようにしました。大半の項目は、組織活動における「よくある課題」と「作り方・使い方」という対応関係でページを構成しており、事典感覚で読み進めることができます。
 例えば、リサーチの成果物で求められることが多い「ペルソナ」の項では、作成したものの納得感を得られない、実務で活用されないなどの課題に対して、どのようなデータアイテムを集めて構成すれば理解が進むのかを説明しています。
 プロのリサーチャーは調査テーマや分析手法をプロジェクト特性に応じて毎回選び取っています。リサーチの仕事で最も力量の差が出るこの設計や活用の部分を、本書ではごく身近な先輩に教わっている感覚で追体験することができます。

調査のドキュメントサンプルを多数収録

 リサーチの業務は一般的には定性調査・定量調査の手法ごとに触れていくことになります。事業会社だけでなく支援会社でもどちらか一方を受け持つのが自然な分担体制であり、組織の業務分掌や個人の目標管理により規定されています。
 しかし専任制や分業制には弊害もあります。同じ調査業務でも、デザインリサーチとマーケティングリサーチ(あるいは定性調査と定量調査)は分断されがちで、組織として最適なナレッジ共有や担当者の能力開発が起きづらくなります。
 そこで本書では、インタビューやアンケートで使う調査票や報告書のサンプルを多数収録しました。プロダクト運営のシーンに合わせ、調査票は質問文・選択肢レベルの細かさで、報告書は図表と分析コメントの例示まで掲載しています。
 例えば、アイデアを検証する際に用いる「コンセプトテスト」の項では、定量調査と定性調査両方のレポート見本があります。これを見ると、調査での質問方法とデータのまとめ方はもちろん、各手法の使いどころがわかることでしょう。
 これによって、読者の担当領域や経験年数、また定性や定量の既成概念にとらわれることなく、アウトプットの完成形イメージを念頭に置いて、調査内容的にも一定の品質を保った状態で新しいプロジェクトにトライすることができます。

著者について

 このパートの最後に、本書に出てくるノウハウの背景ともなる自己紹介をさせてください。
 前述の通り、筆者はマーケティングリサーチ最大手の調査会社マクロミルで定量調査のディレクター業務を経験したのち、現在は国内有数規模のECサービスの運営会社でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当しています(支援会社と事業会社での調査業務経験、マーケティングリサーチとUXリサーチの実務経験)。
 スタートアップ期に入社して大企業グループに至る事業会社での10年間では、経営企画・マーケティング・プロダクトデザインの各部門に在籍し、いずれの立場でも統合的・横断的なリサーチプロジェクトを手がけてきました(各部門当事者としての調査業務経験、スタートアップ~大企業での実務経験)。
 また、個人で副業として企業向けに行っているリサーチのメンター活動では、BtoC・BtoBそれぞれのビジネスモデルに対応し、リサーチ担当者によるセルフリサーチの運営から調査会社とのコミュニケーションまでをサポートしています(BtoC・BtoBそれぞれの対応実績、内製型・発注型の支援実績)。
 なお筆者はリサーチ文化が整った環境よりも、リサーチにおけるいわゆるアンチパターン(制約や分断)が多く発生する現場を経験しており、本書の内容も「個の力」で現実的に変えていける進め方を中心に扱っています。
 リサーチ全体では「全員でコラボレーションする」時代ですが、組織にその文化が無いとそもそも成り立ちません。そのため、1人目のリサーチ担当者が良い意味で属人性(個性)を発揮して道を切り拓く時の指南書になっていれば幸いです。

本書の目次で内容をチェック!

目次

第1章 立ち上げ
組織開発・能力開発
 01 リサーチの組織モデル
 02 リサーチのスキルセット

プロジェクトマネジメントのドキュメント
 03 ステークホルダーマップ
 04 リサーチポートフォリオ
 05 リサーチバックログ
 06 リサーチプロセス
 07 調査会社の比較表


第2章 企画
調査企画の思考法
 01 仮説思考
調査企画書のドキュメント
 02 調査目的
 03 調査概要(プレビュー)
 04 課題・仮説リスト
インタビュー運営のドキュメント
 05 リサーチワークフロー(定性調査)
 06 インタビューガイド(プレビュー) 
 07 インタビュー実施要項
 08 インタビュー対象者一覧表
アンケート運営のドキュメント
 09 リサーチワークフロー(定量調査)
 10 アンケート調査票(質問リスト)


第3章 募集
スクリーニング調査
 01 リクルーティングの基本
 02 調査対象者の特性理解
 03 スクリーニング調査の実施方法


第4章 実査
 01 インタビュー調査
 02 UI/UX調査
 03 アンケート調査
 04 購買データ・行動データ分析
 05 顧客の声分析
 06 エスノグラフィ
 07 デスクリサーチ


第5章 分析
市場理解のアウトプット
 01 ファネル分析
 02 ユーザーゲイン
 03 ユーザーペイン
顧客理解のアウトプット
 04 ユーザープロファイル
 05 ペルソナ
 06 価値マップ
体験設計のアウトプット
 07 バリュープロポジションキャンバス
 08 カスタマージャーニーマップ
 09 ストーリーボード
 10 ユーザーストーリーマップ
環境分析のアウトプット
 11 3C分析
 12 リーンキャンバス
 13 競合調査
アイデア探索のアウトプット
 14 カテゴリーエントリーポイント
 15 コンセプトテスト
 16 探求マップ


第6章 報告・共有
調査報告書のドキュメント
 01 定量調査のまとめページ(グラフ・チャート)
 02 定性調査のまとめページ(インタビュー個票)
 03 調査報告書(トップラインレポート)
調査報告会の運営ドキュメント
 04 報告会アジェンダ
 05 報告会参加者アンケート
リサーチのデータベース
 06 リサーチリポジトリ
 07 調査結果ページ(LP)


Appendix
A 有識者・実践者によるコラム集
B リサーチドキュメントの図録集
 01 スクリーニング調査のユースケース(調査票)
 02 ウェブ制作・アプリ開発のリサーチ(調査票)
 03 マーケティング施策のリサーチ(調査票)

著者プロフィール

菅原 大介

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。
デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書に『ウェブ担当者のためのサイトユーザー図鑑』(マイナビ出版)、『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)がある。

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ユーザーリサーチのすべて

ユーザーリサーチのすべて
  • 定価(紙/電子):3,179円(税込)
  • B5変:416ページ
  • ISBN:978-4-8399-8555-4
  • 発売日:2024年10月22日
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